2011年12月01日 行動学

「赤ちゃんの寝顔」の話

「赤ちゃんの寝顔」の話

 今年も一年が終わろうとしている。今年ほど日本が大きな災厄に翻弄された年はなかった。東日本大震災、台風12号豪雨、失われた命や時間は量り知れない。そして今なお数え切れないくらい多くの人々の生活に影を落とし続けている。
 そのさ中に、米航空宇宙局(NASA)が、初期段階の衝突銀河「VV 340」の画像を公開した。地球から4億5000万光年の距離にある「VV 340」の2つの銀河は、数百万年後には融合して1つの銀河になるらしい。銀河同士の衝突、数百万年後の世界など宇宙規模の別世界の話と思っていたが、地球という惑星規模の震災や台風を目の当たりにして、現実味を帯びた1年だったのかもしれない。被災地の1日も早い復興を心よりお祈り申し上げたい。



 そんな暗い話には事欠かないこの一年、報道は震災の日に命を授かった赤ちゃんをクローズアップし、明るい出来事もあったのだと映像を流していた。周囲にどんな惨状が広がっていようが、母乳をお腹いっぱいに飲んですやすや眠る赤ちゃんのあどけない寝顔には、万人を安堵させる不思議な力が備わっていると感じたのは自分だけだったろうか。その不思議な力の一端が科学的に解き明かされ、利用が可能になったとしたらどうだろう。

 大人はミルクに含まれる乳タンパクを分解するのにペプシンというタンパク分解酵素を使っている。ところが、新生児はトリプシンという酵素で乳タンパクを加水分解しているため、大人がいくらミルクを飲んでも生成されないα-S1トリプシン カゼインという産物が、赤ちゃんのお腹の中では母乳から精製されるらしい。
 このα-S1トリプシン カゼインには脳のGABA 4-Abu というレセプターと結合し、不安を打ち消すという作用がある。つまり、赤ちゃんが母乳をお腹一杯飲んですやすや眠っているのは、単に満腹感だけでなくα-S1トリプシン カゼインを自らの力で精製し、この安心物質の作用によって心から安心して眠っているということなのだ。まさに赤ちゃんパワーとでもいうべき力のひとつが解明されたということだろう。

 話はそれだけにとどまらない。このα-S1トリプシン カゼインを製薬会社が見逃さないはずはない。インターベット社というシェーリングプラウの動物薬部門がジルケーンという商品名でサプリメントとして動物用に商品化したというのだ。用途は動物の問題行動の大きな部分を占める不安からもたらされる分離不安症や常同症、落ち着きの無さから来る様々な障害など、相当な範囲の心理不安に適用される。犬や猫、人でも証明されている抗不安作用は、既存の精神安定剤や抗うつ剤と比べて緩やかだが、副作用がないという点で大いにアドバンテージがある。

 臨床応用の実証にはまだまだ時間がかかるとしても、赤ちゃんパワーのおすそ分けに、ベンゾジアゼピン製剤や三環系抗うつ剤にまさる安心感があることは誰の目にも明らかだろう。何より、赤ちゃんのあのあどけない寝顔に秘められた秘密を知るだけで、安心パワーをもらったような気になるのは、それこそ赤ちゃんパワーの凄さなのかもしれない。

 この健気な赤ちゃん自身の自助作用を知るにつけ、地球の未来を担う赤ちゃんに、α-S1トリプシン カゼイン以上の安心感を築き上げることこそ、今を生きている大人がなすべき責務なのだと、改めて思い知らされる思いがしたのだった。

(文責:よしうち)



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