泌尿器

「猫はユリ、人はサプリにご用心:世界は腎毒性物質であふれている」の話

「猫はユリ、人はサプリにご用心:世界は腎毒性物質であふれている」の話

紅麹サプリメントの摂取が原因と思われる腎障害のニュースを各メディアが一斉に報じています。健康の増進のために飲んだサプリメントで健康が損なわれるというのは、あまりに理不尽で、被害に遭われた方々の気持ちを考えると言葉がありません。

ネットで調べてみると、小林製薬が2020年に日本で利用されている紅麹菌(Monascus pilosus)の全ゲノム解析に成功し、物質レベルでもゲノムレベルでもシトリニンの産生がないことを証明し、発表していました。

紅麹菌は元来このシトリニン産生のリスクのあるカビの仲間で、穀類がシトリニンに高濃度に汚染された場合、腎障害が起きる可能性があります。

小林製薬は、日本の紅麹菌は大丈夫ですよと胸を張っていたはずなのですが、今回の事件。シトリニンではなく別の何かしら腎毒性のある物質が産生されたのか、混入したのか、調査を待たなければなりません。

ちなみに農林水産省が優先的にリスク管理を進めているかび毒(令和3年3月現在)を以下に挙げておきます。

アフラトキシン類,オクラトキシンA,トリコテセン類,デオキシニバレノール,ニバレノール,T-2トキシン,HT-2トキシン,ジアセトキシスシルペノール,パツリン,ゼアラレノン,フモニシン類,ステリグマトシスチン,麦角アルカロイド類,その他のかび毒:シトリニン,ルテオスカイリン,シクロクロロチン

(シトリニンはありましたが、プベルル酸はここには記載されていないようです。)

腎毒性という言葉を聞けば、愛猫家ならすぐにユリ中毒を思い浮かべることでしょう。

「えっ何それ」と思った方は、しっかりと覚えておいてください。

猫はユリ属、ワスレグサ属の植物を経口摂取することで中毒を起こします。今回の紅麹事件のような腎臓障害が起きてしまうのです。

現時点で猫のユリ中毒について分かっていることを記しておきます。

■中毒を起こすユリの部位

  すべての部位:葉、花、弁、茎、花粉、根、生けてあった花瓶の水も危険。

■中毒を起こす量

  中毒物質は特定されていませんが、わずかな量でも危険。

■中毒を起こす動物

  猫のみ。猫の性別、品種、年齢は問わず。犬、ウサギ、マウスは大丈夫。

■中毒の症状

  直後は流涎や嘔吐などの消化器症状。(生体の防御反応とも考えられます)

  半日経過したころから急性腎不全の兆候が表れます。

  (具体的には尿量の減少、多渇、腎臓の腫大)

  2日後には無尿(腎臓が尿を作れない)となり、そこから数日で死に至ります。

■中毒の病理

  腎臓の特に近位尿細管上皮の壊死が顕著。

  尿検査で脱落した上皮が尿円柱として確認できます。

■中毒の治療

  直後であれば催吐、輸液。

  急性腎不全を発症すればその治療に準じますが、予後は良くありません。

  治療開始がユリの摂取後18時間以内かどうかで予後が変わるとされています。  

猫をユリ中毒から守るには、ただただ猫とユリが出会わないようにする以外にはありません。そのためにも、ユリは猫にとって腎毒性があるということを、すべての猫のご家族に知っていただくことが先決です。どうかよろしくお願いいたします。

ユリも紅麹も私たちには身近な存在ですが、リスクはどこにでも潜んでいるものですね。

「猫はユリ 人はサプリに ご用心」 (仁独星)

みなさま、十分にご留意くださいませ。

(文責 吉内)


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