2014年03月01日 感染症

「台湾の狂犬病、その後」の話

「台湾の狂犬病、その後」の話

 2013年8月に本コラムでも取り上げさせていただいた「台湾における狂犬病」は、今現在、どうなっているのでしょうか。2月21日〜23日に千葉県幕張メッセで開催された日本獣医師会学術学会年次大会の「狂犬病対応シンポジウム」に参加してきました。

 5名のパネリストからそれぞれの立場で「わが国の対策がどうあるべきか」について、現状報告と問題提起がなされました。「農林水産省の対応」、「厚生労働省の対応」、国立感染症研究所から「台湾における取り組みの現状と課題」、東京大学から「日本における対策の在り方」、京都洛和会丸太町病院から「2006年のヒトの輸入狂犬病事例」という5題の講演の後、総合討論というプログラムでした。

 特に興味をひかれたのは現在進行形の「台湾における取り組み」で、学ぶことの多さに驚いてしまいました。

 ひとつは1999年から開始された動物の狂犬病モニタリングで、2012年までの間に7,238頭のイヌ、コウモリ、野ネコなどが調査され、すべて陰性であったとのことです。1961年の報告を最後に狂犬病が制圧された平時においてもモニタリングが行われ、2012年に開始された野生動物の疾病調査と結びつき、狂犬病を調査項目に追加した2013年にいきなりイタチアナグマの陽性に行き当たり、狂犬病の摘発につながったとのことで、13年間黙々と続けられてきたモニタリングの重要性に改めて気づかされたのでした。その後、食肉目を中心に咬傷のある死亡個体3,000頭が徹底して調査され300頭のイタチアナグマ、1頭のジャコウネズミ、1頭のイヌで陽性が確認され、2014年に入っても、毎日1頭の割合で陽性のイタチアナグマが見つかっているとのことでした。



 もうひとつは、対応の周到さです。
1)狂犬病疑いの報告
2)狂犬病の確定
3)狂犬病に感染した疑いのある人への暴露後予防接種
4)発生地域の犬などへの予防対策
5)狂犬病流行地域の特定
といった対応がわずか1か月余りで行われ、幸いにも人の発症例は報告されていません。
下の写真は、台湾の地下鉄の駅構内(ほぼ全駅に掲出)にある狂犬病の注意喚起広告です。



最後に、イタチアナグマの狂犬病はどこから来たのかという質問が出ました。
イタチアナグマの狂犬病についての研究は始まったばかりですが、
1)他の動物種にも感染可能
2)他の動物種へは伝播しにくい(食物連鎖の捕食される側の動物であるから)
3)狂犬病ウイルスは、遺伝子解析によって主に3つのグループに分かれており、最近に輸入されたものではない。
ということが明らかにされており、一方で、イタチアナグマの台湾における生息数や生息地域が、近年の自然環境の変化によって急激に増加してきたと考えられることから、1961年に制圧されたとされる狂犬病が、イタチアナグマという種の中でひっそりと流行し続けていたと推測されるとのことでした。

 狂犬病の人への感染は、95%以上が犬からという現実は変わりません。
「 野生動物 → 犬 → 人 」
という図式で野生動物から偶発的に犬に伝染した狂犬病が人に来るということで、野生動物から人に伝染する確率は低く、人の感染源である犬の予防対策が最重要であることに違いはありません。犬での狂犬病の万延防止には70%の接種率が必要とされています。さらに野生動物での感染拡大阻止に向けての調査・研究が進み、ベイトワクチン(経口ワクチン)等の開発が進むことを期待します。

(文責:よしうち)




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