「猫の食事の与え方」の話
日本ほど猫のための様々な食事や食材が販売されている国は、世界を探しても見当たらないでしょう。
世界初のペットフードは1860年にロンドンで発表されたドッグフード(2017年07月のコラム「食は文化なり」の話参照)でしたが、日本でも戦後にドッグフードが米軍により持ち込まれると、その影響を受けて国内初のドッグフードが飼料業界大手より発売されたのが、ちょうど100年後の1960年のことでした。
この世界初のドッグフードはビスケットタイプ、国内初のドッグフードは粉を水で溶くタイプで翌年にはビスケットタイプが発売されています。知る人ぞ知る「ビタワン」ですね。
現在では当たり前のキブル(粒)タイプのフードが発売されたのは1956年のことで、ピュリナ社がエクストルード(加熱押出成型)技術を開発したのが始まりです。最初にドッグフードの「DOG CHOW」が、続いてキャットフードの「Friskies」が発売され、これがアメリカ初のドライタイプのキャットフードとなりました。
それまでのアメリカでのドッグフードの主流は1922年に発売が開始された馬肉缶詰で、当時は大雑把にペットフードという括りで明確なドッグフードとキャットフードの線引きはなく、猫は食べ物を自分でどうにか調達するものといった、よく言えば大らか、放ったらかしの時代だったのですね。
国内では、1966年に日本農産工業が国産のエクストルーダーの開発に成功し、「ドッグビット」が発売されました。1969年には焼津でマグロの缶詰を製造していた三洋食品が日本初となる缶詰タイプのキャットフード「プリンス」を発売し、1972年にはペットラインが日本初のドライキャットフード「キャネットチップ」を発売しています。
興味深いのは、国産初の缶詰タイプのキャットフードは、実は「プリンス」の10年以上も前の1958年に、「いなば食品株式会社」によってアメリカへの輸出専用としてマグロの血合い肉を使用した缶詰が製造されていたということです。なんとこれが国産初のペットフードということで、製造という意味では日本のペットフードはキャットフードから始まっていたのです。
2012年に発売された「CIAOちゅ〜る」は、愛猫家に驚愕の嗜好性というインパクトを持って受け入れられましたが、そのメーカーが実は国産初のキャットフードメーカーだったことを知る人は少ないのかもしれません。
この「CIAOちゅ〜る」が火付け役だったのかどうかはさておき、国内のにゃんこの食べ物事情は、メインのドライフード+缶詰あり、パウチあり、ちゅ〜るあり、スープあり、焼き魚あり、果てはフリーズドライささみまで、あたかも飽食の時代とでもいうべき状況に突入しているような気がします。
スーパーやホームセンター、ネットで吟味を重ねて購入した猫のおやつに、愛猫が見事に反応し、飛びついて食べてくれた後に、美味しい口をしてぺろりと舌で唇を舐める様は、愛猫家にとって「してやったり」の瞬間なのかもしれません。
それはそれで猫にとって至福の時間なのかもしれませんし、微笑ましい光景といっても良いのかもしれません。
確かに、私たちが猫に何を与えるかは非常に重要です。けれどもそれと同じくらい、猫にどのように与えるかも重要です。どのように食事を与えるかは、猫の体にとっても、そして猫の感情にとっても、大きな影響があるのです。
以下はAAFP(アメリカ猫臨床家協会)が発行している「How to Feed a Cat〜Addressing Behavioral Needs」というリーフレットからの抜粋です。
すべての猫は肉食動物であるため、強い狩猟本能を持っています。 彼らはまた、一人で食事をし、毎日複数回の少量の食事をとることを好みます。
一人で小さな獲物を探して飢えを満たすことで、猫はより幸せで健康になり、過食や栄養不足を避けることができます。これには、パズルフィーダーや自動フィーダーの使用、多頭飼育の家における猫間のストレスを軽減するための食事と水の配置が含まれます。
ほとんどのペットの猫は食べ物を人間に頼っています。たいていの猫は、1日に1〜2回、比較的大量の食事を決まった場所で与えられています。そして残ったフードがそのまま置かれた状態になっています。
猫の1日の食事量を、24時間をかけて与えられる複数の少量の食事に分けて与えます。可能な場合はパズルフィーダーを使用してください。自動フィーダーも役立ちます。
パズルフィーダー(フードパズル)はフードを容れる物で、食べ物を取り出すために、猫がハンドリングしなければなりません。また、フードの粒やおやつをさまざまな場所に置いて、あなたの猫に獲物を探し出しゲットするように促します。パズルフィーダーを使用したり、家のどこかにフードの粒を隠したりすることで、活動が活発になり、精神的、肉体的な刺激が得られます。この新しい与え方を辛抱強く、ゆっくりと取り入れてください。
猫は食べ物を探して手に入れ、一人きりで毎日複数回、少量の食事を食べる動物なのです。パズルフィーダーを使ったり、1日を通して食べ物を分けたりすることで、これらのニーズを満たすことができます。これにより、無気力、不安、肥満が軽減されます。
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当センターでは、このパンフレットを吉内が翻訳して配布できるように準備しています。
来院の折には、ぜひお持ち帰りください。
(文責 吉内)
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