感染症

「WSAVAワクチネーションガイドライン2024」の話

「WSAVAワクチネーションガイドライン2024」の話

動物病院の大切な仕事の1つに予防業務があります。これは、様々な感染症から動物たちを守り、そのまん延を防ぐことを目的としています。

様々な感染症の中で、法律によって予防接種が義務付けられているのは、わが国では犬の狂犬病だけです。つまり、それ以外の感染症については、各動物病院において獣医師の裁量に委ねられることになります。

その際に獣医師が最も参考にし、信頼を置いているのがWSAVAワクチネーションガイドライン*です。

 (世界小動物獣医師会のワクチネーションガイドライングループが作成するガイドラインのこと)

*Squires RA, et al. 2024 guidelines for the vaccination of dogs and cats – compiled by the Vaccination Guidelines Group (VGG) of the World Small Animal Veterinary Association (WSAVA). J Small Anim Pract. 2024 May;65(5):277-316.

このガイドラインが8年ぶりにアップデートされました。

今回のアップデートで何か新しい感染症が加わったとか、ワクチネーションプログラム(ワクチン接種の計画)が大きく変わったというようなことはありません。最も大きな違いは、コアワクチンの定義が見直されたということでしょう。以下その違いを簡潔に記します。

コアワクチンの定義の見直し

2016年版まで

コアワクチンとは生活環境や地理的条件にかかわらず、すべての犬と猫に接種すべきワクチン

2024年版から

コアワクチンとはすべての犬と猫に接種すべきワクチンだが,条件として生活スタイルや居住地あるいは旅行先を考慮して決定する

__________変更の理由は「矛盾を避けてより明確にするため」

ノンコアワクチンの定義の見直し

2016年版まで

ノンコアワクチンとは地理的要因,地域の環境,または生活様式により特定の感染症に罹患するリスクがある動物にのみ必要とされるワクチン

2024年版から

ノンコアワクチンとは地理的要因や生活様式(屋内外の出入りの有無,多頭飼育環境など)により,コアワクチンに指定されていない特定の感染症に罹患するリスクがある動物に対して強く推奨されるべきワクチン

__________基本的に同じだが,2024版ではコアワクチンとの共通部分ができている

製薬会社によって多くの感染症に対するワクチンが開発、上梓されている中で、どのワクチンをどのような環境で生活している動物たちに接種すべきかという議論なのですが、条件によってコアワクチンとなる感染症があるということなのですね。

具体的には、猫白血病ウイルス感染症が認められる地域において ①1歳未満の子猫 ②屋外に出入りする成猫 ③屋外に出入りする他の猫と生活を共にする成猫に対し、FeLVワクチンがコアワクチンとなりました。

この内容は、ずいぶん以前からスーザン・リトル先生が強く主張されていた内容と一致します。リトル先生の講義では「子猫ではFeLVワクチンはコアなんですよ」と何度も繰り返されていました。

(米国猫臨床家協会(AAFP)元会長で、カナダで猫専門病院 Bytown Cat Hospitalを運営するスーザン・リトル先生)

さらにWSAVAワクチネーションガイドラインでも、猫のワクチンの副反応について、ワクチンに含まれるアジュバントが重要な役割を演じているとしています。

当センターではノンアジュバントのピュアバックスRCPCh-FeLVが承認(2013年)されて以来、リトル先生の推奨に従って ①1歳未満の子猫 ②屋外に出入りする成猫 ③屋外に出入りする他の猫と生活を共にする成猫に対し、FeLVワクチンをお勧めしてきました。

今回のアップデートでリトル先生の主張が取り入れられ、当センターがお勧めしていたワクチネーションプログラムに改めてお墨付きが出たことは喜ばしい限りです。感染症で苦しむ動物たちを可能な限りなくすために、きちんと予防の啓発をしていかねばなりません。

言い古された言葉かもしれませんが「予防に勝る治療はニャイ≽ܫ≼」のですから^^

ピュアバックスRCPCh-FeLVについては

をご覧ください。

(文責 吉内)


大阪市の南大阪動物医療センター

住所
大阪府大阪市平野区長吉長原3-5-7
営業時間
午前:9:00 〜12:00
午後:13:00〜15:00(水・土を除く)
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