「プラスチックが地球を汚染する」の話
7月1日から、レジ袋の有料化が義務付けられました。経産省の説明として「普段何気なくもらっているレジ袋を有料化することで、それが本当に必要かを考えていただき、私たちのライフスタイルを見直すきっかけとすることを目的としています。」とのことです。当センターでも、「ECOバッグを持ちましょう」キャンペーンを行い、配布する場合にはバイオマスレジ袋を無料配布することとしました。
世間的には有料化そのものに意識が向けられ、何のためのレジ袋有料化なのかが置いて行かれている感が満載ですし、政府の広報も国連のSDGsにいやいや乗っかっているだけ?と思えるような印象です。その結果、有料化無意味論まで飛び出してくるのは致し方ないのかもしれませんが、地球の置かれている現実はそんなに生やさしいものではないというお話を少しさせていただきたいと思います。
プラスチックの問題は今に始まった訳ではありません。プラスチックの大量消費は、1960年代に始まっていますから、その影響が出始めたのが1970年代ということです。ただ、70年代、80年代の報告は散発的で、社会的にそれほど大きな関心を集めることはありませんでした。90年代後半は、もうひとつの重大な環境汚染問題「いわゆる環境ホルモン」について問題提起された時期でもあります。
2004年に、イギリスのリチャード・トンプソンという研究者が、目に見えないぐらいの大きさのプラスチックも海の中、砂の中に存在すると主張しました。場合によってはそれらが生物に食べられてしまう、つまり生態系の中に入ってくると。それで、研究者の間でも、社会的にも関心を持たれ始めたということになります。つまり、20世紀の「プラスチック問題」が、21世紀には「マイクロプラスチック問題」として再認識されるようになったということなのです。
プラスチックとは当たり前ですが、1種類ではありません。もともと「可塑性がある」というのが「plastic」の原義で、熱を加えて自由な形にできる合成樹脂のことを指します。今、日本語で「プラスチック」と呼んでいるものの中には、ポリエチレン(レジ袋や、ラップ、容器など)、ポリプロピレン(耐熱容器やラップなど)、ポリスチレン(発泡スチロールなど)、ポリ塩化ビニル(塩ビパイプ、ソフビ玩具など)、PET(ペットボトルなど)などが含まれます。
近年、「マイクロプラスチック」として問題視されるようになったのは、国連の海洋汚染の専門家会議で「大きさが5mm以下のプラスチック」と定義されています。もちろん人間が環境中に放出したプラスチックに由来するものなのです。
レジ袋にしても、ペットボトルにしても、長期間、紫外線に当たって、なおかつ高温にさらされるとボロボロになります。例えば、風に飛ばされたレジ袋は、そのまま川に落ちて流れていくと、海にたどり着き、砂浜に打ち上げられ、ボロボロになって小さくなり、やがて海に戻っていくというストークスドリフトと呼ばれる自然界の仕組みによって、海洋を汚染するのです。たった1枚のレジ袋から数千個のマイクロプラスチックが発生するといわれています。
プラスチックには、もともと添加剤が入っていますし、汚染物質を吸着してしまう性質もあります。海中のプラスチックの汚染物質濃度は、周辺の海水中の十万倍から百万倍にもなるのです。それらの中には、内分泌撹乱物質、いわゆる環境ホルモンと言われるものもあります。環境ホルモンは、内分泌系の撹乱だけではなく、動物実験や細胞実験でいろいろな影響が示唆されていますので、取り込まない方がいいに決まっています。さらに、有害でとっくに禁止されてもう使われていない化学物質PCBなども、環境中に残留しているものが吸着され、高濃度になっているのです。
プラスチックが見つかる場所が広がり、それらが「マイクロ化」している現況が把握された頃から、生物にどれだけ取り込まれているかという報告が相次いで寄せられるようになりました。20世紀には、比較的大きな動物、クジラであるとかウミガメからプラスチックが見つかっていたわけですが、少しずつ小さな動物でも見つかっていきます。そして、今ではカタクチイワシや二枚貝からも見つかるようになっています。
(カタクチイワシから見つかったマイクロプラスチック)
生物への影響には2つの側面があります。プラスチック自体が物理的異物であることによる影響が1つ目。2つ目は、添加剤やプラスチックに吸着した化学物質による影響です。
実験的に有害性が確認されて、環境中にその物質があって、確実に残留している場合。さらに、何も手を打たなければそのレベルが上がってくると予測される場合に予防原則を適用することになります。マイクロプラスチックは、ひとたび細かくなって海に出てしまうともうすくって取り除くことすらできませんし、海の表面では数十年ぐらい、海底に沈んだものも含めて考えると、それこそ100年、数百年残り続けます。出す前に止めるようにしなければということで、予防的な動きが始まっているのです。この点について、行政的な対応としてはもう国際的なコンセンサスになっています
プラスチックゴミのボリュームゾーンは、やっぱり使い捨てのものなのです。環境中に出ていくものの中の大体40%ぐらい、あるいはそれ以上が、使い捨てのプラスチックだとされています。そこで、レジ袋や食品包装を規制したら、汚染が激減したという報告も出てきました。例えばアイルランド、それからイスラエルやカリブ海諸国等で、レジ袋禁止の法律ができたり、いろんな規制を行うことで、海岸に漂着するレジ袋の量が8割から9割減ったそうです。これらは、2018年になってから学会で報告があり、マイクロプラスチックが発生する大元を断っていけば、海の汚染を減らすことができるという実例となっているのです。スーパーやコンビニでもらうレジ袋。あるいは、食べ物が入っている容器や包装。使用されているプラスチック全体からすれば決して多くないこういったものが海洋汚染の「ボリュームゾーン」だったのです。
マイクロプラスチック汚染の世界的な研究者の一人、東京農工大学農学部環境資源科学科の水環境保全学の高田秀重教授は、以下のように話しています。
「アメリカの先住民の言葉に、我々人は子孫から大地を借りて生きている、というものがあります。まさに僕ら人類は子孫から地球という惑星を借りて生きている存在です。人から物を借りたときに、汚れているけど毒ではないからいいでしょと言って返す人はいないと思います。毒かどうか分からないけど、とにかく綺麗な状態で返すのが人としてのやり方で、これが予防原則だと思っています。プラスチックも含め我々が扱っている化学物質が毒かどうかというのはまだ完全には分かっていませんが、地球という惑星を将来の人類から借りているわけなので、残留性のあるものを残したままこの惑星を返すわけにはいきません。だからこそ、地球上に残留性の高い人工物を残さないようにしたい。そう願っているんです」
プラスチックの有用性と危険性を分かった上で、「3R」リデュース(削減)、リユース(繰り返し使う)、リサイクル(資源として再利用する)を実践することが大切なのでしょう。
まだ使い捨てのレジ袋を便利だからと使い続けますか?
(文責 よしうち)
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