2020年11月01日 呼吸器猫学

「猫のちくのう」の話

「猫のちくのう」の話

私たちが「ちくのう」というと慢性副鼻腔炎のことですよね。「鼻づまりがずっと続く、鼻をかんでも奥に残っている感じがする…。ドロッとした黄緑色の鼻水が出る、それ、ちくのう症かもしれません。」というテレビCM、みたことのない人はいないでしょう。「ちくのう=蓄膿」とは、膿が溜ることを意味します。風邪をひくたびに副鼻腔炎を起こし、それが慢性化して常に副鼻腔に炎症が起きている状態のことを指します。この副鼻腔って何のこと?どこにあるのと疑問に思う方も多いのかもしれません。

 

鼻腔と連絡した頭蓋骨の空洞のことを副鼻腔と言います。上の図で着色された4対の空洞で、それぞれ前頭洞、篩骨洞、上顎洞、蝶形骨洞と呼ばれます。線毛を有する粘膜上皮で内張されていて、鼻腔との連絡により自然換気され、侵入した異物は線毛によって排出されます。粘膜上皮表面から水分が蒸発することで、すぐ真上に接している 眼窩 や頭蓋、脳へ至る血管などを冷却するCPUを冷却するファンのような働きや、外力による脳への衝撃の緩衝スペースとしての働きがあると考えられています。さらに、副鼻腔には、声を美しく共鳴させる働きがあるとも言われています。

 

この慢性副鼻腔炎、幼齢期にいわゆるネコ風邪にかかってしまい重症化したネコちゃんにも、少なからず認められるのです。いわゆるネコ風邪の症状が落ち着き、元気や食欲も戻り、やれやれと飼い主の方が安心した後も、くしゃみや鼻水が続き、俗にいう青洟(あおばな)をくしゃみの度に周りに飛び散らすようになっていきます。そのうちに治るかなと思いつつ年単位で無処置というケースも少なくありません。

 

上の図の着色部が猫の副鼻腔で、脳を取り囲んで存在するのが分かります。

 

治療は、人では鼻の洗浄、吸引をしたり、副鼻腔の洗浄を行ったり抗生剤(マクロライド系抗生剤など)を使用します。重症例では内視鏡による手術が推奨されています。

 

一方、猫ではなかなか鼻の洗浄等は難しく、手術法も確立されていません。マクロライド系抗生剤も長期投与となるとなかなか長続きしないというのが現状です。

 

ここ半年くらいの間に、「ちくのう持ち」のネコちゃんがふらつきや意識障害などの神経症状を呈して相次いで2例来院したのです。1頭はMRI検査まで実施しました。

 

人においても、(鼻性)頭蓋内合併症として、脳膿瘍、髄膜炎、海綿静脈洞血栓症などが副鼻腔炎の増悪により引き起こされることがあるとされています。

 

「ちくのう」と侮ることなかれ、治療が大変だからと諦めることなかれ。神経症状が出て、マクロライド系抗生剤を長期投与している前出のネコちゃんは、元気になって走り回っています。大変な状況になればできる投薬も、洟垂れ(はなたれ)だけでは力が入らず、なかなか続かないのはいたしかたのない事かもしれませんが、必要な時に充分量、充分期間の投与を実施するのは、抗生剤療法のキモなのです。

 

飼主の方に寄り添う動物医療と、飼主の方が楽な動物医療は、同じようでも違うのだと思い知らされた気がします。寄り添い励まし進めていかねばならない治療もあるのだと、改めて自分を鼓舞した症例なのでした。

 

(文責 よしうち)


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