2019年01月01日 皮膚科人と動物の関係学

「薬剤耐性」の話

「薬剤耐性」の話

政府広報オンラインでは、「薬剤耐性」に関する啓発が大きなページを割いて行われています。その一部をご紹介しましょう。

薬剤耐性(AMR)とは、抗菌薬(抗生剤)が効きにくくなる、または効かなくなることをいいます。耐性を得た細菌を「耐性菌」と呼び、1980年以降、従来の抗菌薬が効かない「耐性菌」が世界中で増えており、様々な「耐性菌」が確認されています。このため、感染症の予防や治療が困難になるケースが増えており、今後も抗菌薬の効かない感染症が増加することが予測されます。

耐性菌が増えると、これまでは感染、発症しても適切に治療すれば軽症で回復できた感染症も、治療が難しくなって重症化しやすくなり、さらには死亡に至る可能性が高まります。

特に、免疫力の弱い乳幼児や妊婦、高齢者、また、持病を持つ人は、感染症にかかると重症化しやすいため、耐性菌が広まり使用できる抗菌薬が減ると、命の危険が高まります。
薬剤耐性(AMR)の拡大防止は、私たちにとって非常に重要なことなのです。

薬剤耐性(AMR)の拡大を防ぐためには、抗菌薬を、必要な場合に、適切な量を、適切な期間、服用するようにしなければなりません。

耐性菌は細菌と抗菌薬の頻回接触で増加します。抗菌薬の偏った使用、長期間投与、感染炎症終息前の使用中止や炎症終息後の使用、殺菌できない低用量・低濃度投与、重症例への低効力抗菌薬投与、等が原因です。従来の低用量/低効力/短期間投与は,効果が不十分なばかりか殺菌できずにむしろ耐性化させ易いのです。

世界のどこか1か国で耐性菌による感染症が流行した場合、人や物の交流を通じて世界に拡大するおそれがあります。薬剤耐性(AMR)の拡大を防ぐには、国際的な取組が必要です。こうした状況を踏まえて、WHO(世界保健機関)は、

「薬剤耐性により、これまで以上に増加している細菌、寄生虫、ウイルスや真菌が引き起こす感染の効果的治療や予防が難しくなっている。薬剤耐性は、世界規模の公衆衛生にとって深刻化する脅威となっており、全ての政府機関や社会が行動を起こす必要がある。」
と提言しています。 
わが国でも平成28年(2016年)4月に取りまとめた「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン 2016-2020」に基づき、薬剤耐性対策に取り組んでいくこととしています。


耐性菌のことをお分かりいただいた上で、前号の皮膚常在菌の話を思い出してください。犬の膿皮症がSIGブドウ球菌(
Staphylococcus pseudintermedius)によって引き起こされること。そのS. pseudintermediusにメチシリン耐性S. pseudintermedius(MRSP)が増えていることをお話ししました。いままで一般的なセフェム系抗菌薬で簡単に治っていた膿皮症が、なかなか治らないという場面にも遭遇するようになりました。どの抗菌薬が効くのかを調べる感受性試験が必要になってきたのです。

一方、CNブドウ球菌(善玉菌)もSIGブドウ球菌(日和見菌)も同じブドウ球菌で、多くの耐性遺伝子が共有され,多剤耐性化の比率は善玉菌の方がむしろ高いことが分かっています。つまり、善玉菌はうるおい成分を産生し美肌に貢献する一方で、耐性遺伝子リザーバーとして日和見菌や悪玉菌の耐性化を手助けしている可能性があるのです。

さらに、以前は人でほとんど検出されることがなかったSIGブドウ球菌が、近年、人でしばしば検出されるようになってきたという報告があります。人の耐性菌が動物に。動物の耐性菌が人に。耐性遺伝子リザーバーの共有化が人と動物の間で成立している可能性を考えざるを得ないでしょう。そしてそれは、口腔内の細菌叢や、腸内細菌叢においてもある程度の可能性を覚悟しなければなりません。

人医療においても、動物医療においても、医療を提供する側は、耐性化を招くことのないような抗菌薬治療にフォーカスしていかねばなりませんし、医療を受ける側は、可能な限り抗菌薬を必要とするような状況にならないよう、常日頃からの健康管理やケアを心がけることが大切です。安心して人と動物が暮らせるように、抗菌薬の使用は最小限にとどめ、使用しなければならない状況では、必要にして十分な期間、十分な用量で使い切ることを心掛けていく必要があります。人の英知で獲得した折角の抗菌薬を、より有効に使い続けていくために、抗菌薬は万が一のための「伝家の宝刀」と考えておくことが肝要なのかもしれません。

(文責 よしうち)

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