「雷恐怖症はあの手この手で乗り切ろう」の話

「雷恐怖症はあの手この手で乗り切ろう」の話

先日、沖縄・奄美地方が梅雨入りしました。あと2、3週間もすれば本州もすっぽり梅雨空に覆われることになるでしょう。

大雨と言えば積乱雲、積乱雲といえば雷ということで、雷には雲放電と対地放電という二種類がありますが、気象庁の雷検知データによると、どちらも6月から8月に発生頻度が高くなっています。対地放電は地表に向けて放電される「落雷」で、人的・物的被害の可能性があります。けれども雲放電であろうと対地放電であろうと、英語で「Astraphobia」(アストラフォビア)と呼ばれる「雷恐怖症」の人達にとって、雷は平穏な生活を脅かす不安と恐怖の種に違いありません。

この雷恐怖症は人だけに限ったものではありません。犬の15〜30%が雷恐怖症を持っているという推定があります。その真偽は定かではありませんが、経験的には、遠くで雷鳴が聞こえてきた頃には愛犬の落ち着きがなくなり、近くに落雷でもあろうことなら、どこかに隠れようと悲愴な状況になり、テレビを押し倒して破壊されたこともあると、シベリアンハスキーの飼い主の方に相談されたこともあるくらい日常的な問題と思います。この飼い主の方にとっては、雷恐怖症の愛犬の行動の方が、恐怖だったことでしょう。

人では、雷雲に身をさらし最終的には耐性をつけるような方法や、認知行動療法が雷恐怖症の治療によく用いられるようで、恐怖症患者は雷雲が過ぎ去るまでの間、取り乱さないために何らかの言葉を繰り返し口に出すよう指導されることが多いのだそうです。

一方犬では、雷鳴のCDを用いて耐性をつけるような行動療法などが紹介されていますが、なかなか多くの時間を行動治療に費やすのは難しいようです。そこで次善の策として、ボディーラップやサプリメントということになります。

   

ボディーラップやサンダーシャツについては2023年11月の本コラム

を参照ください。

抗不安作用のあるサプリメントとして犬の雷恐怖症に用いられるものにジルケーン®とアダプティル®があります。

ジルケーン®の主成分=ミルク由来のα-カソゼピンがGABA受容体のベンゾジアゼピン結合部位に結合し、抗不安薬のような活性を示します。

 

通常は花火大会や引っ越しなどのイベントの数日前から投与をはじめる必要がありますが、雷のように予測できない環境変化に対しては、通常の倍量近くを与えれば30分ほどで抗不安作用が現れると言われています。(通常=15mg/kg、頓服=25mg/kg以上)

アダプティル®の主成分=Dog appeasing pheromone(犬をなだめるフェロモン) (DAP)は、アパシンとも呼ばれ、泌乳中の雌犬の乳腺間溝にある皮脂腺から放出される脂肪酸のエステルの混合物で、他のフェロモン同様、鋤鼻器官(ジェイコブソン器官)によって認識され、成犬と子犬の両方に宥和効果があり、音過敏症や騒音(花火や雷など)への恐怖行動の抑制に非常に効果的であることがわかっています。

アダプティル®はフェロモン製剤ですので、嗅覚器のような鋤鼻器官で嗅ぐことで効果を示します。製剤としては、拡散機、スプレー、カラーの3つが用意されています。雷が予想されるような場合に拡散機をコンセントにさしておく、寝床にスプレーしておく、カラーを装着しておくだけで準備完了です。いずれか使用しやすい製剤を選べばよいでしょう

 

ボディーラップか、ミルクプロテインか、フェロモンか。

雷鳴は本能的に恐怖を感じてしまうもの。

その恐怖心を家族の行動が助長することもあれば、和らげることもできるのです。

稲光がして雷鳴が轟いても、愛犬の前では何食わぬ顔、平気の平左で過ごすのが、親の務めかもしれません。

(文責 吉内)


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