2001年08月01日 社会事象

「動物虐待」この哀しい話

「動物虐待」この哀しい話

7月9日に朝日放送の方が来られた。動物虐待についての取材にである。事前に了解を求める電話をいただいていたのだが、私自身、昨今の余りにも惨い動物虐待事件には大きな憤りを感じていた。幾許かでもこの哀しい出来事の撲滅の力になれればと、取材に応じたのだった。7月12日の夕刻、「ワイドABCです」の中の事件簿のコーナーでの放映となった。 そもそもなぜ南大阪動物医療センターへの取材だったかということなのだが、先日の公園での殺虫剤によるワンちゃん毒殺事件で、被害にあったワンちゃんが運び込まれたのが当センターだった。異変に気付き慌てて自宅に戻られた飼い主の方から電話で一報が入った。その電話の最中に呼吸が止まった様子で、電話を受けこの動物を担当した出村獣医師は即座に来院を指示したが、来院時既に心肺停止の状況で、体温降下も始まっていた。そしてその顛末は、各局の報道のとおりである。 なぜ、このワンちゃんは殺されねばならなかったのだろう。そんなことを鬱々と考えているうちに、こんどは、エアガンで眼を撃ちぬかれたワンちゃんの報道。以前にも足を切り落とされた猫や矢ガモの話があった。 直接的な原因は、動物から被った何らかの被害に対する報復なのかもしれない。例えば排泄物や吼え声の問題のような。にしても、余りにも卑劣である。しかし、それだけでは説明しきれない冷徹さや残虐性が見え隠れする。物言えぬ、疑うことを知らぬ動物たちを相手に、決して許されることでは無い。 日本は法治国家あり、国民は基本的人権を保障されている。動物には「動物の愛護と管理に関する法律」があり、ようやく改正され、虐待を加えた者に対する罰則が改められた。しかし、これは人としての最低限の優しさを持とうと言うことであって、人間自身に対する自戒のための法律に過ぎない。同じ社会に生活し、人との絆を信じて疑わない彼らに、法律はほんのわずかしか救いの手を差し伸べてくれないのである。 コンパニオンアニマルと呼ばれる動物たちが、時として野生動物たちを引き合いに出して語られることがある。しかし、決してそれは妥当な例えではないだろう。 以前に何かの番組でタテゴトアザラシの話を放送していた。タテゴトアザラシの母子の話である。赤ちゃんアザラシが自分で魚を獲れるようになるまで、極寒の地で母は母乳を与えつづける。母はキチンと自分の子を識別し、決して他の子に母乳を与えない。事故か何かで母アザラシが戻ってこなくなった子は、空腹の余り他の母アザラシの母乳をもらおうとする。その母アザラシは猛然とその子アザラシに攻撃し、寄せ付けようとしない。何度も母乳をもらおうと近付いていく子アザラシだが、とうとう最後まで受け入れられることは無かった。自分の母を哀しそうに呼びながら、子アザラシは氷河の上で息を引き取るのである。母乳は自分の子一人を育てるのが精一杯で、もらい乳を許せば、自分の子、自分自身にも生命の危機が及ぶという。過酷な自然の摂理である。中途半端な人間の介入を許さない厳しさがそこにはある。それを取材し続けたスタッフは、なぜ助けなかったのかと非難されるべきではないだろう。 その厳しさからすれば、人間社会の仲間となることで恩恵を受けてきたコンパニオンアニマルたちは幸せと言えるだろう。しかし、自然界の摂理に比べ、動物虐待には微塵の必然性も感じられない。利己的な悪意だけが伝わってくる。自分は社会や法に守られ、その枠組みから外れてきわめて弱い立場の動物たちに安全な場所から牙をむく。母アザラシの攻撃と、虐待を行う不届き者の攻撃には、哀しいほどの違いがある。しかも最近は動物たちに限った話ではなくなってきている。社会的弱者といわれるホームレスや子供たちにまで牙をむく。 いったい我々はどうしてしまったのだろう。繁殖しすぎた野ネズミが、集団で断崖から海へ身を投げるように、繁栄しすぎた人類は、自らの手で社会を崩壊させようというのだろうか。生きてゆくことにアクセクしなくてもよくなった社会は、アクセクしていた頃のエネルギーを持て余しているのだろうか。 くしくも、朝日放送の方が取材にこられた前日は、南大阪動物医療センターの第1回「動物と暮らすためのセミナー」の開講日であった。テーマは「犬の栄養としつけ」。4月から6月までに子犬を飼い始めた方を対象に、専門の講師にお越しいただき講演していただいた。良好な人と動物の関係は、動物にとっても人間にとっても幸福なことであり、社会にとっても好ましいものである。「人と動物の絆(Human Animal Bond)」という概念が誰にも受け入れられ、コンパニオンアニマル(伴侶動物)という言葉がペットという言葉にとってかわる時、きっと誰にも優しい社会が実現しているに違いない。少しでもその力になれればという思いで実現したセミナーである。 エアガンよりも優しい眼差しを、殺虫剤よりも挨拶を。人と動物の関係は、そのまま社会の優しさを映し出しているに違いないのだから。 (文責:よしうち)

大阪市の南大阪動物医療センター

住所
大阪府大阪市平野区長吉長原3-5-7
営業時間
午前:9:00 〜12:00
午後:16:00〜19:00(月 〜 金)
午後:13:00〜17:00(土・日・祝)
定休日
年中無休
最寄駅
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