社会事象

「禁友の輪」の話

「禁友の輪」の話

 腹立たしいような残暑が連日続き、犬も猫も人も皆、うんざり感にどっぷりつかりながら、ただただ秋の訪れを待っている。それでも今日の朝などは夜明けとともにベランダの植木に水やりをしていると、そよぐ風が心地よく、遠く金剛の山の上には入道雲が見えるものの、大阪の街の上には筋雲がわずかにかかり、そこはかとなく秋の気配が皮膚から沁みてきた。

 水やりを終えてテレビのスイッチを入れると民主党の党首選挙の話。庶民的で正義感があり、きっと良い人なのだろうが大きく日本の舵を切るなんてことの出来そうにない人と、腹黒くて蔭では何をしているのやらさっぱりわからないが、その無理無茶を押し通す剛腕で日本の窮地を何とかしてくれないかと期待される人が、一騎打ちをするそうな。日本の首相を決めることになるこの一騎打ちに、自分は参加するすべもないのだが、はてさて、民主党の議員さんたちの見識が問われる日まであと2週間と相成った。

 自分はというと、先月のコラムでお約束した通り、禁煙治療をきちんと続けている。薬を飲み始めて5週間、タバコを口にしなくなって4週間、無事に禁煙は続き、体調や生活にさまざまな変化が現れ始めた。

 痰や咳払いが減った。これは本当に激減した。歯茎の色が良くなった。口臭も減ったような気がする。食欲はもともと旺盛だったのでよくわからないが、ご飯(米飯)がとても美味しく感じられる。息切れも減ったかもしれない。
 何よりも、喫煙していたころは、「タバコの買い置きは大丈夫か? 外出する時にタバコを持ったか? さっきまで吸っていた煙草の火はきちんと消したか? 外出先ではどこでタバコを吸えるか?」などなど、喫煙にまつわり心を砕き気に留めておくことが多々あったのだが、それが一切なくなり、生活の中の大きな煩わしさがひとつ減った。おまけにいつも持ち歩いているポーチにタバコひと箱分のスペースの余裕までできた。

 チャンピックスの悪心には、今でもときどき悩まされることはあるのだが、1mg 1日2回に増えた当初ほどの吐き気はもうない。お医者さんのアドバイス通り、生姜を食べるとかなりましになる。悪心のひどい時は、冷奴にチューブ生姜を思い切りのせて食べたり、紅生姜をかじったり、メガシャキという飲料を飲んだりした。経験からは、おろしたての土生姜が一番効いたような気がするのだが、いつも手元にあるわけではない不便さがある。「ご飯にショウガ」という瓶詰めのご飯の友もけっこう良かった。なにより、悪心以外の不眠やうつ傾向などの副作用が出なかったことで、この薬で禁煙できそうだという自信が少しずつ膨らんできている。

 4週間経った現時点での素直な感想は、あっという間の4週間で禁煙の苦しみよりも悪心に悩まされたことの方が大きかったように思う。けれども、タバコを吸いたいと思わなかったかというととんでもない。食後や仕事が終わった時の一服は、正直今でも本当に吸いたい。多分、タバコの唯一の効用に違いない。緊張の緩和、満足感の増幅。40kgのカンパチを1時間がかりで釣り上げた後に、その余韻に浸りながら吸うタバコは、今でも忘れることのできない極上の一服であることに何のかわりもない。とっておきのシングルモルトに氷を浮かべ、音楽を聴きながらくゆらせる煙が、不味かろうはずもない。

 しかしながら、タバコが愛すべき嗜好品として喫煙され楽しまれることなど、日常では皆無ではないのかと自問してしまうことも確かなのだ。〆切に追われチェーンスモークしながら捻り出した原稿、紛糾する会議の合間に瞬く間に大きくなる喫煙所の灰皿の吸い殻の山、ストレスのぶつけどころとしての喫煙、時間つぶしの喫煙、現実逃避のための喫煙、惰性の喫煙、嗜好品を楽しむというより、やはり薬物依存以外の何物でもないと切って捨てようか。

 3年間禁煙していて、ちょっとしたきっかけで喫煙を再開してしまった人の話、やめようと思っただけでやめることができてしまった人の話、タバコにまつわる話もきりがないと思えるほどに、禁煙ネタで盛り上がることの多いこの4週間だった。

