猫学

「ネコの痛みはAIに教えてもらう」の話

「ネコの痛みはAIに教えてもらう」の話

猫は犬に比べると、うれしさ、痛みなどを顔の表情から読み取るのがむずかしいものです。日頃の生活において、散歩などのルーチンワークが少なく変化に気づきにくいことや、 人に対して主張しない、助けを求めないという行動の特性から、「不調をかくす、姿をかくす」ように私たちの目に映ります。つまり猫の痛みは、私たちが「気づこうとしないと気付けない」ことが多いのです。

痛みは、その発生の部位によって3つに分類されます。

□ 体性痛:皮膚、筋肉、骨、結合組織(鋭い痛み)

□ 内臓痛:管腔臓器の内圧上昇、伸展、炎症(鈍い痛み)

□ 神経障害性疼痛:神経の圧迫や断裂(電気が走る痛み)

また、痛みの性質によっても3つに分類されます。

□ 急性疼痛:身体を損傷したときの痛み、外傷、外科処置の痛み、急性炎症

□ 慢性疼痛:慢性の炎症(膀胱炎、口内炎、関節炎など)

□ がん性疼痛:急性疼痛と慢性疼痛を生じ痛みは強く長い

急性疼痛は体性痛であることが多く、比較的気づきやすいはずですが、猫ではそれでも難しいことが多いかもしれません。

痛みは「痛い」という感覚から以下のような情動を生じます。

□ 恐怖反応(↑)

□ 不安傾向(↑)

□ フラストレーション(↑)

□ 警戒心(↑)

□ 集中力(↓)

□ 好奇心(↓)

その結果、様々な行動の変化が現れるのです。

□ 増える行動:休息行動、逃避行動、恐怖行動、不安行動、攻撃行動、常同行動、愛着行動など

□ 減る行動 :摂食行動、身づくろい行動、遊び行動、探索行動、学習行動など

明らかに痛みがある場合をのぞけば、この行動の変化を読み解き、痛みがあるに違いないと結論付けるには、相当な困難があるに違いありません。実際、犬と比較して、鎮痛剤が猫に処方されるのは10分の1程度と言われているのです。

もし痛みの程度を適切に評価することができれば、動物病院での鎮痛剤の投与の際に役立てることができ、痛みに耐えている猫を楽にすることができるのです。

これまでにも猫の顔(耳や口元)、体勢、鳴き声、様子や行動の変化、触られた時の反応などから痛みを評価するいくつかの「ペインスケール」が考案されています。

モントリオール大学附属動物病院が2019年に開発したGrimace Scaleを少し紹介しておきましょう。

耳の位置、目の開き具合、マズルの緊張度、ヒゲ、頭の位置に着目し、これらの特徴にスコア(0 = なし、 1 = 中程度、2 = 明らかにあり)をつけ、合計スコアを出します。合計スコアが4以上の場合、猫は痛みを感じている可能性が高いと評価します。

つまり、痛みのある猫は、①マズル(上唇)が平たく持ち上がり(横に広がり)、② 耳が外に向いて伏せがちで、③ 目が半目になり、④ 髭が顔に沿って張り付き、⑤頭の位置が体軸に近い、ということなのですが、なかなか評価に熟練が必要かもしれませんし、短頭猫種ほど痛くなくても痛そうに見えることもわかっています。

そこで朗報です!!

わが国の「動物のいたみ研究会」が、猫の顔の表情をAIで分析することで、猫が「痛みを抱えている顔」をしているか否かを判別できるツールの開発を行いました。そして、90%以上の精度で「猫が痛みを抱えている表情」をAIで判別できるアプリ(CPD: Cat Pain Detector)をリリースしたのです。

その実力やいかにというところではありますが、何より、猫が痛みを抱えていてもなかなかそれに気づくことが難しいということを多くの方々に知ってもらえることは、痛みを人に訴えることが苦手な猫たちにとって、大きな前進に違いありません。

このアプリで気付いてあげられる飼主に! 無料ですので、ぜひお試しあれ^^

(文責 吉内)


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住所
大阪府大阪市平野区長吉長原3-5-7
営業時間
午前:9:00 〜12:00
午後:13:00〜15:00(水・土を除く)
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