循環器

「心臓はあの手この手で検査する」の話

「心臓はあの手この手で検査する」の話

みなさんは心臓の検査というと何を思い浮かべるでしょうか。

心エコー検査でしょうか、心電図検査でしょうか。

多くの心疾患は聴診によって、ある程度のスクリーニングが可能です。そのうえで、弁膜症や肥大型心筋症に代表される犬猫の心疾患では、心臓の形態の変化を捉えることが診断に繋がります。したがってX線検査やエコー検査などの画像診断が重要となり、さらにエコー検査では拡張能や収縮能の評価にまで踏み込めます。

とはいえ、このような画像診断至上主義といっても良い状況は、ひとえに心臓の状態を特異的に評価できる血液検査が存在しなかったことによります。

近年、心臓バイオマーカー検査と呼ばれるいくつかの検査が犬猫でも利用可能となり、心筋細胞の負荷や傷害を生化学的に評価することで、心疾患の病態の把握が可能となっています。

なかでもNT-proBNPは、心室の負荷が増大することで増加するため、猫の肥大型心筋症の鑑別などに有用で、すでに多くの動物病院で利用されています。

最近、NT-proANPが利用可能となり、左心房の負荷を評価できることから、犬の僧帽弁逆流症の早期発見や治療開始時期の見極めに期待が集まっています。

バイオマーカーとは、人間などの生物の体内に存在するさまざまな分子のなかで、その生物の状態や変化を客観的に把握できる物質のことで、生物指標または生物指標化合物とも呼ばれます。

例えば、肝機能検査では、肝細胞に含まれる酵素が血液中に漏れ出た量を測定することで、細胞の傷害の程度を評価するなど、さまざまなバイオマーカーが古くから利用されてきました。

近年では、検査物質も、タンパク質以外にDNAやRNAといった遺伝子にまで拡大していて、新しい研究成果が、続々と日本や世界で発表されています。

話を心臓バイオマーカー検査に戻します。

ANPは主に心房に、BNPは主に心室に発現する利尿ペプチド(心臓ホルモン)で、1980年代に発見され、それぞれproANP、proBNPというホルモン前駆体(プロホルモン)として細胞内の顆粒に貯蔵されます。

このプロホルモンは、心筋細胞の伸展(心臓への負荷)に呼応して放出され、proANPはANPとNT-proANPに、proBNPはBNPとNT-proBNPに切り離され、ANPとBNPはともに共通の利尿ペプチド受容体と結合し、急速に血液中から姿を消します。

ANPとBNPを送り出したいわばカス(残骸)のNT-proANPとNT-proBNPは血中をさ迷い、やがて排泄されていくのです。

NT-proANPとNT-proBNPの数はANPとBNPの数と1:1ですし、長い間血液中に留まりますから、本来のANPとBNPの放出された量を知るにはもってこいということになります。さらに、NT-proANPとNT-proBNPは通常の採血方法で測定可能と来ています。これをバイオマーカーとして利用しない手はありません。捨てる神あれば拾う神ありとはまさにこのことですね。

詳しい健康診断は受けたいけれど、エコーやレントゲンなどの検査も含めると時間もかかり、愛犬愛猫がかわいそうとためらうことはありません。いつもの血液検査より少し多めの採血で心臓のコンディションを評価できる時代が到来したのです。

健康診断の際には、

「ANP(ワンちゃん)/ BNP(ネコちゃん)のカスも測ってください!」

と言ってもらえれば簡単に追加できますよ^^)

(文責 吉内)


大阪市の南大阪動物医療センター

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大阪府大阪市平野区長吉長原3-5-7
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