2012年11月01日 社会事象

「再生医療」の話

「再生医療」の話

 山中伸弥京都大教授のノーベル医学・生理学賞受賞のニュースは、政治・経済・外交となにかと閉塞感の漂う日本社会に、数少ない明るい話題として元気と勇気を与えてくれた。
 彼の作製したiPS細胞(人工多能性幹細胞/Induced pluripotent stem cells)は、体細胞へ数種類の遺伝子を導入することにより、ES細胞(胚性幹細胞)のように非常に多くの細胞に分化できる分化万能性 (pluripotency)と、分裂増殖を経てもそれを維持できる自己複製能を併せ持つ細胞と説明される。
 分化万能性(Pluripotency)とは、胎盤などの胚体外組織を除く、一個体を形成するすべての細胞種へと分化可能な能力のことを指す。
 この分化万能性を持ったiPS細胞をいかに臨床に持ち込むか、実用化にむけた研究が活発化する中、東大病院特任研究員、森口尚史氏(48)の世界初の臨床応用という虚偽の発表は余計な話題だったが、京都大の中辻憲夫教授(幹細胞生物学)らの研究グループの開発したiPS細胞から臨床応用に適した心筋細胞を高純度で作り出す方法が、米科学誌セル・リポーツ電子版に掲載され、iPS細胞の未来に大いに期待が膨らんでいる。

 これらの話題はすべてヒト医学の範疇に入るもので、残念ながらわれわれの獣医学にそのままに転用できるものではない。イヌiPS細胞やネコiPS細胞の登場にはまだまだ時間が必要だろうと、ヒト医学の躍進をうらやましく思っていた折、多少のスケールの差こそあれ、気になるニュースが飛び込んできた。

 米国ベンチャーが開発した脂肪組織由来幹細胞のイヌでの臨床応用の話題だった。臨床例は7,000例。体から小手術で脂肪組織を採取し、レーザー光などで幹細胞を活性化する処理を実施し、静脈へ戻すというもの。脂肪組織は不活性な幹細胞を多量に含み、処理によって活性化し静脈に投与された幹細胞はその追尾性によって幹細胞を必要としている組織に移行するらしい。7,000例は関節炎の症例で、軟骨再生に効果があったという。
 この場合、脂肪組織から得られる幹細胞は間葉系幹細胞と呼ばれ、iPS細胞の持つ分化万能性に対し、分化多能性(Multipotency)という分化可能な細胞系列は限定されてはいるが、胚葉を超えない範囲で多様な細胞種へ分化可能な能力を備えている。
 具体的には軟骨、骨、脂肪、血管内皮、神経(?) などへの分化能を有し、骨折癒合不全、脊髄損傷、炎症性関節炎、腎不全などで効果が期待されている。
 問題がないわけではない、眠っている大量の幹細胞を確実に活性化できているのか、静脈投与という血液中への投与で確実に目的とする組織の再生を果たせるのかなどなど。
 そのあたりの効果への疑問点はあるものの、病院内で1日の処置で済むという簡便性、自己細胞の使用による高い安全性など、今後効果が証明されて行くに従い、飛躍的に実施数が増大し、様々な疾患における治療の選択肢の一つになることは間違いないだろう。

 現在、某メーカーが本キット一式の販売を農水に認可申請中だという。どのくらいの投資を覚悟しなければならないかは不明だが、様々な原因で失った神経機能や運動機能など、あきらめていた損傷の回復に見えてきた一筋の光明を、何とか実現できればと期待膨らむニュースだった。

(文責:よしうち)


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