2001年12月01日 内分泌

若返り薬と老け薬の話

若返り薬と老け薬の話

  最近、自分も年をとったものだと思うことが多くなった。体力や記憶力の減退。目の老化や高血圧、痛風などなど。若かった頃には考えもしなかったことが、結構骨身にしみたりしている。幸いに生来の童顔のおかげで、老けたと言われることはそう多くはないが、その腹の出具合はいかんやろうと、鏡を見て自分でも思う。年相応というべきか、日頃の不摂生の報いというべきか、とにかく慢性運動不足の解消にとフィットネスへ通い始めてしまった。

  動物たちにも、年齢を聞いて「そうやろね」と思える場合と、「えっ」と声を出してしまうほど老け込んでいたり、若作りだったりする場合がある。人も動物も、この世に生を受けたもの皆、老化を避けて通ることはできない。この老化と深く関わっている事柄に「新陳代謝」がある。体を構成する全ての細胞は、古くなれば壊れて新しい細胞と入れ替わる。骨でさえその例外ではない。他に、「エネルギー代謝」という言葉もある。物を食べ、消化し、吸収し、加工して、利用し、あるいは蓄積する。エネルギーはグルコースという形で利用され、グリコーゲンや脂肪という形で蓄えられる。この代謝という生命活動の根源を調節するもののひとつが甲状腺ホルモンである。

  この甲状腺ホルモンの分泌に問題があると、代謝に異常を来たす。犬では甲状腺機能の低下症が、人や猫では甲状腺機能の亢進症が多い。低下症では代謝がうまく進まず、エネルギーは利用が少なく蓄積が増えることになる。皮膚などの組織ではターンオーバーが遅くなり、古い皮膚がなかなか新しくならず、被毛もゆっくり抜け落ちてなかなか生えてこない。従って、動きの鈍い、脂肪太りの、毛艶の悪い、張りのない皮膚をした、薄毛の、夏でも寒がるワンちゃんになってしまうのである。これでは7―8歳でも12―13歳に見えてしまう。

  反対に、亢進症では代謝が進みすぎ、エネルギーは必要以上に消費され、蓄積が減り、臓器・組織は消耗が激しくなってしまう。従って、攻撃的で、大食いにも関わらず痩せ細り、検査をすると、肝臓や心臓が相当弱っているというネコちゃんになってしまうのである。これでは、相当な老ネコにも関わらず、内臓の疲弊とは裏腹に元気と食欲は若者並である。

  この老け込んだワンちゃんも、若作りのネコちゃんも、最終的には、適切な代謝ができている場合よりも短命で終わることが多い。過剰な蓄積も、また、過剰な消費も、正常な老化以上に、生命活動には負担となるのである。

  しかし、どこがどうと言うほどの症状でもなく、この子たちはこんな子たちなのだと、正常な老化であることに何の疑問も抱いておられないオーナーさんたちがほとんどである。健康診断や別の病気の際の検査で甲状腺異常が見つかっても、治療を開始するまでの道のりは長い。

  甲状腺異常の説明をし、低下症のワンちゃんには、甲状腺ホルモン製剤で不足した甲状腺ホルモンを補い、亢進症のネコちゃんには、抗甲状腺薬で甲状腺ホルモンが過剰に作られないように抑える治療があることを説明し、共に、生涯薬を飲み続ける必要性を説かねばならない。

  ワンちゃんの方はまだ良い。
  「飲めば若返り、元気が出て、貧血も良くなりますよ。」
と、良いこと尽くめの明るい話ができる。

  ネコちゃんは辛い。
  「飲めば年相応に老けることができ、食欲も落ちて、臓器への負担を減らすことができますよ。」
  これでは誰もそんな薬を飲ませたいとは思わない。老け薬を飲んだほうが長生きできるなんて、なんとも皮肉な病気ではある。

(文責:よしうち)


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