猫学

「猫のマタタビ反応」の話

「猫のマタタビ反応」の話

大阪市獣医師会の「子猫リレー事業」と命名された譲渡事業のお話を20187月の本コラムで紹介しました。「今春の保護猫たち」の話

 

今年も629日に3匹のかわいい子猫たちがやってきました。推定される誕生日は620日。少なくとも2週間の哺乳が必要です。耳の穴はまだ開口しておらず、瞼がようやく開いたばかりというところです。幸いなことに健康状態もよく、元気よくミルクを飲んで、すくすく成長中です。


日々様々な刺激を受けながら、系統発生を繰り返すようにそれに応じた遺伝子が機能し始め、個体として必要な行動がとれるように成長していきます。私たちが動物の本能として理解している様々な行動が、個体の発達過程で順番に現れることになるのです。

 

 

そんな行動の中で、今までうまく解釈できていなかったことの1つが、岩手大学の研究で明らかにされました。

 

ネコはマタタビを見つけると、葉を舐めたり噛んだり、葉に顔や頭をこすり付けたり、葉の上でゴロゴロ転がる、といった特徴的な行動を示します。これはマタタビ反応といわれ、 1950年代にネコがマタタビラクトンと呼ばれる複数の化学成分を嗅ぐと起きる現象と報告されていました。

 

研究グループは、昨年、マタタビ反応を誘起する強力な活性物質として新たにネペタラクトールを発見し、これに蚊の忌避効果があることも突き止め、マタタビ反応をしたネコは蚊に刺されにくくなる事を報告しました。また、今年、ネコの舐め噛みにより葉が傷つくことで、ネペタラクトールとマタタビラクトン類の放出量が増加するとともに、これらの成分の組成比も大きく変わることを見出しました。さらに、この組成比の変化により、ネコのマタタビに対する反応性および蚊に対する忌避活性が増強することも分かりました。以上の研究結果は、ネコがマタタビに含まれている蚊の忌避成分を最も効果的に利用できるように巧みに進化してきたことを示していると考えられます。

 

動物に備わった行動にどのような意義があるのか、ネコのマタタビ反応のように、行動の習得に学習が必要なく、植物を嗅ぐだけで発動する本能行動においては、ネコが蚊の忌避効果を高めようと意図的に葉を舐めたり噛んだりしているのではないと考えられます。

(国立大学法人 岩手大学・国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学  令和4年6月8日プレスリリースより)

 

蚊に悩まされていた猫の祖先が忌避効果のあるマタタビを見つけ、効果的に利用する術を身につけ、それを繰り返し、そして、とてつもない数の世代でその行動が引き継がれた結果、マタタビの臭気を嗅ぐだけで行動が発動するように遺伝子に書き込まれたということなのでしょう。少なくとも進化要因としての危機回避の行動であることは確かなようです。

 

ネコのマタタビ反応が、単に快楽を求めてマリファナをやるヒトの行動とは一線を画するものと知り、改めて動物の行動の系統発生の意義深さに思いを馳せたのでした。

 

(文責 吉内)



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