2011年08月01日 泌尿器

「原因不明の膀胱炎」の話

「原因不明の膀胱炎」の話

震災の復興に福島第1原発の事故が足かせとなり、日本中が閉塞感にさいなまれているさなか、必ずしも日本国中の期待を担ってフランクフルトに向かったとは言えない彼女たちが凄いことをやってのけた。写真の花が何の花かは分からない人でも、「ナデシコ」は知っているに違いない。「撫子」と書くのが良いのか「撫でし子」と書くのが良いのかは???だが、「ナデシコ・ジャパン」の文言を聞かない日は無いのだから。彼女たちが逆境の中で積み重ねてきた努力とそれに裏打ちされた自負心が、ワールドカップ優勝という快挙を引き寄せたのだった。人知れず重ねられた努力が素晴らしい結果に繋がったことそのものよりも、その思いを貫き通したことに世界中の人たちが感動したに違いない。日本の未来に責任ある為政者に、彼女たちの思いの強さのかけらでも残っていればと感じたのは自分だけだっただろうか。



 原発事故ほどの計り知れない苦悩ではないのだが、自分たち臨床獣医師を悩ませ続ける病気の一つに猫下部尿路疾患(FLUTD)がある。バックナンバー『・ネコ下部尿路疾患/(Dec'00)「赤いおしっこの話」』を本コラムに掲載したのは10年も前の話。この10年の間に蓄積された知見も多く、キャットフードの質も大きく向上し、FLUTDの概念も大きく変わってきている。10年前、FLUTDといえばストラバイト結石が原因の多くを占め、時に結石も細菌も見つからない原因不明のものが含まれるという程度の認識だった。

 ところが現在では、原因不明が50%を超え、尿道を閉塞させるような栓子によるものが20%、尿道結石によるものが20%といわれており、この原因不明の尿路疾患を「特発性FLUTD」もしくは「特発性膀胱炎」と呼ぶようになっている。

 この特発性膀胱炎は特別な治療を行わなくても自然治癒することもあり、ストレスの緩和に努めれば良いというような考え方も出てきた。この不明とされる原因として推測されているのが、ウイルス、自己免疫性疾患、尿路上皮バリアの変化、神経性炎症、ストレスなどで、ヒトの間質性膀胱炎の原因として推測されているものと同じであり、発生のメカニズムも類似点が多いと推測されることから、ヒトと同様の治療が試みられるようになっている。

その一例として、従来のようにストラバイト結石を生じないようマグネシウムを制限しつつ、炎症を低減するよう抗酸化成分を配合し、オメガ-3脂肪酸やビタミンB6を増量した猫c/dマルチ(ヒルズコルゲート社)などの特発性膀胱炎に配慮したフードが市販されている。

また、膀胱粘膜層のグリコサミノグリカンの異常によって粘膜上皮の透過性が亢進し、炎症が引き起こされることが示唆されており、コンドロイチン硫酸ナトリウムと混合グルコサミンを成分とするCOSEQUIN(コセキン:バイエル社)を投与して長期の寛解を得たとの報告もある。今後の研究者の地道なリサーチに期待したい。

原発事故の収束も特発性膀胱炎の寛解も、一朝一夕に成らないことは同じなのだが、ナデシコたちのような思いの強さが、穴を穿ち達成へと導いてくれることを忘れないでおこう。

(文責:よしうち)



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