2009年04月01日
消化器


腸重積の話
「何かが伝達される」というのには「何が伝達される」にしろ、それなりの仕組みが必要だ。町内会の催しの告知には回覧板という仕組みがあり、遺伝子にはコドンという情報と二重らせんの仕組みがある。
動物たちが病院にかかる二大理由は皮膚病と消化器病だといわれている。その消化器の異常を精査していくと、最終的には閉塞性疾患、炎症性疾患、運動障害の三つに鑑別されていく。閉塞性疾患とは、異物や腫瘍、重積などによって、消化管の通過性が損なわれた危険な状態を言うのだが、それとて、炎症や運動障害と不可分なことも多い。
その中でも腸重積は、発症のメカニズムを検証することが難しく、突然の発症に続く急性腹症とその治療に動物も獣医師も翻弄されることになる。腸重積とは腸の一分節が別の分節に陥入することで発症し、通過障害を起こすと同時に腸間膜動静脈が挟み込まれることで陥入した分節が壊死し、放置すれば腹膜炎から死に至ることもある。突然の採食の廃絶と嘔吐、腹痛が主な症状で、診断は腹部触診におけるウインナー様の塊状物、腹部バリウム造影X-線検査における「蛇の舌」もしくは「アップルコア(りんごの芯)」様造影像、腹部超音波検査における二重消化管断層像などによる。
いったいなぜ腸の一部分が腸の中に入り込んで行ってしまうのだろうか。腸の運動性に何らかの問題が生じただろうことは疑いない。この腸の運動性の調節に関わる仕組みは多岐にわたる。しかもあの長い消化管に連続性のある運動を生み出し、あるときは消化のための分節運動を、またあるときは送り出すための蠕動運動を起こさせる。
疫学的には1歳以下の幼犬に初発し、回盲結腸接合部に最も多発するが、腸のいずれの部分にも発生する可能性がある。単一のことも複数のこともあり、また順行性にも逆行性にも発生する。シェーマ1のAが順行性、Bが逆行性の重積だ。

重積形成のモデルが2つ提唱されている。ひとつは消化管運動不均一によるモデル、いまひとつが機械的連結によるモデルだ。「I」および「S」は、運動性や蠕動が周囲の消化管壁と均一性を失っている部分を指し、「F」は生じる力を指している。
現状では、腸重積の治療は外科的介入によるのだが、最近発売されたプロナミドなどの消化管の運動促進薬を、幼犬では軽度な消化器症状においても積極的に使用していく等、消化管の運動性を意識した内科的な治療が、結果として腸重積発生の確率を低下させる可能性も考えられる。
何事においても、均一でスムースな情報の伝達が肝要ということだけは確かだろう。
(文責:よしうち)
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