2013年06月01日 感染症

「ダニ」の話

「ダニ」の話

 「ダニ」と聞いて耳に心地よいと感じる人はまずいないだろう。顔をしかめ、体にムズムズというかゆみを感じる人、「町のダニ」「社会のダニ」を思い浮かべ陰鬱な気持ちになる人、ハウスダストマイトを思い浮かべてアトピーの事を考える人、「ダニ」はとかく厄介者に違いない。

 生物としての「ダニ」は世界に2万種いるとされ、ニキビダニひとつとっても、寄生相手や部位によって細かに種分化し5千種を数える。欧米では大型の吸血性のダニであるマダニ類とそれ以外のダニを区別し、前者を英語でTick、ドイツ語でZecken、後者を英語でMite、ドイツ語ではMilbenという。なにしろ種類が半端なく多いのだ。

 その中でわれわれ人間の生活に関係のあるダニはというと、吸血という行為でかかわってくるマダニの仲間、イエダニの仲間、ツツガムシ、長期間皮膚に寄生するヒゼンダニ、ニキビダニ、ハウスダストの一部としてアレルギーの原因となるチリダニの仲間などが挙げられる。(疥癬症・MDR1遺伝子異常/(Jun’07 )「疥癬虫とMDR1遺伝子の話」/・毛包虫症/(Oct’07 )「ニキビダニ」の話 参照)

中でもマダニなどはその吸血という行為を通じて、病原微生物が媒介されることがあるため、単に虫刺されに留まらず、深刻な事態を招くことになる。わが国で確認されているヒトと動物におけるマダニが媒介する病気には以下の表のようなものがある。



 本年1月に山口県の成人女性で重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の感染が確認されたのを皮切りに、遡り調査により8名の感染が確認され、5名が死亡例、3名が回復例であったことは記憶に新しく、マダニに対する社会的な関心が高まっている

 私たち獣医師の日常診療において、マダニはバベシアを媒介する厄介者として、古くから常に注視すべき対象として位置づけられてきた。バベシアはイヌの赤血球に寄生し発熱や貧血を引き起こす重篤な疾患として国内で広く発生が確認されている。イヌで最も多く回収されているマダニはフタトゲチマダニで、キチマダニ、ヤマトマダニと続き、このフタトゲチマダニがSFTSの媒介にもかかわっているとされている。

 フタトゲチマダニは幼虫、若虫、成虫と成長し、卵以外の各ステージで吸血を行うものの、吸血を終えるたびに体表から離れ、地面に落下して脱皮を行い、雌の成虫は産卵する。幼虫、若虫、成虫の宿主がそれぞれ異なることから、3宿主性のマダニといわれている。



マダニのライフサイクルと犬への寄生
(バイエル薬品:パラサイトソリューション総合ガイドブックより)

 これらのマダニが先の表のいずれかの病原体を保持し、媒介する可能性があること。その結果、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジなどの動物がいずれかの病原体を保持することの可能性や、感染・発症へと進んでいく可能性を考えておく必要がある。病原体の種類や動物種によって保持・感染・発症の有無は様々で、SFTSのように今後の研究を待たねばならない新興のウイルスやリケッチアも多い。もとより犬に直接被害を与えるバベシアの媒介を避けるためにも、また、それまで無縁であった自分たちの生活空間に犬たち猫たちがマダニを持ちこむことを避けるためにも、動物たちのマダニ予防は積極的に実施すべきだろう。

 マダニの吸血という行為に便乗して人や動物の命を脅かす様々な病原微生物の狡猾さに、尻尾を巻いて逃げる訳にはいかないのだから。

(文責:よしうち)



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