2010年11月01日 栄養学

「肥満治療薬」の話

「肥満治療薬」の話

 禁煙治療の報告は先月で終了するつもり、だったのだが、12週間のチャンピックスを終了し、最終のカウンセリングを終えた今、それでもふとタバコを吸いたくなることもあり、最終のカウンセリングで気になる話があったこともあり、後日談を少し。

 最後のカウンセリングの折に、禁煙を始めてから物事に集中できないとか考えがまとまらないとかって、無かったですかと聞かれた。チャンピックスが結合するレセプターはドーパミンを放出するレセプターだけで、セロトニンやノルアドレナリンなどを放出させるレセプターとは結合しない。喫煙=ニコチン摂取=脳内ドーパミン+セロトニン+ノルアドレナリンの放出という図式なのだが、長年にわたり喫煙を続けていると、脳内ドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンのレベルが、喫煙をしてちょうど正常なレベルになって来るのだそうだ。根性だけで禁煙すると脳内ドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンのレベルが一時的に低下し、脳の活動が鈍る。チャンピックスを服用するとセロトニンやノルアドレナリンのレベルは低下するが、ドーパミンのレベルは幾分維持される。脳の活動の鈍り方は少しましということだ。そして、チャンピックスを終了すると、ドーパミンのレベルは下がるが、そのころには、セロトニンやノルアドレナリンのレベルは正常に戻っているということなのだ。なるべく脳の活動性を鈍らせないという意味では、ニコチンパッチなどのニコチン製剤よりより段階的という意味で優秀なのかもしれない。
 カウンセリングの雑談の中で、タバコがなければこの作品は生まれなかったという作家の話には事欠かないが、禁煙をして半年後に作品を書けばもっとすばらしい作品になっているかもしれないんですよという話があったのは印象的だった。

 さて本題の肥満治療薬の話。
 2007年にFDAによって初の犬用肥満治療薬「ジルロタピド」(商品名:スレントロール)が認可され、日本でも近日中に発売が予定されている。ジルロタピドは、小腸のミクロソームトリグリセリド転送蛋白の阻害剤であり、腸管でのキロミクロンの構築と分泌を妨げ、体循環における脂肪吸収を阻害することにより、体重を減少させる。このジルロタピドを主成分とする製剤は、あらかじめ適用した食事療法の効果が不十分な肥満犬における体重の減量を目的とし、米国、オーストラリア及び欧州で既に承認を受けている。
 ジルロタピドの毒性および治療効果はすべて用量依存性で、ALT、ASTの上昇、BCS(ボディーコンディションスコア)の低下が確認されている。また、3ヵ月間の安全性試験では、BCSの減少、ALT、ASTの上昇、血中脂溶性ビタミンの低下等が認められたが、休薬により回復する可逆的な所見であったとされている。
 日本での認可にあたり、慢性毒性試験の無毒性量と無作用量が同一レベル(0.25mg/kg/day)であること、したがって通常の用法・用量で無毒性量を超える場合があり、投与期間も長期にわたることから、劇薬に指定されることが決定している。
 臨床使用における有用性や問題点については近い将来に集積されることになるが、毒性、治療効果ともに用量依存性でしかも可逆的なことから、骨関節症等の整形外科疾患や糖尿病発病初期の急速な減量等、短期使用による治療には期待が持てそうである。





 このジルロタピド、脂肪吸収を阻害することにより、体重を減少させることになっているが、ファイザーのホームページでは挿入したシェーマのように90%が直接の食欲抑制作用によるとされている。この食欲抑制作用については、安全性への影響がほとんどないためか、PubMedなどで作用機序についての詳細を入手することはできていない。

 禁煙薬にしろ、肥満治療薬にしろ、結局は脳のコントロールなのかと思うと、製薬の未来に空恐ろしさを覚えるのは自分だけだろうか。かつてない夢のような薬の創薬は、そのまま、我々が構築してきた現在の環境の不自然さ、不健全さの裏返しなのかもしれない。

(文責:よしうち)


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