2021年10月01日 循環器猫学

「血圧測定」の話

「血圧測定」の話

人の健康診断では、ルーチンな検査のひとつとして必ず血圧測定が行われます。とりわけ中年ともなれば、高血圧は諸悪の根源とばかりに、減塩・運動習慣・体重管理の3種の神器をもって生活指導を受けることになるのです。巷には高血圧の改善をうたった飲料やサプリメントがあふれ返っていて、テレビでCMを見ない日はありません。

 

この当たり前の検査が、動物病院ではなかなか難儀なのです。なにが難儀なのか、それをご理解いただくために、まず血圧の測定法についてお話しましょう。

 

自分のかかりつけの内科医さんは、いつも「聴診法」です。水銀血圧計を使う方法で、血管を圧迫する力を水銀を持ち上げる力に置き換えて測定します。カフを減圧していき、血液が心臓の拍動に合わせて流れ始めたときに発生する血管音=コロトコフ音を聴診器で確認します。コロトコフ音発生開始時のカフの圧力を収縮期血圧、コロトコフ音が消えたときのカフ圧を拡張期血圧としています。これには、水銀の代わりにばねの力を利用したアネロイド血圧計を用いることもできます。

 

「聴診法」の聴診器の代わりにカフに取り付けられたセンサーにより脈波を検知するのが「オシロメトリック法」です。脈波が急激に大きくなったときの圧力が収縮期血圧、変化がなくなるときの圧力が拡張期血圧となります。いわゆる自動血圧計はすべてこの方式で、上腕式、手首式、指式などが家庭用に普及しています。

 

人と異なり動物の場合は、個体差が大きく、静止ができず動くため、雑音が入り、測定結果がばらついて正確な値が測定できませんでした。そのため血圧測定は、もっぱら麻酔時の生体モニターとしての利用に留まっていました。それでも何とか診察時に測定したい場合には、超音波ドプラ―血流音計を聴診器の代わりに用い、アネロイド血圧計で測定するという方法が行われていましたが、この方法では収縮期血圧しか測定できず、また、測定できるのも比較的穏やかな性格の動物たちに限られていました。

 

近年、測定結果を演算処理し誤差を最小限にする機能を備えたオシロメトリック血圧測定装置が開発され、麻酔モニターだけでなく、診察室で血圧測定が行われるようになってきています。

 

そもそも人では、高血圧が心筋梗塞や心不全といった心疾患、動脈硬化による脳梗塞、糖尿病や腎不全などの深刻な病気のリスク増大につながることから、一人ひとりが自身の血圧を把握しておくことが重要とされています。

 

動物においても、慢性的に持続する血圧の上昇は組織障害を起こすことから問題となります。血圧測定によって全身性高血圧を検出し、治療を開始することでこの組織障害を予防することは人と同様に大変に重要です。全身性高血圧により特定の臓器に障害が起きることを、標的臓器障害と呼びます。以下の表は、その標的臓器と臨床所見です。

 

 

臓器/組織

標的臓器障害

臨床所見

腎臓

慢性腎不全の進行

血清クレアチニンの上昇

糸球体濾過率の低下

網膜症/脈絡膜症

急激な失明

滲出性網膜剥離

硝子体出血/前房出血など

脳症、脳卒中

中枢性の神経症状

心血管系

左室肥大

心不全

左室肥大

不整脈

心不全

収縮期雑音など

 

全身性高血圧により将来的に予測される標的臓器障害のリスク分類は以下の表の通りです。

 

リスク分類

収縮期圧

拡張期圧

将来的な標的臓器障害

150mmHg未満

95mmHg未満

最小

150-159mmHg

95-99mmHg

軽度

160-179mmHg

100-119mmHg

中等度

180mmHg以上

120mmHg以上

重度

 

 

動物たちの高血圧というのはなかなかぴんと来ないかもしれません。当センターでは、最新の血圧測定装置を導入していますので、最寄りのスタッフまでお気軽にお尋ねください。

 

(文責 よしうち)


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