2019年11月01日 神経科

「認知機能低下を評価する」の話

「認知機能低下を評価する」の話

自分の母親はまだまだ元気で、もうすぐ90歳を迎えます。この歳になっても新聞に川柳を投句し、愛用のシャープ製ワードプロセッサ「書院」ともども現役なのです。ところが先日、困った顔で「なんでやろ、なんでやろ」を繰り返します。突然フロッピーディスクに保存してあった投句先の宛名の印刷の仕方を思い出せなくなったようなのです。「この間、入院してからちょっとおつむの調子がおかしいねん。」と、ぼそり。印刷の仕方を教えて、「何回かやれば思い出すよ」と慰めたのでした。

 動物でもCognitive Dysfunction Syndrome=CDS(認知機能不全症候群)と呼ばれるいわゆる認知症は、人と同様に高齢動物にも認められ、定義として「脳の老化に関連し、脳の変化が認知レベルの低下、刺激に対する反応の低下、学習能力の低下、記憶能力の低下を認めるもの」とされています。

病態生理として、以下にあげたような多発性の神経的変化が起こります。
► 神経細胞の減少
► 脳室容積の増加
► 神経中毒性沈着物(リポフスチン、βアミロイド、ユビキチンなど)
► フリーラジカルの増加
► 脳血流量減少
► 神経伝達物質の減少
神経の傘下的損傷を与えると考えられるフリーラジカルの増加やβアミロイドの神経細胞への沈着量が認知機能と関連している事が報告されています。

臨床的特徴として、日本国内の研究においては日本犬系に多い事が報告されていますが、海外だとヨークシャテリアに多い事が報告されています。犬においては11-12歳の犬の約28%、15-16歳の犬の約68%が1つ以上の認知低下の兆候を示したとの報告があります。猫の場合も11-14歳の猫の約30%、15歳以上であれば約50%に、何らかの行動変化が起きている事が報告されています。
(出典:第35回動物臨床医学会(2014)入交眞巳「犬の認知機能不全症」)

 CDS(認知機能低下症候群)を診断する上で大切なのは、飼主の方々からの臨床症状です。CDSでよく認められる臨床症状(行動変化)は以下の6つのカテゴリーに分けられます。
1) 見当識障害=Disorientation
2) 相互反応の変化=Interaction changes
3) 睡眠サイクルの変化=Sleep/wake cycles
4) しつけの忘失=House soiling ,Learning and Memories
5) 活動性の変化=Activity changes
6) 不安傾向=Anxiety
これらの行動変化はそれぞれの頭文字をとって「DISHAA=ダイシャー」と呼ばれます。
この6つのカテゴリーに見られる変化を質問形式にしたCDS評価ツール(英語版)がPurina™から公開されています。(日本語訳:吉内龍策)


この評価ツールでは、該当する症状が8歳を超えてから現れたり進んだりした場合に、その程度に応じて、0〜3のスコアを記入してください。
(出典:Assessment was created by: Dr. Gary Landsberg, DVM, DACVB, DECAWBM, Vice President, Veterinary A airs CanCog Technologies; to aid in diagnosing Canine Cognitive Dysfunction Syndrome. Purina trademarks are owned by Société des Produits Nestlé S.A. Printed in USA. VET0938A-0517)

 そして、複数のカテゴリーで変化が見られたら、動物病院にご相談ください。動物病院では、それぞれの症状に応じて、行動学的な対処、環境の整備、栄養学的な対処、薬剤による対処など、少しでも早い対処によってCDSの進行を抑え、動物たちとの生活の質をより幸福に保つお手伝いをさせていただきます。

図:CDSの予防と対処(SAC No.187 Ayano IshiiD.V.Mより)

次回本コラムでは、それぞれの対処についてのお話をさせていただく予定です。
 
(文責 よしうち)

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