2022年04月01日 猫学人と動物の関係学

「猫のくすりの与え方」の話

「猫のくすりの与え方」の話

先月のコラムでは「猫の食事の与え方」のお話をしました。それに引き続き、今月は「猫のくすりの与え方」についてお話したいと思います。

 

人の医療では多くの場合、患者さん=医師の説明を聞く人ですから、お薬についても医師が「ちゃんと飲んでいますか?」と質問するといった「服薬コンプライアンス」が重視されてきました。それに対して、患者さんのあまり薬は飲みたくないとか、きちんと飲めていないといった様々な事情を医師と患者さんで話し合い、そう思うのはなぜかという原因を考え、最善の方法を探っていくといった、よりよい医療のために患者さんが積極的に参加する「服薬アドヒアランス」が重視されるようになり、服薬についての従順さより、どのくらいその必要性を納得しているかに焦点が移ってきています。

 

そもそも私たちの動物医療では、動物たち、とりわけ用心深い猫たちが、服薬の必要性を納得するはずもなく、内服による治療が上手く行くかどうかは一重に飼主の方々の行動にかかっているのです。

 

さらに言えば、飼主の方々の「投薬コンプライアンス」を考慮するというレベルで獣医師が薬を処方すれば、必要な薬が愛猫たちの胃袋に届く確率は決して高いものではなくなってしまうことでしょう。

 

アニマルプラネットの人気番組「猫ヘルパー」で一躍脚光を浴びたジャクソン・ギャラクシーさんは、その著書で愛猫ベニーについて以下のような記述をしています。

 

「僕たちだって1日に2度もベニーをこんな拷問みたいな目に合わせたくない。こんな風に無造作に処方される薬がどんな苦しみを生むか、飼い主と動物双方の信頼関係をいかに壊しているか、獣医たちはわかっているのだろうか」

「治療と言う名の拷問から解放してやるんだ」

 

獣医師として大変に残念な記述ですし、「その通り!」と喝采を送りたくなる愛猫家の方々が決して少なくないことは想像に難くありません。

 

実際に、朝日新聞系の「sippo」が20208月に実施した読者アンケートでは、500人余りの回答から以下のような結果が公表されています。

 


 

人の医療でさえ「服薬アドヒアランス」に重きを置くようになっているのですから、薬を飲ませられるということをポジティブに捉えようのない猫たちの内服治療には、飼主の方々の強力な「投薬アドヒアランス」と獣医師のきめ細かいサポートが必要不可欠です。

 

剤形に応じた基本的な飲ませ方は様々なメディアで紹介されています。


         (通販誌ペピイより)

 

投薬補助剤としてピルポケット(現在国内在庫なし)や投薬用ちゅ〜る、メディボールなど、様々なものが市販され、錠剤を包んだり、粉薬を練りこんだりして猫たちの嫌気を少しでも少なくしようという作戦もあります。また、個々の猫たちの好みに応じて、マグロの刺身のスライスにくるむとか、フリーズドライささみの皮でくるむなど、好物でごまかす作戦もあります。

 

いずれにしても、猫たちの頭を保定し、口を開けてこその投薬ですから、日頃からの猫たちとのスキンシップが重要になります。特に子猫期に猫を迎えたのなら好機到来と考えて、好きなもので投薬の練習をしておくことをおすすめします。

 

ベニーが受け入れてくれなかった投薬ですが、子猫期からの練習があれば難なくこなせたのかもしれません。

 

子猫期に練習できなかった場合でも、同様の練習を無理強いせずに少しずつ行うことは可能かもしれません。そして投薬が必要になった場合には、気負わず、自然体で投薬に挑戦してみましょう。その場合の注意事項を挙げておきます。

 ・一番好きなものには混ぜない

 ・投薬はいつもくつろいでいる場所とは違う場所で

 ・投薬の際には服を着替える

大好きなものを1つは残してあげないといけませんし、安心できる場所がなくなるのも辛い事です。いつもの服装に戻れば安心できますよね。

 

投薬がストレスであることは間違いありませんが、それを引きずらないようにすることが重要です。そして最も大切なことは、飲ませられないときに決して無理をしないということです。治療のための次善の作戦を獣医さんと相談すればよいのです。

 

剤形を変更する、投与経路を変更する(注射など)などして、薬剤による治療を続けることができるかもしれませんし、病態によっては食事療法や経過観察で軽快することが望めるかもしれません。反対に入院することで、確実に投薬や点眼が出来たり、食事療法ができることもあります。

 

ジャクソン・ギャラクシーさんのように治療を投げ出すことも、選択肢の一つかもしれませんが、心を砕くことのできる獣医師として、とことん話し合い、最善の方法を検討し、少しでも猫たちのQOLの向上につなげていくことが本当のインフォームドコンセントであり、使命だと考えています。

 

猫のくすりの飲ませ方の神髄とは、決して無理をしないこと。

「猫には猫の都合があるのです」と、この部分ではジャクソン・ギャラクシーさんと意見が一致しているのかもしれません^^

(文責 吉内)

 


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