猫学

「人の猫アレルギーを猫のごはんで解決!」の話

「人の猫アレルギーを猫のごはんで解決!」の話

20188月の本コラムで、「猫アレルギーの話」 を書かせていただきました。そして「誰もが猫を抱きしめたいと思えば、安心して抱きしめることができるような、そんな日が早く来るといいですね。」と結ばせていただいたのでした。

 

世界中でアレルギー解決のための様々な研究が続く中で、人の猫アレルギー解決のための画期的な発見がありました。なんと猫にある特殊なごはんを与え続けることで、猫のアレルゲンが大きく減少するというのです。

 

2020324日、ネスレ ピュリナ ペットケアは、世界で初めて主要な猫アレルギーの原因物質(Fel d1)を生成後に中和し、アレルゲン暴露の水準を低下することで、アレルギー反応が起こるリスクを低下させることに成功したと発表しました。

 

猫アレルギーの主要アレルゲン物質=Fel d1に関する主な事実は以下の通りです。

Fel d1)は、猫アレルギーの主要アレルゲン物質であり、猫アレルゲンに感作した人のうち最大95%でアレルギー反応を引き起こします。

Fel d1)は主に唾液腺と皮脂腺で生成され、毛づくろいの際に猫の被毛に広がり、抜け毛やふけとともに環境中に放出されます。

品種、年齢、毛の長さ、毛色、性別、体重に関係なく、すべての猫が(Fel d1)を生成します。アレルゲン物質を完全に有していない猫は存在しません。

Fel d1)の生成量は猫ごとに大きな差があり、同じ猫でも年間を通して大きく異なる場合があります。

 

この(Fel d1)と結合して中和し、アレルギー反応を防ぐことができる抗Fel d1抗体(IgY)が特定され、猫にこの(抗Fel d1 IgY)を含む卵由来の成分を使用した食事を与えると、唾液中の活性(Fel d1)の量が3週間以内に大幅に減少したというのです。

 


                                                

Fel d1)抗原です。

       

すべての猫で、(Fel d1)が唾液中に放出されています。


  

毛づくろいで猫の被毛に広がります。


 

毛に付着した(Fel d1)。


 

環境中の(Fel d1)が猫アレルギーの人に取り込まれます。

  


猫アレルギーの人の体では、表面に(Fel d1)と結合する(IgE)を多数持つmast cellが待ち構えています。<黄緑:Fel d1 黄:IgE

  


IgE)が(Fel d1)を捕捉。mast cellが反応して、ヒスタミンやロイコトリエンなどの起炎物質を放出。



 

咳やくしゃみなどのアレルギー症状が発現。



  

猫に(抗Fel d1 IgY)を含む卵由来の成分を使用した食事を与えます。



  

<黄緑:Fel d1 青:抗Fel d1 IgY



  

唾液中の(Fel d1)と(抗Fel d1 IgY)が結合。



  

2分子目の(抗Fel d1 IgY)がさらに結合。

  

Fel d1)抗原が中和され、猫アレルギーの人に取り込まれても、人の(IgE)と結合することはありません。

 

この手法では、猫は引き続き(Fel d1)の生成を継続するため、猫の生理機能に影響を与えることはありませんし、卵由来のIgY成分は、何十年もの間、人医学および獣医学で安全に使用されてきていて、猫にとって安全だということです。そして、猫アレルギーの人がこのごはんを与えられている猫に暴露された場合に、普通のごはんを食べている猫に暴露された時と比べ、アレルギー症状が大幅に減少したというのです。

 

すごい時代になってきたものです。市販の予定についての発表はありませんが、猫アレルギーの人が躊躇なく愛猫を抱きしめられる日は、そう遠くないに違いありません。

 

(文責 よしうち)



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