2012年01月01日
感染症

「原虫」の話(クリプトスポリジウム編)
新年明けましておめでとうございます。
今年も本欄をよろしくお願いいたします。
昨年は震災、大雨、放射能と、これでもかと災厄に見舞われた1年でしたが、今後何十年にもわたって尾を引く可能性のある原発事故が、人智の驕り昂ぶりによってもたらされたようで残念でなりません。
個人的には、昨年3月に博士(獣医学)という学位を取得することができ、4年半の大学院生活にピリオドを打ちました。コツコツと愚鈍なまでの研究生活でしたが、その地道な積み重ねが実を結ぶことになり大きな自信となりました。
ここ何年も年頭に思い浮かべる言葉は同じです。例のロシアの諺なのですが、懲りずに今年も自分を戒めるために記しておこうと思います。
「100年生き、100年学び、馬鹿のまま。」
今年も常に謙虚にひたむきに、1日1日を過ごしてゆきたいと思います。
さて、学位取得の話をしましたので、その学位論文のごく一部を紹介させていただきます。論文のタイトルは「犬猫における消化管内寄生原虫の分子疫学的解析」というものです。クリプトスポリジウム、ジアルジア、イソスポラの犬猫への感染状況の調査、人への感染リスクの評価がテーマです。
Cryptosporidium spp.は、世界的に広く分布し、ヒトに重篤な下痢を引き起こすことから 人と動物に共通の寄生虫として注目されています。 感染経路は、宿主の糞便中に排出されたオーシスト、あるいはこれらの原虫に汚染された飲水の経口摂取によります。

Cryptosporidiumには、ヒトを含む広範な哺乳類を宿主とするC. parvumが知られていますが、その他にも各種動物に特異的と考えられる14種が含まれます。
C. parvum(広範な哺乳類が宿主)、C. hominis(ヒトの優勢種)、
C. canis、C. felis、C. suis、C. muris、C. meleagridis、
Cryptosporidium cervine genotype、monkey genotype
上記種は、人からの検出の報告がなされている種で、AIDSに罹患しているなどの理由で、他の動物種に特異的な種も数多くヒトから検出されています。
本研究においてクリプトスポリジウムは、
イヌ77個体中3検体(陽性率は3.9%)、
ネコ55個体中7検体(陽性率は12.7%)
から検出されました。下痢症状の有無で、有意な差は見られませんでした。
また、1歳未満のイヌ12個体中2検体(陽性率は16.7%)、
1歳未満のネコ9個体中6検体(陽性率は66.7%)で検出され、イヌ、ネコともに1歳未満の個体における検出率は1歳以上と比較して有意に高く、オーシストの排出期間はイヌで 21-88日間、ネコでは48-116日間でした。
検出されたクリプトスポリジウムオーシストの塩基配列の解析結果は、犬ではすべてC.canis ネコではすべてC.felis で、より広い宿主域を有するC.parvumは検出されませんでした。
犬猫ではそれぞれの固有種のみが検出され、一般的には人への感染の恐れは低いのですが、免疫不全など人の状態によっては感染が起こりうることも否定できません。
続きは次月以降で。どうぞお楽しみに。
(文責:よしうち)
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