 嬉しいことに、一昨日の3回目のカウンセリングの後、ゲンキープ大阪の傍の処方箋薬局へチャンピックスをもらいに行った時のこと。「先生!」と声をかけられ振り返ると、同業のF先生が薬を持って立っておられた。
 「あはは、先生のコラムを読んで僕もゲンキープ大阪に来ました。今日が1日目です。」とのこと。期せずして「禁煙友達の輪」が広がった。副作用の話や生姜の話をしながら、健康の輪が広がったことに何ともいえない満足感を感じたのだった。

 はてさて、禁煙治療の続報は? 次回10月のコラムまで筆者の禁煙体験記になってしまいそうなこと、なにとぞご容赦いただきたい。

(文責:よしうち)


大阪市の南大阪動物医療センター

住所
大阪府大阪市平野区長吉長原3-5-7
営業時間
午前:9:00 〜12:00
午後:13:00〜15:00(水・土を除く)
午後:16:00〜19:00(水・土を除く)
  • ※祝祭日はその曜日に準じます。
  • ※年中無休です。
  • ※お電話、もしくは受付へ直接ご予約ください。
  • ※ご希望の日と時間帯、獣医師を指定して頂くことができます。
  • ※土・日・祝日に限り、予約料550円(税込)が別途必要となります。
  • ※12/31〜1/3につきましては、12/30までに事前の予約確認が必要となります。
定休日
年中無休
最寄駅
大阪メトロ谷町線出戸駅もしくは長原駅
・・・エントリー・・・
「SFTSアップデート2024」の話
「猫アレルギーの皆さん、朗報ですよ!」の話
「Cattitude(猫に対する正しい姿勢)を向上させよう!」の話
「ネコの膵炎アップデート」の話
「心臓はあの手この手で検査する」の話
・・・カテゴリー・・・
エキゾチック
ヘルニア
人と動物の関係学
内分泌
呼吸器
形成外科
循環器
感染症
整形外科
栄養学
歯科
泌尿器
消化器
猫学
皮膚科
眼科
社会事象
神経科
繁殖学
腫瘍学
行動学
診断学
遺伝
・・・アーカイブ・・・
2024年のブログ
2023年のブログ
2022年のブログ
2021年のブログ
2020年のブログ
2019年のブログ
2018年のブログ
2017年のブログ
2016年のブログ
2015年のブログ
2014年のブログ
2013年のブログ
2012年のブログ
2011年のブログ
2010年のブログ
2009年のブログ
2008年のブログ
2007年のブログ
2006年のブログ
2005年のブログ
2004年のブログ
2003年のブログ
2002年のブログ
2001年のブログ
2000年のブログ

院長コラム

VetzPetzClinicReport
Doctor'sインタビュー

・・・サイトメニュー・・・
HOME
診療案内・アクセス
施設案内
スタッフ紹介
よくある質問
協力病院
ドッグサービス
キャットフレンドリー
院長インタビュー
院長コラム
スタッフブログ
お問い合わせ
動物を飼う注意点
去勢・避妊について
ストレスについて
採用情報
新着情報
・・・手術について・・・
負担の少ない手術
手術の流れ
・・・犬の手術・・・
膝蓋骨脱臼、骨折
避妊、去勢手術
会陰ヘルニア
リハビリ
・・・猫の病気・・・
目(眼)の病気
口の病気
耳の病気
鼻の病気
呼吸器系の病気
消化器系の病気
皮膚の病気
癌、腫瘍
ヘルニア

・・・診療時間・・・

診療時間
9:00〜
12:00
13:00〜
15:00
16:00〜
19:00
  • ※祝祭日はその曜日に準じます。
  • ※年中無休です。
  • ※お電話、もしくは受付へ直接ご予約ください。
  • ※ご希望の日と時間帯、獣医師を指定して頂くことができます。
  • ※土・日・祝日に限り、予約料550円(税込)が別途必要となります。
  • ※12/31〜1/3につきましては、12/30までに事前の予約確認が必要となります。

・・・所在地・・・

〒547-0016
大阪府大阪市平野区長吉長原3-5-7
tel: 06-6708-4111
大阪メトロ谷町線出戸駅もしくは長原駅より徒歩8分