「肉の摂取量と大腸がん」の話

「肉の摂取量と大腸がん」の話

 新年明けましておめでとうございます。
 今年も本欄をよろしくお願いいたします。
 ここ何年も年頭に思い浮かべる言葉は同じです。例のロシアの諺なのですが、懲りずに今年も自分を戒めるために記しておこうと思います。
 「100年生き、100年学び、馬鹿のまま。」
 今年も常に謙虚にひたむきに、1日1日を過ごしてゆきたいと思います。

 昨年の10月26日に「加工肉やレッドミートに発がん性がある」とWHOの国際がん研究機関(IARC)よりプレスリリースがありました。けれども、日本国内の反応は、あのメタボリックシンドロームの時と比べると、相当に鈍かったというか冷ややかなものという印象を受けました。プレスリリースで、ハムやソーセージなどの加工肉を、発がん性基準「グループ1(人に対する発がん性がある)」に分類したのを受け、国立がん研究センターが10月29日、「平均的な日本人には影響がないか、あっても小さい」とする見解を発表したことが大きかったのかもしれません。

 今回のIARCの発表では、加工肉のほかに、牛肉・豚肉・羊肉などの「レッドミート」についても「グループ2A(人に対する発がん性がおそらくある)」に分類しています。この「グループ1」や「グループ2A」というのは、IARCによる発がん性の分類のことで、以下の5グループがあり、危険性の強さではなく、発がん性がどれぐらい明確かという基準で分類されます。



 プレスリリースでは、信頼性の比較的高い疫学調査(多目的コホート研究)の結果から、加工肉を1日平均50g食べ続けると大腸がんのリスクを18%高めるとし、レッドミートを100g食べ続けると大腸がんのリスクが17%上がるという限定的な証拠が得られたとしています。

 2013年に行われた厚労省の国民健康・栄養調査報告では、日本人の加工肉摂取量は1日当り13g、レッドミートは50gとなっていて、国立がん研究センターの「平均的な日本人には影響がないか、あっても小さい」とする見解が十分にうなずけるものであることを示しています。

 今回のプレスリリースの3日後にWHOは、「IARCの報告は、がんのリスクを減らすために加工肉の摂取を適量にすることを推奨したものであり、加工肉を一切食べないよう求めるものではない。」と発表しています。科学的根拠のある情報であっても、それをどう受け止めるかは一人一人の判断です。農林水産省が提唱するように「健全な食生活のために、食品をバランスよく食べることが大切」なのでしょう。

 話を動物たちの食生活に移すと、ペットフードは全て加工食品です。動物栄養学的にバランスの取れた総合栄養食と呼ばれるものも、その加工方法や栄養学的特性には相当な幅があります。それらを生涯にわたって摂取した場合の発がんリスクについての大規模調査というものは存在しません。けれども、ホームメイドで動物たちにバランスの取れた食事を用意することは到底できることではありません。真摯なペットフードメーカーが、動物たちの健康を願い、真摯に最良のペットフードを目指して切磋琢磨されることを願うのみです。私たちは、動物の栄養学を真摯に研究するペットフードメーカーを、「選ぶ」ことしかできないのですから。

(文責:よしうち)





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