2011年02月01日 泌尿器

「アイリス」の話

「アイリス」の話

皆さんはアイリスと聞いて何を思い起こされるだろうか。あやめの花? それともゴッホの絵? 韓国のスパイドラマ? 家具屋さん? 虹彩も英語で"iris"というので、そんな名前の眼薬もあったっけ。



International Renal Interest Society(獣医腎臓病研究グループ)もIRISのひとつだ。



 このアイリスからの提言として犬と猫の慢性腎臓病の病期分類のガイドラインが示されている。病期分類とは腎臓病の進行の度合いを診断、評価するということで、まず血液中のクレアチニンの値によって5段階のステージに分け、次に、尿中のタンパク質、さらには血圧によってサブステージに分類している。

 以前は血液中のBUNとクレアチニンの検査が中心で、かなり病期が進行しないと慢性腎臓病は診断することが難しかったのだが、尿比重や尿タンパクなどの尿検査が重要視されるようになり、より早い時期に診断が可能となっている。

 実際、慢性腎臓病では正常組織が侵され残った腎機能が25%程度になって初めてBUNやクレアチニンの値が上昇する。そのはるか以前に腎臓の糸球体から血液中の微量なタンパク質が尿の方へ漏れ出始める。これを検出することでより若いステージでの診断ができるのだ。具体的には尿タンパク/クレアチニン比や尿中微量アルブミンの検出、また尿の濃縮能の判定指標としての尿比重検査などを血液検査と組み合わせ、的確なステージ分類を実施していくということになる。

 その結果として、末期治療が中心だった慢性腎臓病も、少しでも長く若いステージに留まれるようにという治療ができるようになり、腎臓病の動物たちにとって大きな恩恵となっている。さらに大きなメリットとして、飼主の方々、治療に当たる獣医師にとっても、末期治療にありがちな自棄的な対応を改め、より高い治療モチベーションを維持できることで、「動物―飼主―獣医師」という三者のより質の高い時間の共有が可能になったといえるだろう。

 問題がないわけではない。人の医療で尿検査をするのと動物医療で尿検査をするのとでは、天と地ほどの差がある。動物での随時採尿の困難さは動物医療を長年やってきた者にしか分からない。自宅で採尿していただいた自然尿の検査結果に右往左往させられるのはちっとも珍しいことではない。いろいろなものが混入し、経時的な変化をした尿サンプルは正しい検査結果と程遠い結果をもたらす。解決は膀胱穿刺しかないのだが、それがごくごく当たり前に行われている欧米と日本の事情は次元が違う。

 最近私は、にっこり笑って

 「針で膀胱を突いてオシッコをいただきます。」

 と、事も無げに言うようにしている。 実際採血よりも簡単なのだが、膀胱が空ではお話にならない。

 「ちょこっとエコーでオシッコがあるのを見てからですけどね。」と。

 人と動物の事情の違いに為すべきことが異なるのは当たり前。紙コップを動物たちに渡すわけにはいかないのだから、申し訳ないが、一瞬針で突く痛みは我慢してもらうしかない。

 採血を針で行うことに「エーッ」という人はいないが、採尿を針で行うことに多くの人が「エーッ」というこの日本。慢性腎臓病の動物たちのQOLを少しでも高くできるのなら、
「チクッと痛い採尿」があることも多くの飼主さんたちに知ってもらう以外にないだろう

 「アイリスにもいろいろあるけれど、検査にもいろいろとあるのです。」

(文責:よしうち)





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