2018年10月01日 呼吸器猫学

「猫の鼻咽頭ポリープ」の話

「猫の鼻咽頭ポリープ」の話

この夏、飛行機に乗ったり、山に登ったり、海に潜ったりする機会のあった方もおられることでしょう。そんな時に鼓膜がツーンとして少し痛いように感じることがあります。鼓膜を挟んで、外側の大気圧と内側の中耳の鼓室の空気圧に差ができて、鼓膜が圧迫されているのです。

そんな場合には、口を大きく開けてあくびをするような感じで顎を動かすと、いわゆる「耳抜き」ができてスッキリします。その時、普段は閉じている耳管の咽頭側の開口部が開いて気圧が調節されるのです。つまり、耳管は鼓室(中耳腔)と咽頭腔とを結ぶ通気管の役割をしています。


猫では、この耳管にポリープができることがあり、鼻咽頭ポリープと呼ばれています。鼻咽頭ポリープは非腫瘍性の腫瘤で、鼻咽頭あるいは外耳道、もしくはその両方に向かって増大していきます。この鼻咽頭ポリープを発症する猫のほとんどは若齢で、罹患した猫の平均年齢は13.6 カ月齢(3 カ月齢〜8 歳齢)と報告されています。鼻咽頭ポリープを持つ猫の集団とそうでない猫の集団を比較した研究はみられず、罹患猫の品種として短毛種、アビシニアン、ペルシャ、ヒマラヤン、シャム、メイン・クーン、レックスが報告されています。明らかな性差はなく、猫の鼻咽頭疾患53 例中、鼻咽頭ポリープは15 例(28%)で診断され、リンパ腫の26 例(49%)に次いで多くみられました。その原因としてカリシウイルスの感染が疑われていた時期もありましたが、現在ではウイルス感染の関与のないことが証明され、不明となっています。筆者は過誤腫のひとつである可能性を強く疑っています。

私たち臨床家にとって、猫の耳の奥、鼻の奥、口の奥というのは厄介で、麻酔なしにはほとんど観察することすらできません。中でもこの鼻咽頭ポリープは、ポリープが鼻咽頭と外耳道のどちらに向かって増大するかによって全く異なる症状を呈するため、症状からのアプローチという意味でも、悩ましい疾患と言えるでしょう。鼻咽頭ポリープを持つ猫は呼吸困難、異常呼吸音、鼻汁、嚥下障害、体重減少といった病歴を示し、重症例では呼吸困難、チアノーゼ、睡眠障害、失神を起こすことがあります。上気道感染症と診断されても治療にはほとんど反応しません。外耳道内へポリープが増大している猫では、頭を振る、耳を引っ掻く、斜頸、ときに平衡感覚の異常を示します。罹患動物の多くが来院するまでの症状継続期間が数カ月から数年にわたっていました。獣医師が本疾患を意識しなければ症状継続期間を延長させてしまいます。鼻咽頭ポリープの猫ではいびき様呼吸音、大きないびき、漿液性から膿性の鼻汁が認められることが多く、くしゃみは稀です。食欲不振がみられる子猫では、ぼんやりしていることが多く、臨床徴候はポリープが大きくなるにつれて顕著になり、呼吸や嚥下に重大な影響を与えます。一方で、ポリープが鼻咽頭の絶妙な部位に位置しているためにほとんど症状を示さないこともあり、不妊・去勢手術などの麻酔時に気管チューブを挿入する際、偶発的に発見されることもあります。

(鼻咽頭ポリープを攝子にて把持)

(CO2レーザーメスにて切除後)

稀な疾患といわれていますが、実は、誰にも気づかれずに潜んでいる鼻咽頭ポリープが、思いのほかたくさん存在するのかもしれません。
(文責 よしうち)

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