2022年02月01日 循環器消化器猫学行動学

「〇〇は第二の△△」の話

「〇〇は第二の△△」の話

「習慣は第二の天性」という諺があります。「日常的に繰り返すことで身についた習慣は、生まれつきの性質とほとんど変わらなくなる。一度習慣となったものは、容易なことで変えられない。」という意味です。福沢諭吉は『家庭習慣の教えを論ず』の中で「就中幼少の時、見習い聞き覚えて習慣となりたることは、深く染み込めて容易に矯め直しの出来ぬものなり。さればこそ習慣は第二の天性を成すといい、幼稚の性質は百歳までともいう程のことにて、真に人の賢不肖は、父母家庭の教育次第なりというも可なり。」と述べています。

 

諺の意味や諭吉の考えはさておき、「〇〇は第二の△△」という言い回しは、体の臓器や組織の機能を説明する場面で、伝家の宝刀よろしく振り下ろされる、取って置きのフレーズとしてよく用いられます。今月のコラムではその代表例を3つご紹介したいと思います。

 

その筆頭は、「ふくらはぎは第二の心臓」です。

血液を全身に循環させるためのポンプが心臓だということは、誰もが知っているお話。この心臓のはたらきを「心ポンプ作用」といいます。心臓だけでなく骨格筋も収縮するときに、筋肉の間を流れる静脈を圧迫し、心臓まで血液を押し戻しているのです。この筋肉によるポンプのはたらきを「筋ポンプ作用」といいます。下肢は心臓から最も遠いうえに、重力に逆う方向に血液を送り返さなければなりません。心臓の働きだけでは負担が大きく、ふくらはぎの筋肉が収縮と弛緩を繰り返すことによって血液が心臓に戻るのをサポートしているのです。「第二の心臓」とは、心ポンプ作用をふくらはぎの筋ポンプ作用が補うことで、全身の良好な循環が保たれていることを意味しています。

 


2番目は「腸は第二の脳」というフレーズです。

大脳皮質にはおよそ150億の神経細胞があると言われています。一方、腸の神経細胞の数はおよそ1億。この数は、体の臓器の中で、脳に次いで2番目の多さとなっています。さらに、腸は脳と約2000本の神経線維でつながっていて、緊密に連携しています。腸の不調は脳に反映され、脳に受けたストレスは腸に反映されます(腸脳相関)。このネットワークを「腸脳相関」といいます。

腸管には、アウエルバッハ神経叢とマイスナー神経叢の2つの神経叢が存在します。腸管は、その大部分が平滑筋という筋肉でできていて、この筋の間に多数の神経細胞が集まって形成されているのがアウエルバッハ神経叢で、主に、腸の蠕動運動を調整しています。一方、マイスナー神経叢は、筋層の内側にある粘膜下層に形成されていて、粘膜の機能やホルモンの分泌に関与しています。この2つの神経叢は、それぞれ副交感神経とつながっていて、脳の視床下部からの指令を受けています。一方、独自の指示系統(腸管神経系)も存在するため、脳からの指令がなくても、腸を動かすことができます。また、腸管の2つの神経叢は単独でも機能しますが、相互に作用し合ってもいます。この腸管神経系の構造は、脳の神経ネットワークに似ています。こうしたことから、「腸は第二の脳」と呼ばれるようになりました。

 


3番目は「筋肉は第二の肝臓」というフレーズです。

肝臓にはブドウ糖をグリコーゲンに合成して、蓄積する働きがありますが、グリコーゲンは筋肉にも蓄積されます。そして、血糖値が下がったときには、肝臓でも筋肉でもグリコーゲンがブドウ糖に分解されて血液中に放出されます。また、肝臓は血液中のアンモニアを取り込んで処理していますが、筋肉もアンモニアを取り込んで処理しています。実験的な正常時のアンモニアの取り込み率は、肝臓が60%、筋肉が27%で、筋肉には予想以上のアンモニアの処理能力があることが判明しています。筋肉の量が多ければ、肝機能が低下しても筋肉がカバーしてくれるということなのです。肝機能が低下したときには、肝臓の回復のために運動をしないで休養することがすすめられますが、筋肉が肝臓の一部を肩代わりしていますので、寝てばかりいるよりも、筋肉を減らさないための運動を少しはしたほうがよいことがわかります。このように筋肉は肝臓の働きの一部を担っていることから、「筋肉は第二の肝臓」とも言われているのです。

 

「第二の〇〇」の大切さ、お分かりいただけたでしょうか。

それでは、最初にご紹介した諺の話に戻りましょう。

「習慣は第二の天性」という言葉は、人に限った話ではないのです。むしろ動物たちにとって、生涯を通じての幸福に関わる最重要課題といっても過言ではありません。こいぬ・こねこ期にいかに多くの人や動物と関わって良好な社会化ができるかは、その後の20年近くを多くの人たちに愛され、楽しく暮らせるかどうかに直結します。こいぬ・こねこ期に動物病院でご褒美をもらい、多くのスタッフに声をかけられ、病院を楽しいところだと理解することは、その後に病気やケガに見舞われた時に訪れる場所が、安心できるところだと知っておくことに他なりません。

 

当センターの目標のひとつは、「動物たちに優しいストレスフリーな環境と診療」です。

動物たちに「診察室は第二のリビングルーム」と思ってもらえるように、努力を積み重ねていきたいと思います。

 

今年前半には「こねこウェルネス教室」を開講予定です。現在の完全室内飼育が推奨される状況下では、こねこ期の社会化が大きな課題となっています。その解決策の一つとしてより良いご提案ができればと考えています。乞うご期待ください。

 

(文責 吉内)


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