栄養学

「水」の話

「水」の話

 地球上に存在している水は大きく、海水と淡水の2つに分類され、海水は全体の97.5%で、淡水は2.5%にしかすぎない。そのうち、氷河や氷・地下水などで2.49%を占めており、私達の飲料水や農業用水などはたった0.01%しかないらしい。

 その貴重な飲料水。自分が子供のころは水を飲むといえば水道水か井戸水のことで、学校で運動をした後に蛇口からガブ飲みする水のおいしさは格別だった。それがいつの頃からかカルキ臭いとか、トリハロメタンが含まれているとかで(自分的には現在の日本の水道局の水はおいしくなったと思えるのだが)、コンビニに並ぶ様々なミネラルウォーターに人気の集まっているのが、貧乏症の自分にはどうも納得がいかない。

 話を生命系に移すと地球全体とは対照的に、水は最も豊富に存在する物質で、多くの生物においてその重量の70%を占める。その働きは生命の根幹を支えるもので、様々な水様性物質の溶媒として機能し、多くの化学反応に不可欠であり、動物の体温の調節や体の形成、弾力性の維持になくてはならないものなのだ。

 ところが、多くの病気でこの体内の水分の調節が障害され、状態が重症化し、命が脅かされることになる。したがって、自分たちの仕事の多くの部分がこの水の補正に費やされるというのも、十分に納得のゆくところだ。

 そこで診察の話。診察室で最も重要なことの一つに問診がある。いったい動物たちに何が起こって、そしてどうなって、診察室のドアをたたくことになったのか。それこそ十人十色の訴え方で、様々な事柄が説明されるのだが、獣医泣かせな主訴に、「よく水を飲む」というのがある。自分たちのセオリーには「多飲多尿には必ず病気が隠れている」というのがあって、「よく水を飲む」と訴えられれば思わず反応してしまう。そこで困るのが、「よく水を飲む」というのが本当に「多飲」つまり飲水量が増加しているということなのかどうかで、その見極めが相当に難しい。飼主のかたから「うちの子は1日に200ccの水を飲んでいて日ごろの3倍の飲水量です」などと説明していただけることなどあり得ないのだから。よく水を飲むというのが、よく水を飲みに行っているという意味のことが多く、実際には飲水量はほとんど増えていないことが多い。「水飲みの水は日頃よりうんと減っていますか?」とか、「オシッコの量がうんと増えていますか?」とお尋ねすると、「水の減り方は多いように思うけれど、オシッコはいつもと変わりないです。」と答えが返ってきたりする。飲水量が増えて尿量が変わらないというのは、どこかに水を喪失(例えば下痢とか嘔吐とかで)でもしていない限り、納得するわけにはいかない。

 ならば、いったい動物たちはどのくらいの水を必要としているのだろうか。
優等生の答えは、
犬で1.6×70×(体重の0.75乗)、猫で1.2×70×(体重の0.75乗)ということになる。
※体重の0.75乗は電卓で体重×体重×体重を計算しその答えに√(ルート)を2回押したもの。
つまり体重の3乗の平方根の平方根。
しかしこれは、単純に飲み水の量というわけではなく、食物中の栄養素が代謝されるうちに副産物として生成される水分(代謝水)や食べ物の中に含まれる水分を含めた総量として必要な水の量なのだ。普通に必要な食事を摂っている場合、その代謝水で水分必要量の10%程度が賄えている。缶詰フードを食べている場合は、水分が75%程度含まれているため、代謝水と併せれば必要な水分の85%が既に賄われているということになる。(ちなみにドライフードは水分が10%以下。)ということで、水飲みから飲まなければならない水分の量は、食事次第とも言えるわけで、このくらいが普通ですよという説明もけっこう難しい。

 かくして、動物たちの飲水量というものは曖昧模糊として、人の気の止まらぬところとなり、飲水の回数ばかりが目につくことになる。飲水に適した水が地球上の水の0.01%しかないということを思いだして、動物たちの飲水量に気をとめてみるのも時には必要なことではないのだろうか。と言えば、皆さん、納得していただけます?

(文責:よしうち)


大阪市の南大阪動物医療センター

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大阪府大阪市平野区長吉長原3-5-7
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午後:13:00〜15:00(水・土を除く)
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