猫学

「猫がパンティングするほど暑い」の話

「猫がパンティングするほど暑い」の話

今年の夏は暑さで体が溶けてしまいそうです。昨日(7月27日)、枚方(ひらかた)市で観測史上1位の39.8℃を観測、全国でも今年最高だったというのですから、ひらパーお兄さんもびっくりです。全国的にはあまり名前も知られていない枚方が、ひらかたと読むのかと認知されたり、ひらかたパークが見直されたりするのは良いことかもしれませんが、体温を上回る気温だけは誰も歓迎しないに違いありません。

 

西欧の暑さの表現に「猫がパンティングするほど暑い」という言い回しがあるそうです。たしかに、犬は少し暑くなっただけでも「ハーハー」とパンティングを始めますが、猫は多少の暑さでは何食わぬ顔をしています。猫の祖先は砂漠で生活していたから暑さには強いんですみたいなことが平気で書かれていたりしますが、実際には犬と同じくらい暑がり屋さんなんです。

 

犬も猫も通常は、呼吸によって気道粘膜の水分を気化させ、熱を呼気中に放出することによって体温の上昇を防いでいます。それだけでは追いつかなくなると、犬はパンティングを始めて気化量を増やすのですが、猫はなかなかパンティングを始めません。どうしてでしょうか。

 

 

犬と猫の違いの一つに舌があります。犬の舌は私たちと同じようにツルっとしていますが、猫の舌には糸状乳頭と呼ばれるトゲトゲがあります。猫に舐められるとザリザリッとした感触があるのはこのせいです。

  

 

このトゲトゲ、獲物の肉を骨から削ぎ、わずかな水を飲むのに適しているとか、毛づくろいをするブラシの役目など、いろいろなことが言われていますが、最も大きな役目として、糸状乳頭によって地肌に届けられた唾液が汗の代わりになり、体温調節の役割をしているらしいのです。

 

 

2018年米国科学アカデミー発行の機関誌に掲載された論文「Cats use hollow papillae to wick saliva into fur*によると、

「糸状乳頭はスコップのような形をしており、スポイドのように毛管現象によってさっと唾液を吸い取りやすいようになっていることが判明。さらに、ひと舐めするごとに舌に含まれた唾液の半分が被毛に付着していることまで分かった。糸状乳頭は被毛の奥深くに入り込み、皮膚にまで届く。この時付着した唾液は汗の代わりになっており、猫の体温冷却機能の4分の1近くを担っている。」と解説されています。

*Edited by David A. Weitz, Harvard University, Cambridge, MA, and approved October 15, 2018)

  

 

 

 

たしかに我が家でも、暑いなーと感じたときに、猫たちがしきりと毛づくろいする姿が目に付いたりします。唾液を皮膚に塗ることで涼んでいたのですね〜。この仕組みのお陰で猫は少々の暑さではパンティングをしません。逆説的には、猫がパンティングするのはよほどのことですので、熱中症の初期症状かもしれないと注意を払っていただく必要があります。

 

「猫のパンティングって熱中症警戒アラートだったのですね!」

(文責 吉内)



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