神経科

「猫の小脳低形成」の話

「猫の小脳低形成」の話

Wobbly Cat Syndrome=猫のふらつき症候群)wobbly(不安定であるために)グラグラする、ヨロヨロする、フラフラする、よろめく、ふらつく、ぐらつく〕と呼ばれることもある小脳低形成(=CHCerebellar Hypoplasia )は、伝染性でも進行性でもない猫の先天性疾患です。

 

多くの場合この疾患は、妊娠中の母猫が猫汎白血球減少症(FPLVFeline Panleukopenia)に感染した場合に、その原因ウイルスであるパルボウイルスが子宮内または周産期の新生児猫の小脳形成を阻害することによって引き起こされます。

 

小脳は、繊細な運動、バランス、筋肉の協調を制御する脳の領域です。影響を受ける領域やその範囲によって、動物が示す症状の重症度は異なります。それは同腹の新生児猫の間でも異なります。出生直後にいくつかの兆候が見られることもあり、兄弟との競争による授乳の問題となる場合もあります。


 

 

小脳低形成は通常、子猫が歩き始めるにつれて明らかとなります。一部の子猫では、810週齢まで飼い主が症状に気づきません。小脳低形成では、症状は進行せず、予後は良好です。

 

以下は、chcat.orgによって配布されているハンドアウトです。猫の小脳低形成の重症度レベルとそれぞれのレベルにおける症状や必要な特別のケアについて記載されています。

 


      猫の脳低形成の重症度レベル


軽 度

 軽度の小脳低形成の猫は非常に有能で、特別なケアはほとんどまたはまったく必要ありません。

 症状:

  • 異常な歩行(ハイステップ:歩行が誇張される,ワドル:アヒルのような歩様

  • 時折のバランスの喪失

  • 微妙な頭の震え(興奮時またはストレスを感じた時)

 能力:

  • 歩く

  • 走る

  • ジャンプ

  • 階段

 特別なケア:

  • 屋外に住むことはできません

  • ハイサイドのトイレが好ましい

  • カーペットや敷物を推奨、必須ではありません


中等度

 中等度の小脳低形成の猫は自分で動き回ることができますが、体の一方が他方とは別のことをしているように見えることがあるかもしれません。

 症状:

  • 足を大きく広げて歩く

  • 頻繁なバランスの喪失、低下

  • 顕著な頭の震え(特に興奮時またはストレスを感じた時)

 能力:

  • 短い距離を歩く

  • エキスパートクライマー

 特別なケア:

  • 屋外に住むことはできません

  • 自分自身を支えるために、ハイサイドのトイレが好ましい

   (健常猫よりも乱雑になる可能性があります)

  • バランスを取りやすいカーペットや敷物の上で過ごさせる

  • フードや水飲みは高くする

  • 落下時に怪我をしないように家具を改造(バンパーの追加など)


重 度

 重度の小脳低形成の猫は一人で歩くことができず、特別な注意が必要です。

 症状:

  • 歩くことも立つこともできません

  • フリップとフロップで移動(Flip:でんぐり返しFlop:ドサッと倒れ込む

  • 絶え間ない頭の震え

 能力:

  • エキスパートクライマー

 特別なケア:

  • 屋外に住むことはできません

  • トイレの使用についてサポートが必要な場合があります。

    ハイサイドまたは尿パッド付きのトイレボックスが好ましい

      • グリップして前進しやすいようにカーペットを推奨

  • 食事を摂る体勢になるのに助けが必要かもしれません

  • 落下時に怪我をしないように家具を改造(バンパーの追加など)

  • 移動性と四肢の協調性の向上に役立つ車椅子の使用は理想的かもしれません


 

よくある誤解は、これらの猫が痛みを感じている可能性があるというものです。小脳低形成の猫や子猫は、痛みもなく、ごく普通の幸せで健康的な生活を送ることができます。それは彼らの平均余命に影響を与えず、彼らの多くは障害に非常によく適応します。

 

小脳低形成の猫のまとめ

•• 痛みはありません

•• 伝染性ではありません

•• 通常の平均余命を持っています

•• 幸せで健康的な生活を送れます

•• 彼らの能力を適応させ、ゆっくり時間をかけて補うことを学びます

•• 室内だけで生活する必要があります

•• 決して抜爪してはいけません(爪切りは長めに)

