2011年07月01日 社会事象

「動物に安全な節電」の話

「動物に安全な節電」の話

 東日本大震災による原発事故が、日本のエネルギー事情を大きく変えてしまった。日本の歩んできたエネルギー政策や原発事故後の対応が、世界で唯一の被爆国としての自覚や信念のかけらもなく、決して胸を張れるものではなかったことを国民のだれもが感じているに違いない。それより何より、目先の電力不足にいったいどう対応すればよいのか。そこには、企業や各家庭に節電を要請することで済むことと済まないことが混在し、この国の将来に垂れこめる暗雲を暗示するかのような思いに駆られてしまうのだ。

 そんなことを考えながら6月も半ばを過ぎ、梅雨本番といった鬱陶しい天気が続いて、いささかうんざり気味の体に、8月の盛夏並みの太陽がいきなり照りつけた。暑くなったら節電本気で考えようなどとのんびり構えていたところへ、突然焼け火箸を突き付けられたようなものだ。この時候ネタに反応したテレビ大阪の報道の方が当センターへ取材に来られた。節電と動物たちの暑さ対策についての取材だ。スタッフの皆さんの礼儀正しい態度ととりわけ局アナウンサーの大塚さんの可愛さが印象に残り、あっという間に取材の時間は過ぎて行ったのだった。

 最近の診察の折にも、そしてその取材の折にも尋ねられたのが、冷房の設定温度だ。節電の目安になっている28℃で果たして大丈夫なのか。これは一概に応えられるものではない。冷房機を含めた室内の環境、動物の種類や性格、基礎疾患の有無や肥満などのコンディション、そして飼主さんの性格や観察力など、様々な要因によって個別に慎重に回答するのが望ましいだろう。一般的、断定的な内容は、その条件から外れた動物の命を脅かしたり、飼主の方々に不要な経済的負担をかけたりすることになりかねない。取材の折にもそんな気持ちが曖昧な答えとなり、インタビュアーの大塚アナウンサーを困らせてしまったのだった。

反省も兼ねて断定しきれなかった部分をよーく考えてみた。

室内環境:風通しが良くて人がいくら快適と感じても、汗をかかない動物たちには温度が最も大切なファクター。大阪の夏の昼間、クーラーの不要なお家は無いと考えた方が良い。そのクーラー、機器の設定温度と実際の室温に開きのあることも少なくない。部屋のサイズに見合った能力のエアコンが設置されているのか。機器の能力と部屋サイズのミスマッチは節電の見地からも避ける必要がある。吹き抜けなどのエアコンが効きにくい構造になっていないか。天窓から直射日光が差し込んでいないか。要は動物のいる場所の温度は何度かを知るべきということだ。

動物の種類や性格:とりわけ犬は暑さが苦手。猫はまだどうにか凌いでくれる。それ以外の小型哺乳類や鳥類は比較的人の過ごせる環境ならば問題はない。むしろ、暑がりの飼主の方は冷房の効かせすぎにご注意を!節電OK。ならば犬はどんな犬でも同じかというと、大型犬(リトリバーやバーニーズなどなど)、短頭種(フレンチブルやパグ、シーズなどなど)は要注意。さらに、テンションの高い興奮型の性格が伴うと最悪。こちらは、キンキンに冷えた室内が無難で、節電と飼主の方の風邪に注意した方が良い。
(バックナンバー ・熱中症/(Aug'06)「体温調節の話」 、・短頭種症候群/(Sep'09)「ハナベチャの話」を参照ください。)

基礎疾患の有無や肥満などのコンディション:犬種や性格の問題以外にも、肥満があれば体温は上昇しやすく熱中症には気をつけなければならない。また、心不全や気管虚脱、喘息などの咳を伴う疾患を抱えている動物は、パンティングが咳のきっかけとなり、一気に症状が悪化することがあるから要注意。

 熱中症の症状はパンティングに始まり、それが止まらなくなり、口を開けよだれを垂らし、眼が血走り、粘膜が鮮紅色となり、ぐったりとしてくる。そのまま放置すると、血色素尿を出し、下痢嘔吐を伴い、意識が混濁して、最終的にはけいれん発作が出て、血圧が降下し、呼吸不全で亡くなってしまう。エアコンの温度を何度に設定するというよりは、パンティングが比較的速やかに収まる程度の環境を用意してあげて欲しいということなのだ。飼主の方々にはパンティングを始めてもすぐに収まるかどうか、よーく観察していただきたい。その観察力と外気温や時間帯によって設定を調節するマメさがあれば、節電は安全に実行できるはずなのだ。

 さらに、氷をなめさせるとか、最近はやりのひんやりシートを購入するとか、家が多少ビショビショになっても構わないならビニールプールに水を張っておいて水浴させるとか、霧吹きで体を濡らして扇風機に当たるとか、いろいろなものを併用する工夫次第で節電は可能かも知れない。



 ただ、節電の要請が、ここまで命がけの難業を飼主の方々とワンちゃんたちに強いることになるのを、
「関電さん、ほんまに分かってはるんやろね〜」と、一言問うてみたくなるのは自分だけなのだろうか。
「大塚アナウンサーはどない思わはります?」

(文責:よしうち)




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