感染症

「ウクライナからの同行避難」の話

「ウクライナからの同行避難」の話

ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、ウクライナのニュースを見ない日はありませんし、息苦しいほどの憂いを感じない日はありません。深い絶望の中、キーウからポーランドなどを経て日本に避難してきたポメラニアンのレイくんの話題がありました。

 

今回の動物検疫の特例対応については、既に報道がなされているように、狂犬病の侵入を懸念する意見や、ウクライナ避難民への支援の要請等、賛否両論があるようです。

 

様々な意見があるのは当然ですが、今回のことには大きく3つの要素があり、そのいずれもが多くの人にとって非日常的な事柄であることも影響しているのかもしれません。

 

カリナさん、そのお嬢さんとともに愛犬レイ君が日本の地に足を踏み入れるということにどのような意味があるのかを考えるために知っておかねばならないことには、

 

1.人と動物の共通感染症としての狂犬病の現状

2.狂犬病清浄国としての日本の検疫の現状

3.災害時のペットとの同行避難のあり方

 

の3つがあると思います。困ったことに、この3つはそれぞれ1.厚生労働省 2.農林水産省 3.環境省が主管となっているのです。

 

 

狂犬病の現状については、本コラムでも事あるごとに取り上げてきました。

狂犬病の話│南大阪動物医療センター (so-amc.com)

再び「狂犬病」の話│南大阪動物医療センター (so-amc.com)

「台湾の狂犬病、その後」の話│南大阪動物医療センター (so-amc.com)

 

また、厚労省のホームページにも詳しい情報がありますので、

狂犬病|厚生労働省 (mhlw.go.jp) 

 

今回のコラムでは、現在の状況を端的に表している厚労省のポスターを転載することに留めたいと思います。


(ポスターをクリックすると拡大されます)

 

 

検疫の現状について、現在の輸出入検疫規則では、

①マイクロチップによる個体識別が可能であること、

②狂犬病ワクチンを2 回以上接種していること、

抗体価が事前に測定されており0.5IU/ml 以上であること、

これらの要件がウクライナ動物衛生当局の検疫により確認され輸出検疫証明書が交付されていること

この4つの要件が満たされていれば、着いたその日に日本に連れて入ることが可能です。

 

準備に不備があると最大180 日間の係留が必要となり、その間の費用負担も発生します。この部分がマスコミに取り上げられ、多くの議論を生むことになりました。現在のウクライナで④の証明書発行は不可能ですし、あらかじめ抗体価検査を受けておくといった状況ではなかったわけですから、その部分を動物検疫所でカバーし抗体価検査を行った上で、自宅で一定の隔離飼育を行うことを条件に検疫所からの持出しを認める予定とされているのです。犬等の輸出入検疫規則第4 条第5 項に基づく災害救助犬等と同様の扱いという特例であって検疫措置の緩和ではないと説明されています。

 

現在、4 人のウクライナ避難民の方が5 頭の犬を同行され、動物検疫所において検査等のために係留中で、4 頭はウクライナで2 回接種が行われ、1 頭は1 回接種であることから2 回目を動物検疫所で実施すること、動物検疫所で5 頭ともに抗体検査を行って、0.5IU/ml 以上であることを確認することとされています。皆さんきちんと狂犬病の予防接種を受けておられるのですね。

 

 

戦時のウクライナと震災等の災害時を同様に扱うことには異論があるかもしれませんが、被災された方が安全な場所に避難しなければならないことに違いはありません。日本で災害が起きるたびに同行避難の難しさが問題になります。けれども、そこに「人と動物の絆」がある限りご家族には同行避難以外の選択肢はないのです。ウクライナからの避難民の方々の同行避難も含め、受け入れることが当たり前の社会になることを願うばかりです。

 

 

狂犬病の予防接種は言うに及ばず「備えよ常に!」を怠らず、当たり前の日常を過ごすことができている現在に、心から感謝したいと思います^^

 

(文責 吉内)



大阪市の南大阪動物医療センター

住所
大阪府大阪市平野区長吉長原3-5-7
営業時間
午前:9:00 〜12:00
午後:13:00〜15:00(水・土を除く)
午後:16:00〜19:00(水・土を除く)
  • ※祝祭日はその曜日に準じます。
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  • ※ご希望の日と時間帯、獣医師を指定して頂くことができます。
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