2006年12月01日 呼吸器

「ネコのかぜ」の話

「ネコのかぜ」の話

  今日では、犬や猫たちを一つ屋根の下で暮らす「家族の一員」として迎える人が増えています。彼らと共に暮らすことで心の潤いや安らぎが得られ、また疎外感や孤独感から開放され、さらに動物を世話することで生きがいや責任感が生まれます。つまり、共に暮らすことによって、人も動物もより健康で幸福な生活をおくれるということなのです。

  そこで大切になってくるのが、動物たちを理解するということです。理解することで互いに我慢しあうようなことを極力少なくすることができます。食事についてもそうですし、住環境や行動、かかりやすい病気や人と動物に共通の感染症など、言葉を話せない、そして、ヒトとは異なる動物種の家族だからこそ、知っておかなければならないことも多いでしょう。
  今回はその第5回目として、いわゆる「ネコのかぜ」について考えてみましょう。師走を迎え何かと気ぜわしいこの時期、空気も乾燥し無理をしすぎるとかぜを引いてしまいます。このかぜというのはいったい何者なのでしょう。人の医学ではかぜの95%が何らかのウイルス感染によるものといわれ、約200種類のウイルスが風邪の原因として確認されています。

  一方、動物たちはどうなのでしょうか。イヌではアデノウイルスやパラインフルエンザウイルス、ジステンパーウイルスなどがかぜのような症状(上気道炎)を起こすウイルスとして知られています。ネコでは、ヘルペスウイルス、カリシウイルス、クラミディアの3つでかぜ症状の原因の75%を占めると言われています。
  特にネコでは、多頭飼育の環境や野外へ自由に出ることのできる飼い方など、いわゆる「ネコかぜ」が蔓延する状況が多く見受けられ、冬季にはヒトのインフルエンザなみの脅威となっています。

  これら3つの病気にはワクチンによる予防が最も効果的ですが、ことはそう単純ではありません。なかでもヘルペスウイルスによるネコ伝染性鼻気管炎(FVR)は、厄介な問題を抱えています。それはヘルペスウイルスの持つ特性に基づくものです。ネコのヘルペスウイルスは気道粘膜に親和性を持ち、くしゃみや鼻水、涙目や目ヤニ、咳の症状を起こしますが、一方神経親和性をも併せ持っているため、免疫が立ち上がってきてかぜ症状が治まってくる際に、体内のヘルペスウイルスはすべて駆逐されるのですが、免疫が作用することができない唯一の場所である神経組織(多くは咽頭神経根)に逃げ込んでしまいます。免疫が十分に強いうちは良いのですが、体力を奪われるようなこと、たとえば妊娠や出産、授乳などで大きな消耗があると免疫機能が落ち込み、神経組織からヘルペスウイルスが抜け出して、再びかぜ症状を起こしてしまいます。このようなネコをキャリアーと呼び、新生児のネコかぜの大きな原因となります。このように厄介なキャリアーにさせないためには、初感染に先んじてのワクチン接種が必須となります。ワクチン接種によって免疫されたネコにはたとえ感染が成立しても神経節に逃げ込まれるスキはありません。

  また、カリシウイルスには多くの型(血清型、セロタイプ)があることが知られていて、ヒトのインフルエンザのように、それぞれの型に応じたワクチンが必要です。残念ながら現在、ワクチンとして利用可能なものは3つの型にとどまっています。
  このような理由で、ワクチン接種をし、細心の注意を払っているつもりでもネコのかぜを完全に防ぐのはかなり難しいことなのですが、症状はうんと軽くてすむはずです。

  残念ながら発症してしまった場合には、適切な治療を受けるのが大切なことは言うまでもありませんが、家庭での手厚い看護や環境も非常に重要です。加湿器で空気の乾燥を防ぎ、室温を適切に保ち、空気清浄機で空気をきれいにして気道刺激性を低減することは、鼻やのどの乾燥を防ぎ、咳のきっかけを減らし、病気の治りを早めます。ネコは気道が乾燥しきって嗅覚がなくなると物を食べることができなくなります。においのない食べ物は存在しないという本能に基づく拒食ですから、嗅覚を失わせないためにも環境はしっかりと整えてあげましょう。

(文責:よしうち)

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