2012年07月01日 歯科

「ナノテク」の話

「ナノテク」の話

 ナノテクノロジー (nanotechnology) は、物質をナノメートル (nm10-9m)の領域すなわち原子や分子のスケールにおいて、自在に制御する技術のことで、ナノテクと略される。2001年にアメリカのクリントン大統領がナノテクを国家的戦略研究目標としたことから、日本でも多くの予算が配分されるようになり、現在最も活発な科学技術研究分野のひとつとなっている。
 1ナノメートル (nm) は1メートルの10億分の1、10-9メートルで、DNAの二重らせんの直径は約2nm、最小の細胞であるマイコプラズマの全長は約200nmだ。その大きさを例えれば、1メートルと1ナノメートルの比は、地球とおはじきの大きさの比とほぼ等しいといえば分かるだろうか。
 しかしナノテクは、いまだ一部の新素材やコンピュータのプロセッサに応用されている程度の段階で、21世紀をかけて大きく発展する分野と考えられているのだが、その分野で、最近になってナノソイ・コロイドの商品化が盛んになっている。

 このナノソイ・コロイド、世界特許を取得した素材で、一言でいうとナノ化した大豆脂肪酸ということなのだが、脂肪酸ナトリウムもしくは脂肪酸カリウムが=純石鹸そのものであることを考えれば、乱暴な言い方にはなるがナノ化した石鹸と言い換えることも可能だろう。
 そもそも石鹸とは、界面活性剤であり、油や油を含む汚れを水に分散させる作用により洗浄能力を持つ。また、細菌の細胞膜やウイルスのエンベロープを破壊するため、一部の病原体に対して消毒効果を発揮する。その石鹸がナノ化することで、洗浄力や拡散性、消毒効果に想像を絶する変化が現れたとしても不思議はない。
 ナノメートル領域におけるソイ・コロイド粒子のブラウン運動(不規則運動)は、あたかもナノのお掃除ロボットが出現したかのような働きをし、既存の洗浄剤では得られないような効果を発揮する。それをどのような現場でどのように実用化するかは、まさに工夫次第といったところだ。

 それを、われわれ臨床獣医師の悩みの種である動物たちの歯磨きに応用した製品が発売された。商品名は「ナチュラルミスト」。動物の口腔清浄用スプレーという位置づけだ。動物の歯は人と異なり、近接した歯列をもたない。したがって歯間に食べ物が挟まることも少なく、多くは歯周ポケットに溜まった歯垢から歯石が形成されることで歯周病を発病する。そこで、ナノソイ・コロイドの出番ということになる。ブラッシングという粗い物理的な洗浄ではなく、ソイ・コロイドのブラウン運動によるナノレベルの洗浄を1日2回口腔内にスプレーするだけで達成することができるのだ。
 スケーリングによって折角綺麗になった歯も、3か月もすれば歯石が再付着し、全身麻酔をかけてまで実施したのに元の木阿弥、という悲しい状況も大幅に改善される。もちろん歯石が付着していなければ予防的に使用することもお薦めだ。まだまだ少ないデータだが、口腔内の細菌数も大きく減少することが分かってきている。結果として実感できるのは劇的な口臭の改善だ。それはとりもなおさず、猫の慢性歯肉口内炎の増悪因子を減らすことになるため、症状の軽減効果が期待できるだろう。



 天然素材で全くの無害。歯石の付着や口臭を低減できるナノソイ・コロイド。しつけとしてのブラッシングは重要だが、口腔衛生的にはナノソイ・コロイドに圧倒的な優位性がある。1日2回のスプレーならどんなにやんちゃなワンちゃんでも実施可能。ネコちゃんにおいても、付属のスポイドで左右の口角から目薬のように点してあげればよい。いよいよナノテクを動物医療の現場で活用する時代がやってきた。動物たちのお口の問題で困っておられる飼主の方々、一刻も早くその恩恵を実感されてみてはいかがだろうか。

(文責:よしうち)




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