社会事象

「ミドリムシ」の話

「ミドリムシ」の話

 宮崎で口蹄疫が猛威をふるっている。獣医師免許を仰せ付かっている者なら誰でも嫌というほど叩き込まれた家畜伝染病のひとつだ。畜産業全体に対する脅威から家畜伝染病予防法によって対応が定められている。

 今回の発生では初動の封じ込めがうまく行かずに被害が拡大し、相当数の処分を行なわざる得ない状況に陥っている。畜産農家のご主人へのインタビューで、発症のない動物たちが処分されることへの、憤りを通り越した哀しい涙が悲痛さを際立たせる。畜産業全体を見据えた適確な対応としてのギリギリの判断が求められている。

 殺処分という言葉を聞いて心を曇らせた方も多いだろう。経済動物の宿命としていつの日か私たちの食卓に上がるのだが、人に食されてこそ尊い動物たちの命に報いる事になるという思いが底流に流れているのかもしれない。肥育農家や屠場、獣医師として生身で触れてきた自分の体験と照らしても、殺処分は無理矢理に飲み込む以外にうまく受け入れる術はない。

 やり切れない思いのままにここまで書いてきて、ふと捕鯨という言葉が頭をよぎった。鯨は経済動物なのか野生動物なのか。反捕鯨団体の妨害行為が時々報じられる。捕獲した鯨の油の一滴まで無駄にしない事が鯨の命に報いることだと教えられた事がある。捕鯨の是非を、単に文化の違いだからと片付けてしまうことでもないような気がするのは自分だけだろうか。

 牛や豚や鯨の命を思うとき、自分の仕事である伴侶動物たちの命を思わないはずはない。家族の一員として大切にしてもらえる犬や猫たちの命もあれば、ここにも空恐ろしい数の飼育者不明動物の処分という現実が横たわっている。

 いつから人はさまざまな生き物たちの命を左右するようになってしまったのか。自分たちが倹しく生きていくための殺生だけに留め置くことはできなかったのだろうかと、今の文化的な生活を捨てる勇気もない自分が言っても何の説得力もない。いまさら縄文時代に戻れるはずもないのだ。

 ミドリムシという生きものが何億年も前から地球上にいる。このミドリムシを増殖させ食料にするという試みが始まっている。栄養素がたっぷりで、おおよそ人が生きていく上で必要な栄養は満たされるという。あとは炭水化物でエネルギーを得れば活動できるのだそうだ。最も現代的な縄文人になろうとすれば、お米とミドリムシを毎日食べるのが早道なのかも知れない。未来の地球上に人類が生存しているとすれば、彼らはお米とミドリムシを毎日食べ、殺生することのない生活を送っているのかもしれない。

 どこかの総理大臣が愚直という言葉を正しく使えたのか使えなかったのかは知らない。ただ自分は、ミドリムシを美味しくいただける日が来るまで、命を精一杯見つめ、目の前の犬たち猫たちの命のために、愚直に獣医師として仕事をしていこうと思う。現代のともすればさまざまな命が軽んじられる風潮に、ほんのわずかでもブレーキをかける事になればと願うからにほかならない。

(文責:よしうち)


大阪市の南大阪動物医療センター

住所
大阪府大阪市平野区長吉長原3-5-7
営業時間
午前:9:00 〜12:00
午後:13:00〜15:00(水・土を除く)
午後:16:00〜19:00(水・土を除く)
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  • ※年中無休です。
  • ※お電話、もしくは受付へ直接ご予約ください。
  • ※ご希望の日と時間帯、獣医師を指定して頂くことができます。
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