「動物看護士」の話

「動物看護士」の話

 今現在の日本で、動物看護師の人たちがどのような法的な立場でどのような資格をもって働いているのか、うまくご理解いただいている一般の方々はほんのわずかなのかもしれない。

 30年くらい前の事。自分が大阪府立大学付属家畜病院でインターンをしていたころ、全米獣医外科専門医のDr.レイトンが外科実習の指導で来日した。その折にVeterinary Technician(VT)がサポートスタッフとして同道した。海軍所属のVTとのことで、筋骨隆々の超マッチョな40歳くらいの男性だった。実習に供されるビーグル犬8頭の麻酔をたった一人で完璧に維持し、実習参加者に何のストレスも感じさせないその技量には、度肝を抜かれた。
 VTとは動物医療の技術者、日本的表現をすれば獣医技官とでもいうのだろうか。その当時の日本の小動物医療の現場は、獣医師一人に家族が助手役をし、日々の診療をこなしているような状況だった事を考えると、青天の霹靂とでもいうような光景だった。獣医師以外の動物医療スタッフの姿を初めて目の当たりにした瞬間だった。

 時は流れ、動物医療がアメリカの背中を追いかけ、動物看護専門学校の出現とともに、Animal Health Technicianと呼ばれる人たちが国内に次々と誕生した。まだまだ公的資格である全米のVTには及ばないものの、動物たちを思いやる気持では引けを取らない人たちだった。程なく大手の看護学校が関連団体による看護師の認定を行うようになり、動物看護士の資格に関する制度化の気運が高まったが、各団体の足並みがそろわず、公的資格化への道は紆余曲折を繰り返した。

 そして、ようやく本年2月、動物看護職の資格認定5団体(全日本獣医師協同組合、日本小動物獣医師会、日本動物衛生看護師協会、日本動物看護学会、日本動物病院福祉協会)が動物看護職統一試験協議会を組織し、統一認定試験を実施したのだった。

 動物看護師の公的資格化は、動物看護を職業とする人たち自身にとっての念願であり、職業としての自覚と地位の向上のために不可欠であることは言うまでもない。また、動物医療に関わるすべての人たち、動物たちにとって、動物看護師の看護技術の向上や看護に対する情熱の高まりは、有形無形の恩恵をもたらすに違いない。

 来年には、認定5団体が組織する動物看護職統一試験協議会から、より公的な立場の「動物看護師統一認定機構」に主体が移行し、いよいよ公的資格化の環境が整うことになる。これ以降は、農水省の差配と国会における法改正に委ねることになるのだが、血の通った熱意ある対応を大いに期待したい。

 今の動物医療は動物看護師の存在なくして考えられないところまで来ており、今後、さらに職業的必要性は増大するに違いない。可能な限り近い将来に、動物看護師の彼女、彼らが、職業人としてより多くの注目と尊敬を集める日が来ることを、同じ動物医療を志す一獣医師として心より願ってやまない。



(文責:よしうち)


大阪市の南大阪動物医療センター

住所
大阪府大阪市平野区長吉長原3-5-7
営業時間
午前:9:00 〜12:00
午後:13:00〜15:00(水・土を除く)
午後:16:00〜19:00(水・土を除く)
  • ※祝祭日はその曜日に準じます。
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  • ※お電話、もしくは受付へ直接ご予約ください。
  • ※ご希望の日と時間帯、獣医師を指定して頂くことができます。
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