 重症度に応じて特別なケアを必要としない場合もあれば、かなりのケアを必要とする場合もあります。

•• 歯の欠けや爪の折れなど、アクシデントに関連する怪我をしやすい可能性があります




小脳低形成の猫は優雅ではありません。しかし、彼らは間違いなくかわいいです。そして。適切な注意を払えば、小脳低形成の猫の圧倒的多数が豊かで充実した幸せな生活を送ることができるということです。

  


現在、当センターでは3匹の小脳低形成の兄弟を育てています。軽症〜中等症と症状の重さはそれぞれですが、どの子も、壊滅的にかわいいのです。いちばん重症のテンちゃんは3歩歩けばコケそうになりますが、声をかければすぐにうれしそうに必死で寄ってきてくれます。彼らの愛らしい顔を見るたびに、3匹の幸せな将来を願わずにはいられない今日この頃なのです。

 

※(YouTubeCH Kitty Clubチャンネルには、CHの猫たちの動画がたくさん紹介されています。)

http://www.youtube.com/user/CHKittyClubVideos

 

(文責 よしうち)



大阪市の南大阪動物医療センター

住所
大阪府大阪市平野区長吉長原3-5-7
営業時間
午前:9:00 〜12:00
午後:13:00〜15:00(水・土を除く)
午後:16:00〜19:00(水・土を除く)
  • ※祝祭日はその曜日に準じます。
  • ※年中無休です。
  • ※お電話、もしくは受付へ直接ご予約ください。
  • ※ご希望の日と時間帯、獣医師を指定して頂くことができます。
  • ※土・日・祝日に限り、予約料550円(税込)が別途必要となります。
  • ※12/31〜1/3につきましては、12/30までに事前の予約確認が必要となります。
定休日
年中無休
最寄駅
大阪メトロ谷町線出戸駅もしくは長原駅
・・・エントリー・・・
「人も動物も、カンピロバクターにご用心」の話
「猫はユリ、人はサプリにご用心:世界は腎毒性物質であふれている」の話
「ワクチンの進化は止まらない」の話
「ネコの涙の量は10秒で測る」の話
「ネコの尿比重はビーズに教えてもらう」慢性腎臓病の話
・・・カテゴリー・・・
エキゾチック
ヘルニア
人と動物の関係学
内分泌
呼吸器
形成外科
循環器
感染症
整形外科
栄養学
歯科
泌尿器
消化器
猫学
皮膚科
眼科
社会事象
神経科
繁殖学
腫瘍学
行動学
診断学
遺伝
・・・アーカイブ・・・
2024年のブログ
2023年のブログ
2022年のブログ
2021年のブログ
2020年のブログ
2019年のブログ
2018年のブログ
2017年のブログ
2016年のブログ
2015年のブログ
2014年のブログ
2013年のブログ
2012年のブログ
2011年のブログ
2010年のブログ
2009年のブログ
2008年のブログ
2007年のブログ
2006年のブログ
2005年のブログ
2004年のブログ
2003年のブログ
2002年のブログ
2001年のブログ
2000年のブログ

院長コラム

VetzPetzClinicReport
Doctor'sインタビュー

・・・サイトメニュー・・・
HOME
診療案内・アクセス
施設案内
スタッフ紹介
よくある質問
協力病院
ドッグサービス
キャットフレンドリー
院長インタビュー
院長コラム
スタッフブログ
お問い合わせ
動物を飼う注意点
去勢・避妊について
ストレスについて
採用情報
新着情報
・・・手術について・・・
負担の少ない手術
手術の流れ
・・・犬の手術・・・
膝蓋骨脱臼、骨折
避妊、去勢手術
会陰ヘルニア
リハビリ
・・・猫の病気・・・
目(眼)の病気
口の病気
耳の病気
鼻の病気
呼吸器系の病気
消化器系の病気
皮膚の病気
癌、腫瘍
ヘルニア

・・・診療時間・・・

診療時間
9:00〜
12:00
13:00〜
15:00
16:00〜
19:00
  • ※祝祭日はその曜日に準じます。
  • ※年中無休です。
  • ※お電話、もしくは受付へ直接ご予約ください。
  • ※ご希望の日と時間帯、獣医師を指定して頂くことができます。
  • ※土・日・祝日に限り、予約料550円(税込)が別途必要となります。
  • ※12/31〜1/3につきましては、12/30までに事前の予約確認が必要となります。

・・・所在地・・・

〒547-0016
大阪府大阪市平野区長吉長原3-5-7
tel: 06-6708-4111
大阪メトロ谷町線出戸駅もしくは長原駅より徒歩8分