2018年08月01日 猫学

「猫アレルギー」の話

「猫アレルギー」の話

現在、アレルギー、アナフィラキシー、アトピーという3つの言葉が、ときには同義語として、またあるときはより厳密に区別して用いられています。詳細の解説はさておき、アレルギー反応の分類表を載せておこうと思います。興味のある方は拡大してご覧ください。

       (表をクリックすると拡大されます)

 Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ型は血清抗体が関与する体液性免疫(humoral immunity)、Ⅳ型は感作リンバ球による細胞性免疫(cellular immunity)による反応です。日常の会話でアレルギーという言葉を用いて皮膚の症状や目鼻の症状を訴える場合には、たいていIgEという抗体が関与するⅠ型反応を指しています。

このアレルギー反応が発現する機序は、以下のとおりです。
 感作相(Induction Phase)
  ① 抗原(アレルゲン)と免疫担当細胞との接触
  ② T・B細胞協調作用によるIgEなどの抗体産生
 効果相(Effector Phase)
  ③ 抗原・抗体反応によるマスト細胞などのエフェクター細胞の活性化
  ④ エフェクター細胞からのヒスタミンやロイコトリエンなどのケミカルメディエーター放出による
   臓器・組織でのアレルギー反応の出現

                          (IgE)  (アレルゲン) 
  
 先日、当センターキャットクリニックのキトンルームで公開していた子猫をセブンイレブンのイートインから嬉しそうに見ている小学生の女の子がいたので、
 「抱っこしてみる?」と尋ねたところ、
 「あかんねん。あたし猫アレルギーやねん。。。」とさみしそうにつぶやくのです。
 「そっかー。ほなら見るだけにしとこか〜。」と答えざるを得ませんでした。

 猫に何の罪があるわけでもないのですが、いったい猫の何がアレルゲンになっているのでしょう。今までに10種類の抗原が知られており、その内8種の猫アレルゲンは、WHO/IUISアレルゲン命名法により登録されています。中でもFel d 1と呼ばれるSecretoglobin Familyのひとつが猫アレルギーの主要な原因であると考えられています。ネコ科以外の哺乳類では主要抗原がLipocalin であることを考えると極めて特異なことです。Fel d 1は現在では、唾液腺からではなく主に皮脂腺から分泌されると考えられていて、グルーミングによって被毛に付着し、環境中に飛散します。産生されるFel d 1の量は、オス猫で多く、メス猫や去勢オスではそれよりも少ないとされています。長毛種と短毛腫で産生量に差はありません。また、体を洗うことで皮膚や被毛上のFel d1を一時的に減らすことはできますが、2日後には元のレベルに回復し、ほとんど意味を成しません。また環境中のFel d 1のレベルは24時間以内に回復するといわれています。


 Fel d 1を遺伝子工学によって人工的に作成することが可能となり、この分子アレルゲンを使用して、猫アレルギーの診断や治療に関する研究が盛んに行われるようになりました。以下のシェーマは、Fel d 1の結晶学的な構造です。

 猫が飼育されていてFel d 1に強く暴露されるような環境下で幼児期を過ごした場合、猫アレルギーになるリスクが減少するという報告があるかと思えば、その反対の報告もあり、猫アレルギーを解決できるような研究や調査はまだまだこれからのように思われます。(出典:Bonnet et al.Allergy Asthma Clin Immunol (2018) An update on molecular cat allergens. )

 一方、近年のアレルギー疾患の有病率の増加は顕著で、その原因として環境因子の影響が大きいとされています。アレルギー疾患の病態機序の研究の進歩により、Th1/Th2免疫系バランスのTh2免疫系への偏移によるアレルギー疾患発症説が広く支持されており、近年の衛生状態の向上による各種感染性疾患の減少によるTh1免疫系の低下がTh2免疫系によるアレルギー疾患の増加を来たしたという「衛生仮説」(hygiene hypothesis)に基づく多くの疫学研究が報告されています。2000年には「9-24ヶ月の乳幼児期における屋内endotoxin暴露がTh1 immunityを活性化することでアレルゲンによる感作に対して防御的である」ことが示されました(Lancet 2000)。これを受けて、ドイツなどでは乳幼児の「牛舎浴」が行われたりしています。

 いい加減なことを書くわけにはいきませんが、猫が飼育されている家庭は、潔癖症の人から見れば清潔とは言い難いかもしれません。しかし、衛生状態が良すぎてアレルギー疾患が増えるのであれば、感染症のリスクさえコントロールされていれば、猫が飼育されている環境は、アレルゲンの感作に対して防御的で、ちょうど良い位なのかもしれません。誰もが猫を抱きしめたいと思えば、安心して抱きしめることができるような、そんな日が早く来るといいですね。
(文責 よしうち)

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