栄養学

「肥満猫の減量は志の低さがものを言う」の話

「肥満猫の減量は志の低さがものを言う」の話

肥満の話は、今までにも何度か本コラムで取り上げています。それは多分、自分自身にとっても耳の痛い、けれどもとても気になる話だからかもしれません。コロナ禍で家にこもっていたこの2-3年で、大変残念なことに、一段と体重増加に磨きがかかってしまいました。

自分のことはさておき、ふと目に留まった論文のタイトルが

「Partial weight reduction protocols in cats…」

「猫の部分的な減量プロトコール…」???

まさか猫で部分痩せでもあるまいにと、中を覗いてみたのでした。


これが結構なボリュームの論文で、減量に用いた食事によって栄養学的な不足があったかどうかというようなことに多くのページが割かれていました。で、「partial」が具体的に何を意味しているのか、Google翻訳の力を借りてようやく理解することができたのでした。通常の減量プロトコールは、理想体重を導き出し、その体重しか維持できないようなエネルギー制限食によって減量を行いますが、それを「完全な減量プロトコール」と呼び、成功すれば理想体重に到達することができます。

一方、「部分的な減量プロトコール」とは、理想体重より少なくとも10%上回る体重を目標として減量を行うようなプロトコールを指し、成功してもまだ体重が過剰な状態には違いないのです。けれども、高齢猫や理想体重を40%以上上回る顕著な肥満の猫では、初期体重の10±6.3%の減量で運動性や生活の質を改善するのに十分であったとの報告がなされています。

ちなみに理想体重の求め方は、設備が整っていれば二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)による体組成データから決定されますが、その設備がなければボディコンディションスコア(BCS)によって決定されます。具体的にはBCSが7、8、9であれば初期体重をそれぞれ1.2、1.3、1.4で割って算出します。


これらのプロトコールにはロイヤルカナンの満腹感サポートなどが使用されたようですが、減量用のフードはエネルギーの制限食であり、かつその他の必要な栄養素については十分補給できるよう設計されたものである必要があります。減量のために通常のフードを少なく与えれば、エネルギーばかりでなく必要な栄養素も制限することになり健康を損なう恐れがあります。

その上で、この論文では「完全減量プロトコール」と「部分的減量プロトコール」の比較を実施しています。志の低い目標を立てるより、鼻っから理想を目指す方が良いに決まっていると思われた方も多いのかもしれません。

結果は、「部分的減量プロトコール」の方が「完全減量プロトコール」より

 ・速い速度で体重が減少
 ・除脂肪組織量(脂肪を除いた筋肉や臓器の量)の損失が少ない

ということだったのです。

結構良いことずくめのようですが、「部分的減量プロトコール」に組み入れた猫たちが高齢であったり、顕著な肥満であったりと、「完全減量プロトコール」に組み入れた比較的若い肥満猫とは差があったため、解釈には一定の制限が必要です。

それでも除脂肪組織量が維持できることや、それなりの減量効果があることは「部分的減量プロトコール」が高齢猫や顕著な肥満猫にとって、大きなメリットのある最適の減量法であることを示しているのかもしれません。

人でも、毎月0.5kgずつ体重を落とすように生活習慣を見直し、緩やかに減量することが推奨されているようです。

若いころならいざ知らず、中年越えれば急激なダイエットはやめましょう^^」

と、減量できない自分が言っても説得力無いですよね~(↓)

(文責 吉内)


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