感染症

「人も動物も、カンピロバクターにご用心」の話

「人も動物も、カンピロバクターにご用心」の話

カンピロバクターという言葉をご存じでしょうか。実は2015年11月の本コラムで1度取り上げているのですが、「ノロは知っていてもカンピロは知らない」という方がまだまだ多いように感じています。

カンピロバクターとは45菌種11亜種が確認されているカンピロバクター属菌のことで、私たちを取り巻く環境中に広く存在しています。

これらのうち、Campylobacter jejuniCampylobacter coliが1982年から食中毒の原因物質に指定されています。

カンピロバクター食中毒は、少ない菌数でも発症に至ることが多く、潜伏期間が長い(3~7日)のが特徴です。腹痛を伴う下痢などの消化器症状を呈し、致死率こそ低いものの、感染状態が長く続き、多くは最終的に自然治癒に至りますが、その間大きな疾病負荷を背負いこむことになります。

このカンピロバクター食中毒、細菌性食中毒の60%以上を占めていると言われています。原因食品の多くは鶏肉に関連し、生もしくは加熱不十分な料理を食べたことによります。

カンピロバクターによる鶏肉の汚染率について日本獣医師会雑誌vol.77,P146より以下の図を引用しておきます。

さらに、参考までに令和5年度の大阪市の食中毒発生状況を大阪市のホームページから抜粋して転載しておきます。

そこで気になるのが、愛犬、愛猫たちのこと。フランスの研究グループによるカンピロバクター属菌の保菌状況評価では、保菌率がイヌ(234頭)38%、ネコ(70頭)10%と報告されており、1歳以下の若いイヌ(44%)が高齢のイヌ(18%)より顕著に保菌率が高く、菌種としてはC.jejuniが、イヌ(64%)・ネコ(71%)ともに最も多く分離されています。

さらに、このC.jejuniを遺伝子的に分類したところ、イヌ・ネコから分離されたC.jejuniは、ニワトリ・ウシ・ヒトから分離されるC.jejuniと重複があるとともに、イヌ・ネコ特有のものも見出されています。

そのことから、イヌ・ネコがカンピロバクター属菌に曝される際に家畜や人が関与している可能性が、その逆に人がカンピロバクター属菌に曝される際にイヌ・ネコを経由している可能性が示唆されています。

また、イヌ・ネコ特有のものが見出されていることから、イヌ・ネコ特有の汚染源がある、もしくはイヌ・ネコがカンピロバクター属菌の保菌動物である可能性を否定できないとしています。

近年、動物の臨床検査にもPCRが幅広く取り入れられるようになって、愛犬・愛猫のウンチ中のC.jejuniC.coliを容易に検出できるようになっています。

動物たちの原因不明の下痢の検査の一つとして、高い有用性が期待されています。

今更ながらに、人の健康と動物の健康は密接に結びついているのですね。

改めてワンヘルスの重要性を感じた今日この頃なのでした。

(文責 吉内)


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