2021年01月01日 泌尿器猫学

「慢性腎臓病の猫に補水サプリを与える」の話

「慢性腎臓病の猫に補水サプリを与える」の話

前回の本コラムでNutrient-enriched Water Supplements「ハイドラケア」のお話をしました。なかなかしっくりとくる日本語訳が見つかりませんでしたが、今回のコラムでは語弊を覚悟で意味合いや呼びやすさを重視して「補水サプリ」と呼ぶことにしようと思います。


 その補水サプリの実践編として「慢性腎臓病(CKD)の猫における水和の維持」というタイトルで、ハイドラケアの獣医師向け解説記事がリリースされています。今回のコラムでは、その内容をご紹介しましょう。


 CKDの猫における水和の維持

脱水は慢性腎臓病(CKD)の一般的な合併症で、食欲不振、無気力、虚弱、便秘、尿毒症発症のリスク増大につながります。そしてそれは、腎臓に悪影響を及ぼす病態生理学的反応を促進します。


脱水の危険性

体が脱水を検知すると、いくつかの生理学的メカニズムが働きます。慢性の無症状脱水はそのメカニズムの引き金となることで、最終的に腎臓に悪影響を及ぼす恐れがあります。

これらの病態生理学的影響には以下のような事柄が含まれます:

バソプレッシンのリリースは、集合管におけるアクアポリンチャンネルのさらなる発現を通じて水の再吸収を増加させるように働きます。これは、糸球体内高血圧および蛋白尿と全身性高血圧の潜在的な亢進を引き起こします。

・レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の活性化は、腎臓病を進行させる病態生理学的なもう一つの増悪要因です。血圧の調節、水分と電解質のバランス、全身血管抵抗を調節するRAASは、正常では保護的に作用しますが、CKDを持つ動物では上手く作用しません。

低潅流は既に線維化し損傷した血管構造を持つ腎臓における組織レベルでの低酸素を悪化させるかもしれません。

脱水に対する治療的な取り組みは、バソプレッシン分泌を減らし、RAASの活性を低下させ、潅流を最適化させることによって、腎臓のために有益なことです。


CKDをもつ猫に対する再水和戦略

以下の戦略は、CKDの猫の飼主の方が適切に彼らの猫を水和させておくのに役立ちます。

1. 水和について飼主の方の理解を深める

猫の脱水をモニタする方法を説明してください。それには、併発症や嘔吐、下痢を見つけることも含まれます。飼主の方に、彼らの猫への十分な水分補給や飲水を妨げる家庭内ストレスを取り除くように勧めてください。これらの兆候があれば迅速な治療が必要とされることを、彼らが理解しているか確認してください。高齢猫であればなおさらです。

2. 水分のバランスに対する取り組み

飼主の方にはドライフードやふやかしフードの代わりに缶詰フードと新鮮で飲みやすい水を彼らの猫に与えるよう勧めてください。真水を口からもしくは栄養チューブで補給することは、皮下に投与された電解質液による過剰なナトリウムの負荷を避けるために好ましいことです。

3. 便秘の評価と治療

CKDに関連した便秘の原因の多くは水分バランスの異常によるもので、水和は他の内科治療を開始する前に補正しなければなりません。カリウム欠乏もまた、確認されれば補正しなければなりません。その後、経口浸透圧性便軟化剤は便秘を管理するのに役立ちます。オオバコのような線維質を加えることも役に立つでしょう。

水和を維持することは、腎臓病の鍵となる治療目標です。腎臓病の動物の水和状態を慎重に評価することによって、獣医師は適切に治療を調整することができます。


過水和の危険性を知る

CKDの猫で最も一般的な水分バランスの問題が脱水である一方、過水和も懸念となり得ます。腎臓の病態が増悪した場合、体から水を取り除く能力が損なわれ、その結果、過水和がさらなるリスクとなります。

過度の水和はサードスペース形成のような明らかな臨床兆候の原因となり、腎臓実質レベルで有害な影響を及ぼします。

末期の腎臓病、急性腎臓損傷、尿管閉塞の合併は、正常な腎機能をもつ患者が行うような方法で水を排出することができないでしょう。同様に、慢性的な無症状脱水に慣れているCKDの猫は、突然の多量の輸液投与にうまく適応できないかもしれません。


覚えておいてほしいポイント

・脱水が懸念される猫では、食事を全て缶詰フードにするか、ドライフードとともに補水サプリを与えるようにすることが、水和を改善するための効果的戦略です。

・研究では、補水サプリを与えることで、プラスアルファの液体を飲むだけでなく、より高いレベルの水分摂取が維持されることが証明されました。

・過水和を避けつつ十分な水和を維持することは、CKDをもつ猫の鍵となる治療のゴールです。腎臓病の猫では、治療を適切に調節できるよう水和状態を慎重に評価しなければなりません。過剰輸液の解消が透析なしには困難であることから、輸液療法の実施には注意が必要です。

 

いかがでしょうか。慢性腎臓病の猫に輸液療法をしなければならなくなることは避けがたい事です。けれども、その輸液療法を最小限にとどめることができるよう、日常的に水和を保つよう工夫することは、残り少なくなった腎機能を可能な限り温存することにつながります。もしあなたの大切な猫が慢性腎臓病で、「ハイドラケア」を好んで飲んでくれるようなら、それはとてもラッキーな事にちがいありません。真水を口からもしくは栄養チューブで補給するといっても並や大抵のことではないのですから。それを喜んで自分から飲んでくれれば、願ったり叶ったりのサプリメントといえるでしょう。果たして、口の肥えた日本の猫がレバーフレーバーの液体をどの程度口にしてくれるのか。


「喜んで飲んでくれれば最高なんですけど・・・」と言いながら、試しにパウチ1袋をお渡しする日々が続くのかもしれません。


どうか多くのネコちゃんのお口に合いますように!

願ってやみません:^^)

 

(文責 よしうち)


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