猫学

「BCSとMCS」の話

「BCSとMCS」の話

 [体重(kg)]÷[身長(m)2]という計算式をご存知でしょうか。この計算式で算出される値は、BMIBody Mass Index / ボディ・マス指数 / 体格指数)と呼ばれ、人の肥満や低体重(やせ)の判定に用いられています。


 計算方法は世界共通ですが、肥満の判定基準は国によって異なり、WHO(世界保健機構)の基準では30以上を”Obese”(肥満)としています。日本肥満学会の定めた基準では18.5未満が「低体重(やせ)」、18.5以上25未満が「普通体重」、25以上が「肥満」で、肥満はその度合いによってさらに「肥満1」から「肥満4」に分類されます。BMI22になるときの体重が標準体重で、最も病気になりにくい状態であるとされています。25を超えると脂質異常症や糖尿病、高血圧などの生活習慣病のリスクが2倍以上になり、30を超えると高度な肥満としてより積極的な減量治療を要するものとされています。


それではワンちゃんネコちゃんにはBMIに相当する判定基準はないのでしょうか。人と比べ体格のバリエーションが多様な犬猫では、単純な計算式で判定するのには無理があります。そこで考案されたのが、BCS(ボディコンディションスコア)およびMCS(筋肉コンディションスコア)です。BCSMCSは計算式ではなく、視診と触診による判定基準で、BCSは体脂肪を評価し、MCSは筋肉量を評価します。


 猫のBCSの判定基準を以下に記載します。


<痩せすぎ>

1、短毛種で肋骨が見える。体脂肪が触知できない。著しい腹部のへこみ。腰椎および腸骨がはっきりと見えており容易に触知できる。

2、短毛種で肋骨が容易に見える。筋肉量がごくわずかであり腰椎がはっきりと見える。腹部のへこみが顕著である。体脂肪が触知できない。

3、ごく薄い体脂肪が肋骨を被っており、容易に触知できる。腰椎がはっきりと見える。肋骨の後ろに腰がはっきりとくびれている。腹部の体脂肪はごくわずか。

4、ごく薄い体脂肪が肋骨を被っており、触知できる。肋骨の後ろに腰がくびれているのが見える。腹部のくびれはわずか。腹部の脂肪層がない。

<理想的な体型>

5、均整が取れている。肋骨の後ろに腰のくびれがある。肋骨はわずかに脂肪に覆われ触知できる。腹部はごく薄い脂肪層に覆われる。

<太りすぎ>

6、肋骨はわずかに余分な脂肪に覆われており触知は可能。ウエストおよび腹部の脂肪層はそれほどはっきりとではないが見ることができる。腰のくびれはない。

7、肋骨は中程度の脂肪に覆われ触知困難。腰のくびれはほとんどない。腹部は丸みを帯び、中程度の脂肪に覆われる。

8、肋骨は余分な脂肪に覆われ触知できない。ウエストがない。腹部の丸みが明らかで腹部の脂肪層が目立つ。腰椎部に脂肪沈着がある。

9、肋骨は厚い脂肪に覆われ触知できない。腰椎部、顔、四肢にかなりの脂肪沈着がある。腹部が膨張し腰のくびれがない。過剰な腹部脂肪。

 

次に猫のMCSの判定基準です。


Normal muscle mass

筋肉の消耗なし/筋肉量が正常

Mild muscle loss

軽度の筋肉の消耗

Moderate muscle loss

中等度の筋肉の消耗

Severe muscle loss

著しい筋肉の消耗


 MCSは筋肉量を評価する点でBCSとは異なります。筋肉量の評価には、視診、ならびに側頭骨、肩甲骨、腰椎および骨盤の触診が含まれます。筋肉の減は、食事を十分に与えられない健康な動物において脂肪が減する場合(例、単純飢餓)に比べ、急性および慢性疾患(例、侵襲による栄養不良)を持つほとんどの動物でより顕著に見られるため、筋肉の状態評価が重要となります。筋肉の減は体力、免疫機能、および傷の治癒に悪影響を及ぼします。


 臨床的にはBCSMCSは直接関連していません。ある動物は過体重でありながら同時に著しい筋肉の減がある場合があります。この場合は、慎重に検討を行わないかぎりMCSが軽度または中等度となり比較的正常に見えるかもしれません。こうしたケースではかなりの脂肪蓄積があったとしても(特に肋骨上や腹部)、骨ばった部分では筋肉の消耗が認められることがあります。BCSおよびMCSを正確に評価するには触知が欠かせず、特に中毛から長毛の動物に必要となります。


  動物たちのBCSMCSを常に把握することは、健康維持にとってとても重要なことです。また、理想的なBCSMCSを維持することは病気や怪我に対する抵抗力を向上させます。BCSMCSを飼主の方と動物病院が共有することで、望ましい食事内容を提案し、動物たちのケアに取り入れることによって、動物たちの健康を向上させることができるのです。


 ふくよかな猫ちゃんは抱き心地も最高で、本当にかわいいものです。痩せ過ぎているよりははるかに良いと思います。けれども健康のことを考えるとやはり理想的な体格を目指すべきなのかもしれません。BMI27の自分が大きなことは言えませんが、猫ちゃんは猫ちゃんらしく、人は人らしく、「かわいい」よりも「かっこいい」を目指すことが、健康を維持する上で大切です。間食を控え、バランスのとれた食事を摂り、適度な運動をする。さあ、明日から「かっこいい」を目指して頑張りましょう!

(文責 よしうち)



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