2009年12月01日 栄養学

「肥満」の話

「肥満」の話

 人と話をしている時に、この人にこれだけは言ってはならない、このことには触れてはいけないということがあるものだ。それが例え裸の付き合いをし、どんなことでも許しあえる間柄といえども、無神経な言動がすべて肯定されるわけではないだろう。

 先日、とある獣医科大学の先生から連絡があり、日本獣医学会の臨床・生理・生化合同シンポジウム「肥満の最新臨床獣医学〜病態と治療〜」における、「臨床現場での肥満治療」の講演の依頼を受けた。獣医学を志す人間にとって最も権威ある学会からの依頼で少々荷が重いと感じつつもお受けすることとなり、おもむろに文献調べを始めたのだった。

 いくつかの文献をあたる内に
 Public Health Nutr. 2009 Jun 23:1-5. 
 Overweight in dogs, but not in cats, is related to overweight in their owners.
 Nijland ML, Stam F, Seidell JC.
 1Faculty of Medicine, VU University Medical Center Amsterdam, The Netherlands.
というオランダの公衆衛生の文献に出くわした。常日頃から感じてはいるものの、当人を前にしては決して口に出せない大変な問題を科学的に証明してしまったのだ。

要約は以下の通り。

目的:犬と猫の体重超過の程度とその飼主の体重超過の程度の関係を調べることによって体重超過および肥満の環境要因を定量すること。
デザイン:飼主の主な計測項目は、体重、身長とBMI(Body Mass Index=人の肥満度を表す指数)であった。動物では体重および理想体重との差異が獣医師によって計測された。
セッティング:アムステルダム(オランダ)の3つの動物クリニック。
対象:飼主と共に動物クリニックを訪ずれた犬および猫。犬と猫は1歳以上、飼主は少なくとも21才以上であることを条件とした。その条件から外れたものを除外したところ、犬とその飼主(47組)、猫とその飼主(36組)となった。
結果:犬の体重超過の程度とその飼主(r = 0.31)のBMIに有意な関係が発見された。飼育期間、動物の性別・年齢、飼主の性別・年齢・教育水準・活動スコアによる補正はその関係に影響を及ぼさなかった。しかし、犬が毎日散歩していた時間を補正すると、この関係は消失した。猫の体重超過の程度とその飼主のBMIの間に有意な関係は発見できなかった。
結論:犬の体重超過の程度は、猫の体重超過の程度と対照的に、その飼主のBMIに関係がある。

 はてさて、今現在、南大阪動物医療センターではペットスリムキャンペーンと銘打って肥満管理の推進を行なっている真っ只中。肥満のワンちゃんの減量指導をするときに、いったいどんな顔をして話をしようか。こんな論文の存在を知ってしまったばかりに真っ直ぐ飼い主さんの顔を見られないかもしれない。げに恐ろしきは科学の進歩、統計学の数字の威力。思わずBMIの話が口を突いて出てしまったらどうしようと、普段の軽口の自分を戒める日々が続くのだった。

(文責:よしうち)

大阪市の南大阪動物医療センター

住所
大阪府大阪市平野区長吉長原3-5-7
営業時間
午前:9:00 〜12:00
午後:16:00〜19:00(月 〜 金)
午後:13:00〜17:00(土・日・祝)
定休日
年中無休
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