2012年09月01日
感染症

「肝に銘じる」の話
昨年、焼肉酒家えびすの事件で多数の死者が出た。それを受けた厚労省の調査で、食肉処理場で解体された牛の肝臓内部から腸管出血性大腸菌O157がみつかったことから、生レバーの提供禁止に踏み切ったことは、周知の事実だ。
厚労省は「健康に害があるというものが内臓の中にあるということが分かった以上、規制するということは必要」としたのだが、この論理を推し進めると、昨年1年間で5件発生し、70代の女性1人が死亡している生卵も十分に規制の対象となりえる。実際、食品に雑菌はつきもので、どんな食べ物でもリスクがゼロというのはあり得ない。国が安全のために食べ物を規制することは必要ではあっても、様々な食材を相応の知識を持って安全に食に供するという智慧や食の喜びをも奪う結果になっていることは残念でならない。
本来、高齢者や子供など免疫力が低い人は生ものを控えるべきで、昔だったら子供に生肉を食べさせるという発想などなかった。リスクがゼロという食べ物などあり得ないということを理解していない若い世代が増えているということなのだろうか。
現に、7月1日の規制の直前に、駆け込みでレバー刺しを食べた人の食中毒が多発したが、その中には小学生の患者もおり「規制される意味」の理解が欠如していると言わざるを得ない。
食の安全は国任せで、消費者は自己防衛もしない全くの無防備というのでは、規制強化に向けて一直線だ。消費者も自分のこととして考え、食中毒など食の安全に関心をもち、身を守るための生活の知恵を身につける必要があるのではないだろうか。
同様のことが、自分たち小動物の獣医師の世界にも存在する。何度となく取り上げているズーノーシス=人と動物の共通感染症の問題だ。人と共に暮らす動物たちは、人にとって安全でなければならない。予防できるズーノーシスはたくさんあるのだが、果たしてどのくらいの割合で動物のズーノーシスが予防されているのだろうか。この問題についても、多くの人たちに関心を持って頂き、共に暮らす者同士のマナーとして予防を実践して頂く必要がある。食の安全同様、無関心が規制を生み出すのであれば、極論ではあるが、ズーノーシスで不幸にして亡くなる人が出れば、動物の飼育規制につながりかねない。自分たち小動物獣医師には、「安全なペットとは」ということについて、多くの人たちに関心を持って頂き、ズーノーシス・コントロールを啓発していく使命があることをそれこそ「肝」に銘じたい。
(文責:よしうち)
先日、大阪府立大学りんくうキャンパスでそのズーノーシスについて講演させて頂く機会を得ました。70名ほどの方にご参加いただき、楽しく有意義な時間を過ごすことができました。

このポスター(上)にある通り、「地域密着フォーラム2012」と題した大阪府立大学のイベントでした。少しでも皆さまのお役に立てればと、その際のテキスト(下)を本コラムに掲載させていただきます。ぜひ関心を持って頂き、ダウンロードしてご覧いただければ幸いです。(よしうち)
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