整形外科

「犬と猫の関節炎は尿検査で調べる」の話

「犬と猫の関節炎は尿検査で調べる」の話

「愛猫のロコモに気付いてあげよう」の話を本コラムに掲載したのが2023年の年初でした。それ以来、ソレンシアの投与で劇的に活動性が改善した猫たちは少なくありません。

猫たちの表情が明るくなり、飼主の方も嬉しそうです。けれどもソレンシアは疼痛緩和のための抗体薬以上のものではないのですから、変形性関節症そのものが改善されるわけではありません。高齢の猫で変形性関節症がかなり進行していれば、生涯ソレンシアを使用して苦痛を取り除くだけで十分かもしれませんし、その治療が可能になっただけでも、素晴らしい恩恵と言えるでしょう。

それでもやっぱり、変形性関節症をもっと早い時期に気づいてやれないものなのかと、考えてしまいます。「愛猫のロコモに気付いてあげよう」の話では、猫の行動の変化や運動性の低下に気づくためのチェックリストを掲載しましたが、長い変形性関節症の病期の中で、日常の観察で気づいてあげられるのがどのタイミングなのかを下の図で見てみましょう。

QOL(生活の質)の低下が起きる少し前に、ようやく気付いてやれることに驚かれたことでしょう。関節軟骨が壊れ始めるころに気づいてあげられれば、関節炎症状改善剤や体重の管理、サプリメントの給与、環境の改善など、してあげられることはたくさんあります。

 

そして、Ⅱ型コラーゲン分解の下に赤字で書かれている検査こそ、このコラムでお話したい画期的な検査なのです。

赤字で記されているのは「CⅡNEの測定で発見」。CⅡNEとはⅡ型コラーゲンネオエピトープの略で、軟骨の主成分Ⅱ型コラーゲンが分解された時に生じます。変形性関節症では、外力や感染などで起きた炎症から軟骨が分解されることで発症し、進行して骨変性を生じ、悪化の一途をたどります。X-線検査では骨棘形成などの骨変性を生じて初めて診断が可能となるため、それよりも前の段階、つまりⅡ型コラーゲンの分解が始まったときにそれを検出できれば、理想的な早期発見ということになります。

以前からCⅡNEは、Ⅱ型コラーゲンが断片化された時に尿中に排泄されることが知られており、世界中の研究者がその検出法の開発を競っていましたが、ついに日本の研究者が開発に成功したのだそうです。

この検査は、わずか0.5ccの尿があれば測定可能で、動物病院を通じて臨床検査所に送付して実施してもらいます。犬及び猫の検査が可能で、腎臓疾患や心臓疾患があっても影響を受けません。留意することとして、1歳未満の成長期には盛んに軟骨が作り変えられるため高値となること、重度の変形性関節症にまで進行している症例では、すでに軟骨がなくなっているため低値になることなどがあります。

ごく初期の変形性関節症を検出できるメリットは大きいのですが、ごく初期の変形性関節症では症状が乏しく、そもそも検査に至らないかもしれません。

そういったことからCⅡNE検査の活用法については、上記のフローチャートが参考になります。

何より、変形性関節症の罹患率と関節疾患による受診率には大きな開きがあり、犬たち、猫たちには関節疾患が多いということを理解していただくだけでも、大きな意味があります。

ちなみに「アニコム 家庭動物白書」では、運動器疾患の保険請求は以下の通りです。

  犬:11.0%

  猫:2.0%

一方、日本大学の調査では驚くほど高い罹患率が報告されています。

関節の痛みに気づいてもらえず、つらい毎日を過ごしている犬たち、猫たちがいかに多いかということに、心を痛めてしまいます。

「あれっ、足をかばっているかな」「歩き方がちょっと変」と感じたら、CⅡNEの尿検査という方法があることを思い出してください。もちろん健康診断の尿検査の追加項目としてもお勧めです。

犬と猫のロコモは、尿検査で調べてあげましょう!

(文責 吉内)


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