2018年12月01日 皮膚科

「皮膚常在菌」の話

「皮膚常在菌」の話

人の皮膚科専門医でミルディス皮フ科勤務医の出来尾格先生の
『化粧水やめたら美肌菌がふえた!: こんなにも素肌美人になれる最新スキンケア』

という本が反響を呼び、スキンケアに対する考え方が少しずつ変わってきているのかもしれません。
その内容とは、
「顔が乾燥する原因は?」
→ 顔は間違ったスキンケアが原因になっているケースが多い
「すね・背中が乾燥する原因は?」
→ すねや背中は元々皮膚常在菌(=肌にすんでいる微生物)が少ないので乾燥しやすい

〇うるおい肌の強い味方“善玉菌”の育て方〇
皮膚常在菌はおもに4種類
・黄色ブドウ球菌(悪玉菌) → アトピー性皮膚炎の悪化やトビヒの原因になる  
・マラセチア酵母(日和見菌) → アトピー性皮膚炎の悪化の原因になる
・アクネ菌(日和見菌) → ニキビの原因になる
・表皮ブドウ球菌(善玉菌) → 皮脂を食べてグリセリンなどの “うるおい成分”を分泌。
顔も体もお肌の善玉菌を育てることでカサつき・かゆみの予防に!

◇お肌の善玉菌を育てる入浴法―ポイントは順番◇
 ①シャンプー・リンス、②顔・体を洗う、③湯船につかる
なぜ①→②?
  → 体についたシャンプー・リンスに含まれる界面活性剤を洗い流す
なぜ②→③?
  → 皮膚がふやけた状態で洗うと善玉菌や角質を傷つけてしまう
洗う時は…
  ・タオルやスポンジを使わず手を使って洗う(ゴシゴシこすらない)
  ・乾燥部分はせっけんを使わない
湯船につかる時は…
  ・お湯の温度は 37〜39℃
  ・つかっている時間は 15分以内
といった具合です。

この、皮膚常在菌は、犬や猫でも同じなのでしょうか。
犬や猫の皮膚には、Micrococcus属、Bacillus属、Streptococcus属、Staphylococcus属などをはじめとした様々な菌種が生息し、相互に関わり合うことで皮膚常在細菌叢が形作られています。あえて上記の人の善玉悪玉表記のように記載してみました。

犬や猫の皮膚常在菌はおもに4種類
・黄色ブドウ球菌(悪玉菌) → 種々の感染性皮膚炎の原因になる  
・マラセチア酵母(日和見菌) → アトピーを悪化させ、マラセチア皮膚炎の原因になる
・SIG*ブドウ球菌(日和見菌) → 膿皮症の原因になる *Staphylococcus intermedius group
・CN**ブドウ球菌(善玉菌) → ほとんど悪さをしない。**Coagulase-Negative

この中でも近年特に問題となっているのが、SIGブドウ球菌です。犬や猫での検出率を比較すると、善玉菌と見られるCNブドウ球菌(7株)に対してSIGブドウ球菌(16株)といった報告が見られ、その大半がStaphylococcus pseudintermedius というブドウ球菌であることが分かっています。犬や猫では日和見菌優位な状況が元々あるのかもしれません。

そこで考えなければならないのが、人ではもともと清潔にしすぎることで善玉菌も取り除きすぎてカサカサお肌になることが問題でした。したがって善玉菌を育てるよう洗いすぎに注意しましょうということになります。

けれども、特に犬では、洗わなさ過ぎても日和見菌が増えて膿皮症になりますし、洗い過ぎてもカサカサお肌になり、痒みに悩まされることになります。細菌の産生するグリセリンなどのうるおい成分をちょうど良い位に保つよう、絶妙な間隔でシャンプーすることが必要となってきます。

一方、健康な猫では、皮脂の分泌が犬よりずいぶん少ないため、室内環境で生活しているような場合には、ほとんどシャンプーをしないくらいがちょうど良いのかもしれません。

いずれにしても、一人ひとり皮膚の常在細菌叢が異なることや、皮脂の分泌能にも差があることから、皮膚のコンディションを見極めてシャンプーの間隔を決めていくことが大切です。また、鱗屑(りんせつ)=フケが見られるような場合には、積極的にうるおい成分の補給を考えてあげてください。

ピペット入りのエッセンシャルオイルを背中に滴下するだけで、全身の皮膚被毛のコンディションを整えられるようなタイプのものも非常に有効です。

ここまで、スキンケアのお話を書いてきましたが、一歩踏み込んで皮膚病、それも特に膿皮症というお話になると、日和見菌のStaphylococcus pseudintermedius は悩ましい問題を抱えています。

犬の膿皮症の大半がこのS. pseudintermedius によって引き起こされていることが分かっていますが、メチシリン耐性S. pseudintermedius(MRSP) が1999年に初めて報告されて以来、増加の一途をたどっているのです。メチシリン耐性ブドウ球菌は、それ以外の抗菌薬に対しても耐性を示す傾向つまり多剤耐性菌となる傾向があり、膿皮症に対する抗菌薬治療が一筋縄ではいかなくなってきているのです。

日常のスキンケアで皮膚のコンディションを整え、皮膚病にならないよう気を付けることが最良であることは、人も動物も同じですね。

来月の本コラムでは、人も動物も巻き込んで大問題化しつつある薬剤耐性菌のお話をする予定です。
(文責 よしうち)

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