2012年06月01日 人と動物の関係学

「薬」の話

「薬」の話

 「良薬口に苦し」とは言い古されたフレーズだが、転じて「忠言耳に逆らう」といった意味合いで用いられることが多い。そもそも良薬は本当に口に苦いのかと考えてみると、古来の薬は生薬であり、植物の成分を抽出したものであるから、この諺が生まれたころには、確かに苦いものだったのだろう。

 現在では、古来の薬を含めた漢方や、鉱物や動物から作られるもの、化学的に合成されるもの、果ては遺伝子組み換えによって細菌などに作らせるものまで、多種多様という言葉で表現できぬ位に多くのバリエーションから、薬というものが作り出されている。

 実際に自分たちが日常の診療で用いる薬剤は、薬事法上では、医薬品、動物用医薬品、医薬部外品、サプリメントといった区別がなされることが多いのだが、日本における動物医療の現状は、獣医師が動物用医薬品のみで診療を行うにはあまりにも動物用医薬品の種類が少なく、診療そのものが成り立たない。やむなく人体用の医薬品を獣医師の裁量権の範囲で動物たちに使用することとなる。むろん、動物用医薬品がふんだんに供給されている米国等において動物たちに明確な薬理作用が示されている薬剤を、推奨される薬用量で用いるのだが、そもそも人体に使用することが前提の薬剤は、1錠当たりの含有量も動物向けには不便な上に、味やにおいに敏感な動物たちには「良薬口に苦し」などと笑っていられない。飼主の方々が投薬のために動物たちと格闘することを余儀なくされる場面も少なくないというのが実情だろう。

 そんなこんなで検索エンジンで「動物の薬の飲ませ方」を見てみると、図解から動画まで、わんさかとアドバイスのページが見つかる。手前みそだが、自分が編集委員のひとりでもあるペピイには次のような懇切丁寧な解説が載っている。(参照されたし)

 ところが最近では、そう悲観したものでもない。動物用フレーバー錠や経皮吸収される滴下剤などが工夫され、発売されるようになってきた。バニラやビーフ、レバーなどのフレーバーを配合し、動物が嫌がらないよう配慮したもの、滴下するだけで皮膚から吸収されるもの、1回の注射で2週間ほど効果が持続するもの、動物にも、投薬をする飼主の方々にも、処方する獣医師にもストレスの少ない治療が可能となってきた。

 けれども増えてきたとはいうもののまだまだごく一部の薬剤だけにとどまっている動物薬。必要な多くの人体薬は依然として動物たちの意にはそぐわない。そこでひとつアドバイス。強制的な投薬に慣れている自分たちでも薬を飲ませるのに手を焼く動物たちは、臭くて嫌な味を何度も無理やり味わわされ、飲ませなければならないという責任感から鬼の形相になって強引に口の中に指を突っ込んでくるいつもと違う飼主さんの顔を知ってしまった動物たちということなのだ。無理やり飲ませる前に、先ず何かで誤魔化すことを考えよう。水で練ったいつものドライフードでも、缶詰フードを丸めたお団子でも、獣医さんには内緒のささ身でも、薬が中に隠れていることなどすっかり忘れて堂々とご褒美として与えてあげてほしい。それでもダメなら、味わわせないように直接喉にやさしく入れてあげること。その前後にご褒美をあげることを忘れずに。本当の良薬は、動物たちの健康を気遣い、回復を願う飼主さんの胸の中からあふれでる愛情そのものなのだから。

(文責:よしうち)




大阪市の南大阪動物医療センター

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大阪府大阪市平野区長吉長原3-5-7
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午後:16:00〜19:00(月 〜 金)
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