呼吸器

「咳(せき)」の話

「咳(せき)」の話

   今日では、犬や猫たちを一つ屋根の下で暮らす「家族の一員」として迎える人が増えています。彼らと共に暮らすことで心の潤いや安らぎが得られ、また疎外感や孤独感から開放され、さらに動物を世話することで生きがいや責任感が生まれます。つまり、共に暮らすことによって、人も動物もより健康で幸福な生活をおくれるということなのです。

   そこで大切になってくるのが、動物たちを理解するということです。理解することで互いに我慢しあうようなことを極力少なくすることができます。食事についてもそうですし、住環境や行動、かかりやすい病気や人と動物に共通の感染症など、言葉を話せない、そして、ヒトとは異なる動物種の家族だからこそ、知っておかなければならないことも多いでしょう。
   今回はその第2回目として、動物の「咳(せき)」について考えてみましょう。あなたは、犬の咳を聞いたことがありますか? 猫の咳は? 犬でも猫でもくしゃみは人とよく似ていて「くしゅん」というあれですよね。ところが咳はそれぞれに個性があり、初めてそれを聞いたときの飼主の方はすぐには咳と分からないことも珍しくはありません。犬の場合はのどに何か引っかかったような感じで「カッ、カッ、カッ」と大きく口を開けて苦しそうにします。猫の場合は「ヒーッ、ヒーッ、ヒーッ」としぼり出すような感じです。いずれもそれが犬と猫の咳なのです。

   咳には様々な原因があります。犬ではジステンパーやケンネルコフなどの感染症、気管虚脱や気管支炎、肺炎、フィラリア症、僧坊弁逆流症のような心不全などが主な原因となります。猫では伝染性鼻気管炎などの感染症、気管支炎や肺炎、うっ血性心不全などが挙げられます。いずれの疾患も原因治療が大切なことは言うまでもありませんが、室温や湿度、空気の汚れなどの生活環境の気道刺激性が高いほど、咳の症状が悪化することは共通しています。

   これらの疾患の中で特に環境とのかかわりが深いものに、いわゆる「猫の喘息」があります。喘息とは感染症や心不全、腫瘍などの他の原因の除外された慢性気管支炎を指し、気管支狭窄や慢性の咳を引き起こします。その原因は、有害刺激に対する免疫の感受性の変化に基づく一種の過敏症といえます。この過敏症はアドレナリン作用-コリン作用不均衡や粘液産生異常を含む気管気管支樹におけるさまざまな構造的、化学的変化によって起こります。ちょっと難しくなってしまいましたが、釈然としない原因によって気管支が敏感に反応するようになり、過剰な粘液分泌・気道浮腫・細胞浸潤による気道狭窄そして気道平滑筋収縮によって気流が制限され、結果として咳・喘鳴および元気消失といった症状が出てくるということなのです。

   この「猫の喘息」は決して珍しい病気ではなく、100頭に1頭くらいの割合で発生し、中でもシャム猫での発生率は他の猫の5倍に達すると報告されています。症状の軽い初期には、忘れた頃に「ヒーッ、ヒーッ」と咳をするくらいで、見過ごされることが多く、放置しがちな病気ですが、この初期に空気清浄機を導入してもらったり、家族の方の喫煙を制限してもらったりした症例では、そのまま症状がなくなり、事なきを得る場合も少なくありません。重症例においても、刺激の原因除去が治療の最優先課題であることにかわりはありませんが、最近では人と同様、プロピオン酸フルチカゾン吸入剤による長期療法が、気管気管支樹への炎症性細胞浸潤を低減するために利用可能となっています。

(文責:よしうち)


大阪市の南大阪動物医療センター

住所
大阪府大阪市平野区長吉長原3-5-7
営業時間
午前:9:00 〜12:00
午後:13:00〜15:00(水・土を除く)
午後:16:00〜19:00(水・土を除く)
  • ※祝祭日はその曜日に準じます。
  • ※年中無休です。
  • ※お電話、もしくは受付へ直接ご予約ください。
  • ※ご希望の日と時間帯、獣医師を指定して頂くことができます。
  • ※土・日・祝日に限り、予約料550円(税込)が別途必要となります。
  • ※12/31〜1/3につきましては、12/30までに事前の予約確認が必要となります。
定休日
年中無休
最寄駅
大阪メトロ谷町線出戸駅もしくは長原駅
・・・エントリー・・・
「ワクチンの進化は止まらない」の話
「ネコの涙の量は10秒で測る」の話
「ネコの尿比重はビーズに教えてもらう」慢性腎臓病の話
「ネコの痛みはAIに教えてもらう」の話
「イヌの不安は包帯に治してもらう」の話
・・・カテゴリー・・・
エキゾチック
ヘルニア
人と動物の関係学
内分泌
呼吸器
形成外科
循環器
感染症
整形外科
栄養学
歯科
泌尿器
消化器
猫学
皮膚科
眼科
社会事象
神経科
繁殖学
腫瘍学
行動学
診断学
遺伝
・・・アーカイブ・・・
2024年のブログ
2023年のブログ
2022年のブログ
2021年のブログ
2020年のブログ
2019年のブログ
2018年のブログ
2017年のブログ
2016年のブログ
2015年のブログ
2014年のブログ
2013年のブログ
2012年のブログ
2011年のブログ
2010年のブログ
2009年のブログ
2008年のブログ
2007年のブログ
2006年のブログ
2005年のブログ
2004年のブログ
2003年のブログ
2002年のブログ
2001年のブログ
2000年のブログ

院長コラム

VetzPetzClinicReport
Doctor'sインタビュー

・・・サイトメニュー・・・
HOME
診療案内・アクセス
施設案内
スタッフ紹介
よくある質問
協力病院
ドッグサービス
キャットフレンドリー
院長インタビュー
院長コラム
スタッフブログ
お問い合わせ
動物を飼う注意点
去勢・避妊について
ストレスについて
採用情報
新着情報
・・・手術について・・・
負担の少ない手術
手術の流れ
・・・犬の手術・・・
膝蓋骨脱臼、骨折
避妊、去勢手術
会陰ヘルニア
リハビリ
・・・猫の病気・・・
目(眼)の病気
口の病気
耳の病気
鼻の病気
呼吸器系の病気
消化器系の病気
皮膚の病気
癌、腫瘍
ヘルニア

・・・診療時間・・・

診療時間
9:00〜
12:00
13:00〜
15:00
16:00〜
19:00
  • ※祝祭日はその曜日に準じます。
  • ※年中無休です。
  • ※お電話、もしくは受付へ直接ご予約ください。
  • ※ご希望の日と時間帯、獣医師を指定して頂くことができます。
  • ※土・日・祝日に限り、予約料550円(税込)が別途必要となります。
  • ※12/31〜1/3につきましては、12/30までに事前の予約確認が必要となります。

・・・所在地・・・

〒547-0016
大阪府大阪市平野区長吉長原3-5-7
tel: 06-6708-4111
大阪メトロ谷町線出戸駅もしくは長原駅より徒歩8分