2014年01月01日 繁殖学

「めぐりめぐって」の話

「めぐりめぐって」の話

 新年明けましておめでとうございます。
 今年も本欄をよろしくお願いいたします。
 ここ何年も年頭に思い浮かべる言葉は同じです。例のロシアの諺なのですが、懲りずに今年も自分を戒めるために記しておこうと思います。
 「100年生き、100年学び、馬鹿のまま。」
今年も常に謙虚にひたむきに、1日1日を過ごしてゆきたいと思います。

 さて、みなさんは「ギフト経済」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。お互いが優しさを贈り合うことで成り立つ経済のこと。その根底には、見返りを求めない親切がめぐりめぐって自分に戻ってくる「pay forward」 という考え方があります。このギフト経済を広めているのが、「Service Space」をアメリカで創設したニップンさん。「Service Space」は、さまざまなプロジェクトを通して“優しさの実験”を行なっている団体です。日常の中で小さな良いことをしている人のドキュメンタリービデオを集めたサイト「Karma Tube」、匿名の親切をしたときに渡す「スマイルカード」など。これらは全てボランティアで運営され、世界各地に広まっています。
 このように、一人ひとりが日常の生活の中で、仕事の中で、何かに気づき、その気づきから動くことによって、社会を大きく変えることができると考える人が増えてきました。そんな動きを、ソーシャルデザインと呼ぶようです。閉塞感の漂う社会から明るい未来を見出す試みは新年の話題にふさわしいのではないでしょうか。

 話は全く変わりますが、不妊手術についてです。そのメリット、デメリットや必要性については、本コラムのバックナンバー/不妊・去勢手術/(Jan’01)「ニュータードとインタクト」を参照いただければと思いますが、その方法についてのお話です。

 昨年10月に日本獣医生命科学大学獣医学部臨床繁殖学教室の堀達也先生の講義を聴く機会がありました。獣医学における繁殖学の花形は何といってもウシ、ブタなどの大動物で、人工授精や受精卵の移植など、倫理面で人間では考えられないことも、経済動物なればこそで、長足の進歩を遂げています。したがって日本の獣医学部でイヌ、ネコなどの小動物の繁殖を研究している研究室はほとんどなく、堀先生の研究室が唯一といってもよいくらいなのです。

 その講義の中で、インタクトのメス犬に多発する子宮蓄膿症はプロジェステロン(女性ホルモンのひとつ)の存在下で初めて発病すること。したがって中性化が目的の手術は卵巣の摘出のみでよく、子宮が残存していても子宮蓄膿症のリスクはないとのことでした。

 30年以上前の日本ではそれで十分という理由で、不妊手術といえば卵巣摘出術でしたが、アメリカ獣医学が導入されてからは、リスクはすべて取り去るという理由で、卵巣子宮全摘出術がスタンダードになりました。そして現在に至って、学術的な研究が進み、堀先生の講義のような知見がもたらされたのです。卵巣子宮全摘出術は術創も大きく、手術に伴う合併症も卵巣摘出術よりはるかに多いと報告されています。卵巣摘出術では発情兆候が回帰する副卵巣の問題が指摘されていますが、極めてまれなことです。最少の侵襲で動物と人の絆を危うくさせる発情行動が回避できる卵巣摘出術が、不妊手術として十分であると科学的に認められたことで、今後日本における不妊手術の主流も変化するのではと考えられます。

 最良の方法が、時を経てめぐりめぐって初めの方法に戻るというのは、ある時点における最良が常に最良ではないことを考えさせられるとともに、先に紹介した「pay forward」の考えを思い起こさせ、とても微笑ましいと感じたのでした。

(文責:よしうち)




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